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つい最近ニュースで頻繁に取り上げられている事件についてです。
横浜の某病院で起こった『点滴異物混入殺人事件』(未解決)で、
しきりに死因物質としてニュースや新聞で取り上げられている「界面活性剤」という物質。
このブログでは以前からこの成分について詳しく解説してきました。
報道ではまるで「超危険な毒物」のような書き方見せ方で消費者に不安を煽っているのですが…
界面活性剤を専門としてるかずのすけとしてはこの報道内容には疑問を覚えざるを得ません…(-_-;)
先程も某お昼のニュース番組(ミ○ネ屋)で宮○さんが
「界面活性剤と呼ばれる薬品が~」
などと明らかに誤った発言をされていましたし、
ニュース番組などでこのような扱いを受けると、
「界面活性剤」という物質に対する消費者の不安感が無駄に上がってしまって
今後様々な二次事件などに発展する可能性があります。
なのでここで今一度界面活性剤についての詳細を軽くまとめ、
さらにこの事件が今後世間に与えうる悪影響についても注意喚起しておきたいと思いますm(_ _)m
ちなみにかずのすけは探偵ではないので事件の真相についてはここでは一切触れません…
この点はどうぞ予めご了承下さいませ;
「界面活性剤」がなんたるやにご興味のある方は、少し難しくなるかもしれませんが必ず実生活にメリットのある話ですのでどうぞご一読頂けると幸いです。
◎「界面活性剤」とは?
もうこれについてはあまり長く語るつもりはありません^^;
「界面活性剤」とは『油と水の両方の性質を持つ物質』で、
水と油を混ぜる作用から様々な分野で活用されています。
身近なところでは洗剤、化粧品、医薬品から食品に至るまで、
我々の身近のちょっと液体っぽい製品にはまずほぼ配合されていると考えていただいても差し支えないものです。
詳細は以下の記事を御覧くださいm(_ _)m
かずのすけは昔からこう言っていますが、
人間が『水』の次に触れている化学物質は、間違いなく『界面活性剤』です。
つまり界面活性剤とは「薬品」などと大仰に言われるようなものではなく、
日常的に非常にありふれた物質なのですね。
ただ単に多くの人がその物質を「界面活性剤だ」と認識していないだけで、
皆さんが思っている以上に界面活性剤は我々の身近に使われているのです。
◎「界面活性剤」にはいろんな種類がある!
そもそも今回の報道で特に違和感を感じたのが、
「界面活性剤という成分」「界面活性剤と呼ばれる薬品」のような書き方言われ方が散見されたことです。
我々からすれば、「いやいや、界面活性剤にも色々あるから一緒くたにされても…」という感じです(-_-;)
昔から言うように、界面活性剤には非常に多くの種類があります。
洗剤として使われる「陰イオン界面活性剤」、
主に柔軟剤として使われる「陽イオン界面活性剤」、
食品添加物や化粧品の乳化剤として使用される「両性イオン界面活性剤」や「非イオン界面活性剤」などなど、
これらの大まかな種類だけでも4パターンに分けられ、
更にそのそれぞれが数十種類から数百種類と無数の種類があるのです。
そのため同じ『界面活性剤』でも性質や用途、毒性や危険性も全く異なります。
中には生活の至るところで使用されていてどれだけ飲み込んでも全く無害のものもあれば、
普通一般生活ではまず利用されない危険なものや、非常に毒性の強いものももちろんあります。
今回の事件で言えば、
「界面活性剤が検出された」という論調での報道ではなく
「○○(正式名)という物質が検出された」という報道がされるべきだったと思います。
それだけでも膨大な種類がある以上、
『界面活性剤』というワードを強調する必要は全く無かったのではないでしょうか。
◎実際に検出されたものは「逆性せっけん」だった!?
ちなみにこの件で実際に混入していた界面活性剤は「逆性せっけん」と呼ばれるものでした。
かずのすけ@kazunosuke13やはり!逆性せっけん(陽イオン界面活性剤)でしたね(´ー`;) 先日の抗菌ソープの件ともちょっと関わりますね…。 点滴混入成分は「逆性せっけん」…横浜患者死亡(読売新聞) - Yahoo!ニュース https://t.co/uG4zbRe5Nu #Yahooニュース
2016年09月26日 15:45
「逆性せっけん」というと、最近の人はあまり聞き覚えがないと思います。
多分この記事を書いた人や捜査関係者は結構なおじさんなのかな?と思います…笑
『逆性せっけん』とは上の表にも載っている『陽イオン界面活性剤』の古い呼び名です。
リンスやトリートメントの主成分にもなっている成分ですね。
▶シャンプーとリンス ~アニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤~
『石けん』がマイナスの静電気を帯びる「陰イオン界面活性剤」であったのに対して、
「陽イオン界面活性剤」は反対にプラスの静電気を帯びる性質があったため
古くは『逆性石けん』と呼ばれていました。
陽イオン界面活性剤には強力な殺菌作用があるので、
そのまま『抗菌石けん』として利用もされていたのです。
ただこれらの「陽イオン界面活性剤」は、
近年になって非常に毒性や刺激性が強いということがわかってきてからは一般家庭の抗菌石けんに使用されることはほとんどなくなりました。
それこそ毒性だけを見ればかなり危険なものになるので、
現在では医薬品として医療機関や介護施設などで利用されているに限ります。
例えば特に有名なのが「塩化ベンザルコニウム」という成分ですが、
【第3類医薬品】塩化ベンザルコニウム 500mL
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これは医院などでかなり高頻度で利用されている「消毒液」なのですけど、
単純な毒性値は、とても嫌われている合成界面活性剤の「ラウリル硫酸Na※」の30倍ほど。
『半数致死量』という毒性評価法では一般的に急性毒性300mg/kg以下の毒性値(数値が小さい方が毒性は高い)があるものを「毒物」として分類しますが、
塩化ベンザルコニウムは70~250mg/kgなので、確かに『毒物』ということになります。
まぁ数値的には「ギリギリ毒物」という程度で、
ヒ素とか青酸カリなどと比べると全然弱いのですけどね。。
大量に血中に入り込めば死因となり得ます。
※
ラウリル硫酸Naは一般的に使用される陰イオン界面活性剤の中では最も半数致死量の毒性が高い成分ですが、毒性値は2000~3000mg/kg(数値が大きいほど低毒性)と、塩化ベンザルコニウムの30分の1程度なので分類上は「毒物」にはなりません。洗剤としては最も低品質の成分ですが、それでも体内に摂取しても死亡のリスクはほぼゼロと言えます。
「消毒液に使われている界面活性剤」「血中に混入で死亡」となると、
界面活性剤に詳しければ「多分、陽イオン界面活性剤だろうなぁ~」と想像が付くのですが、
本当に予想が当たっていました^^;
ぶっちゃけ普通の洗剤類は血中に混入しても簡単に分解できるのでそうそう死因にはならないんですよね…。。
まぁ流石に原液が何十mLも入ったら分からないですけど。。
というわけでこのように、
界面活性剤でも毒物になるものとそうでないものがあるので
一概に「界面活性剤は危険」という認識は改めなければなりません。
ちなみに普通のトリートメントや柔軟剤に使われているものはもう少し毒性が弱く、さすがに「毒物」には分類されていないものが使われていますよ。
(それでも洗剤の2~10倍ほどの毒性がありますが;)
◎メディアの誤報道が「悪質商法」を招く!?
別に『間違ったこと』を言っているわけではないのですが、
あえて僕はここで今回の報道内容を重大な「誤報道」だと判したいと思います。
そもそも「石けん」や「シャンプー」などなど日常的に使用されている非常に安全なものもあるわけですから、
『界面活性剤が検出!』なんて言ったらそういうほとんど無害の界面活性剤まで非難の対象になる可能性がある…、、
…というか実際にそうなっちゃってますよね。。(苦笑)
メディア関係者ならそのくらいの影響は想定して貰いたいですし、
あまり詳しくないわけわかんないものについては、はじめにちゃんと専門家のコメントを得る必要があったはずです。
しかも面白がってわざわざ不安を煽るような表現をする程度の低いニュース番組もあるくらいですし。
さらにこういったメディアの誤報道は、後々「悪質商法」に利用されることがあります。
我々若い世代ならばある程度リテラシーもあるのでネットから情報を得て「界面活性剤全部が悪いわけではない」という事実を確認することもできるのですが、
そうでもない高齢者世代は、情報収集の手段をほとんどテレビに頼っています。
そうなるとテレビの報道がすべての情報源になってしまうので、
誤報道が与える印象操作を簡単に真に受けてしまいますね。
こういう状況で、例えばマルチ商法の業者が家に訪ねてきて
「お宅の洗剤には『界面活性剤』が入っている。ほら、最近事件になっていた危険な成分。身体に入ると死ぬ恐れもあるからやめなさい。うちの商品には界面活性剤が入っていないから安心だよ。」
みたいなことを言われたら、コロっと信じてしまう可能性があります。
こういう事件が起こってからしばらくは、その内容を利用した悪質商法が横行するというのはこれまでにも何度も見られたケースです。
あとは学生さんなどもターゲットにされやすいのでくれぐれも気をつけて欲しいですし、
心配なご家族が居られる場合は声をかけてあげると良いかもしれません。
というわけで少々長くなってしまいましたが、
ちょっと気になったニュースだったので詳しく取り上げさせて頂きました。
皆様の参考になれば幸いですm(_ _)m
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