ボーカロイドから「逆デビュー」のソロシンガー
「風雅なおと」が生まれた瞬間
アーティストのバックコーラスやCMソングなどに歌声を提供する、スタジオボーカルという職業がある。
有名なところでは木戸やすひろさんや広谷順子さんなどがいるが、風雅(ふうが)なおとさんもその1人だ。
いわばプロの裏方とも言える風雅さんが、歌手としてソロデビューを果たしたのは昨年12月のこと。
LoiDから発売された「卑怯戦隊うろたんだー」がその作品だ。本人が声を担当したボーカロイドソフト「KAITO」を使用した楽曲を自らカバーするという異色のCDだった。
今月1日にはシングル「千年の独奏歌」を発売。オリコンの週間チャートで初登場35位にランクインした。今回もやはりKAITOの曲をカバーしたものだが、アートワークにはKAITOの文字はなく「風雅なおと」とだけクレジットされている。子どもの頃から「歌手」にあこがれていた風雅さんが、夢をつかんだ瞬間だった。
大学時代にはバンドでキーボードを担当し、その傍らでスクールに歌を習いに行っていた。当時の目標はジャズシンガー。バーでピアノの弾き語りのバイトをしたこともあった。音楽一本だけで食べていくのは難しいことも分かっていたが、夢をあきらめきれず、スタジオボーカルとして活動をはじめた。
「たまたま同じスクールで習っていた女性がバックコーラスの活動をしていたことがあったんですね。そこで譜面の読める男性を探していると声をかけてもらったんです」
それをきっかけとして、スタジオボーカルとしての活動が始まった。はじめは音楽事務所に所属し、CMソングからコーラスパート、カラオケ楽曲のコーラスパートなど、自分に出来ることはなんでもこなした。
「ザ・ベストテン」や「夜のヒットスタジオ」などの歌番組でもコーラスを担当し、スタジオからの要請があれば、戦隊もののボーカルも務めた。
実際にステージに立ち、光GENJIや少年隊、田原俊彦などのコーラスを務めたこともある。大橋純子さんや、ピンクレディーの未唯さんなどとも一緒に仕事をしていた。自分の歌い方をおさえ、要望に応えるために歌い続けた。