トレーステクニック(現代版) | 3倍早くなるためのDTP講座

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DTPの作業を早くするためのテクニックを綴っていこうと思っています。

先日、モータースポーツジャパンがてらお台場に遊びに行ってきました。なんとガンダムの目の前に幻の車MID4(2型)が展示されていました。せっかく写真を撮ってきたのでトレースでもするか(←おかしい)と、久しぶりにIllustratorでトレース作業をしてみました。



Illustratorのパスの描画やハンドルの挙動は初期の頃からほとんど変わっていません。なので、トレース作業は2013年発売のCCまではペンツールとハンドルを駆使して曲線を描くのが基本でしょう。

もちろん、ツールや機能の強化により初期に比べてだいぶ楽にはなっていますが、パスそのものをコントロールする部分はやはりペンツールとハンドル操作で行います。

しかし2014年発売のCC17.1以降、ライブコーナーやセグメントの変形、アンカーポイントツール、曲線ツールや連結ツールなどパスまわりが積極的に強化され、扱いの難しかったベジェ曲線を比較的簡単にコントロールできるようになりました。

今まで数十年なおざりにされていた部分が、標準で強化されたことはとても喜ばしいことです。

しかしながら、最新バージョンを使え(わ)ない人もまだまだ健在。そんな方はお金かかりますが、プラグインを導入してみましょう。戦闘力が格段にアップしますよ。

というわけで、あと10年は戦える「Illustrator CS5改」にて現代版のトレース工程をご紹介しましょう。「改」は強化作戦でご紹介したプラグインAstute GraphicsさんのDynamicSketchVectorScribeによるカスタムです。

実はこのプラグイン、CC17.1以降で強化された機能とほぼ同じものも含まれます(あまりにも同じなので、技術提携もしくはジャイアンがあったと睨んでおります)。なので、プラグインなしでもCCなら(使い勝手は違いますが)同様の事ができると思います(未確認^^)。



今回は「写真からの線画起こし」という想定で進めます。塗りを考慮しないのは気が楽ですね。線画なら色塗りはライブペイントでも塗れますからね。

さて、従来の方法でトレースをしているといくつか難易度の高い場面に出くわします。

まず流線型の多い車は、間取り図などとは違いベジェスキルによる差がハッキリ現れます。例えば、曲線から鋭角に折り返してまた曲線を描くような場合、スタート時点でハンドルを引きだし、ポイントでハンドルをドラッグして調整、ハンドルタイプを切り替えまたハンドルを引き出し、ポイントでハンドルをドラッグして調整…、初心者には敷居の高い作業ですね。

この場合、現代版では基点にアンカーポイントを打ち、VectorScribeのPathscribe Tool(CCのセグメント変形相当)でセグメント(アンカーポイント間の辺のことね)上をドラッグするだけで作成できます。



これCC標準のほうがツールを持ち替えなくても一時的にオプションキーでいけるので作業が捗ります。

また、長いセグメントが微妙にカーブしているような場合、引き出すハンドルが長すぎてセグメントが見えなくなったりしますが、これも上記の方法で解決できます。



次に回り込むような曲線で終わるストロークはハンドルの編集がやりづらいうえ、パスがはみ出したり隙間が空かないよう神経を使います。

この場合、現代版ではわざとはみ出すように長めのパスを描きDynamicSketchツールでshift+ドラッグ(シェイプ形成ツール相当)すれば、はみ出し分は削除されるのでアンカーの位置やハンドルの調整に気を遣わずに作業できます。



DynamicSketchツールはパスを選択しなくても適用できるので、シェイプ形成ツールよりも使い勝手がいいです。DynamicSketchツールはペンタブレット併用の手描きイラストに最適と思われがちですが、実はトレース作業でもかなりの威力を発揮します。

色を塗る必要のない線画の場合、6の字状のパスを描く機会も多くあります。しかし、作業中のパス上でクリックするとアンカーポイントの追加になりパスを描けません。このような時はわざとはみ出してカットすればいいのです。




そしてこのツールは2本のストロークのはみ出し部分を削除して繋げることも可能です(結合ツール相当)。微妙な角Rなどは結合してからVectorScribeのDynamicCorner Tool(ライブコーナー相当)でドラッグするだけで綺麗な曲線が作成できます。



これらのツールを駆使するだけで、今までベジェスキルに依存していた曲線の編集が簡単に行えるようにます。

ここでご紹介しているプラグインは外国製で、円安の影響もあり揃えるとけっこうお高くなってしまいます。しかし、ベジェの修得にかかる費用対効果としては決して高くはないと思います。

発売元のAstute GraphicsさんはSubScribeなどフリーのプラグインもいくつか提供されています。過去記事で紹介しておりますが、場面によっては非常に役立つツールです。フリーなのが信じられません。

さて、他にもプラグインでは無いトレースのテクニックをご紹介。

取っ手部分はパースが付いているので少々難易度が高めです。角丸や平行が描きにくく、少しでも角度が狂うとおかしく見えてしまいます。

幸いにもほぼ平面上にあるので、Photoshopの遠近法でトリミングして平面でトレース後、自由変形で変形するという手法が使えます。


↑Photoshopで遠近法トリミング


トリミング時の縦横比率は後で変形するので気にせず、やりやすい比率でトレースしましょう。これはパースの付いた看板などにも応用できますね。



↑比率を適当に調整してトレース



↑自由変形ツールで調整




もう一つ。長いストロークでプラグインを使わずに微妙な曲線を作る方法をご紹介。
Illustratorでは直線上に追加したアンカーポイントは引っ張っると角になってしまいますが、曲線上だとスムーズポイントのまま引っ張れます。


↑直線上のアンカーポイントは角になる


直線の終点にハンドルをちょっとだけ出しておけば、任意でポイントを追加後つまんで変形できます。

↑ハンドルがある直線ならドラッグしても曲線になる



これはパス上にポイントが2点以上あるような時に効果的です。これはバージョン8でも使えるテクニックです。

↑更に追加してドラッグしてもカーブは綺麗。ペンツールとハンドル操作では難しいなだらかなカーブが簡単に描けます



プラグインや新機能によりラクになったとは言え、個人的にはまだまだ不十分です。かゆいところに全然手が届いていない。ニッチすぎてメーカーが気に留めないだけなのか、はたまた面倒なのかはわかりませんが。

そんなときはスクリプトを使ってみましょう。幸せになれること間違いなし。
過去記事や神速Illustratorでも一部ご紹介しておりますが、特にこのお三方のスクリプトは神の領域です。押さえておけば足りない操作はほぼカバーできるのではないでしょうか。

PICTRIXさん 
s.h's pageさん (神速Illustrator記載時から移転しています)
kamisetoさん 



というわけで、最後にトレースの完成品を。線画なのでアートワークも全く同じです。潜り込むパスはことごとく削除しました。微妙な調整ができなくなりますが、一発ものと割り切ってこれもありかと。



色を付けたい場合、ライブペイントで色塗り→拡張すれば塗りや加工も問題なくできます。

↑ライブペイントで適当に色付け。拡張すればもっと自由に編集できます



今回私はプラグインを使用しましたが、CC以降のパスまわりの強化によりトレースの難易度は確実に下がっています。何となく苦手だった方も新機能やプラグインを使ってチャレンジしてみましょう。新しい発見が見つかるかもしれませんよ。