ラミクタール中止後の再開方法(後半) | kyupinの日記 気が向けば更新

ラミクタール中止後の再開方法(後半)

今回は、ラミクタールで中毒疹と思われる皮膚症状が出た後、再トライができそうなケースの対処法について。

グラクソ・スミスクラインのホームページを見ると、ラミクタールによる発疹の発現機序は明確ではないと記載されている。

ただし、薬物特異的T細胞が関与するアレルギー反応が関与している可能性に触れている。

ラミクタールによるスティーブンス・ジョンソン症候群の中毒疹はの発現率は0.03%程度らしい。つまり軽微な皮膚障害の発現率は、向精神薬でもかなり高い方に入ると思うが、スティーブンス・ジョンソン症候群にまで至る確率は1万人に3人である。

ラミクタールは、いきなり100mgの量を投与すると中毒疹が発症しやすく、少量から徐々に増量することで中毒疹の発症頻度が下げられることが知られている。これは「免疫寛容が生じる」ことと関係があるようである。

また、ラミクタールの中毒疹は細胞性免疫が関係していると考えられている。一般に、体液性免疫と細胞性免疫は対比して記載されているが、機序のうち、最初の段階はほぼ同じような流れである。細胞性免疫は、特にツ反応と血清療法(ハブなど)を例として挙げられていることが多い。

ラミクタールを初めて投与する際に、予防的にアレグラ、ザイザルのような抗ヒスタミン系の薬を併用するのは無効とされている。

ラミクタールの服用後、中毒疹と思われる皮膚症状が生じた場合、4~21日目であれば、真のラミクタールの薬疹の可能性が高いという。一方、3日以内の場合、ラミクタール以外の他の原因で生じた可能性が高い。

また、顔以外の部分の皮膚症状では、左右対称でない発疹の場合、ラミクタール以外の原因を考慮する。

また、ラミクタール投与後の皮膚症状が軽いケースでは、再投与が成功する可能性がそうでないより高くなる。再投与の際に、1ヶ月以上空けることが推奨されている(海外での報告)。

4週間以上の間隔を空けると、発疹の確率は7%以下に低下すると言われている。

再トライの場合、用量は5mgの投与から開始する手法が推奨されている。

ただし、ラミクタールは2mgと5mg錠の剤型はあるものの、いずれも小児用であり、成人に使った場合、ほぼ間違いなくレセプトで査定されるであろう。近年のレセプトはコンピュータ化されており、ルールに沿わない処方は鋭敏に発見され、査定されるようになっている。

そこで、25mg錠を流用するわけだが、余計なことに、ラミクタールはチュアブル・ディスパーシブル錠になっているため、対処が難しい。

このタイプの錠剤は、そのまま咀嚼して服用、 水と一緒に服用、錠剤を水に懸濁して服用と子供にも使いやすいようになっているが、25mgの錠剤を細かく砕き乳糖で薄めて、5mg分だけ処方するのが容易でない。粒々が均一にならないからである。

5mg開始から漸増の再チャレンジは、80%の確率で成功すると言われている。

この話は、いつだったか、過去ログでテグレトールの再チャレンジで似たようなこと書いていたのを思い出した。

ラミクタールとスティーブンス・ジョンソン症候群」の記事から、

テグレトールは中毒疹が出る人でも2mgから徐々に増量すると、飲めるようになる人がいるらしい。テグレトールは使われる場合、600mg程度が多いため、300分の1の量である。

再トライの重要なポイントは、一度は中毒疹らしきものが出たわけなので、無茶なことはすべきではないことであろう。精神症状に効いているから、中毒疹っぽい発疹や発熱があるのに継続するなんて、論外である。

向精神薬はここ5年間くらいでも、スーパーな薬がいくつも出ている。(ラミクタール、トピナなど)

毎年、創薬や治験は続けられているわけで、自分の患者さんだけでも、唖然とするような効果を、番号しかついていない薬で経験している。それらが将来的に上梓されるかどうかは不明だが、日々進歩しているのは間違いない。

個人的に、治験に失敗したような薬に、むしろ画期的な薬が含まれているような気がしている。

参考
ラミクタールの中毒疹の随伴症状
中毒疹の履歴ある人とラミクタール