Rapid Driveはコストと容量のバランス解
Rapid Driveの話に移る。こちらは簡単に言えば、OSイメージなど起動に必要なファイルを転送速度に優れたSSDに保存し、高速化を図る技術だ。SSDの低価格化は進んでいが、バイト単価で言えば、HDDのほうにメリットがある。コストと容量のバランスを考えた最適解がRapid Driveである。
Rapid Driveは「Thinkシリーズ」「Ideaシリーズ」の両方で選択可能になる見込みだが、EE 2.0搭載モデルすべてがRapid Driveを採用するわけではない。オプション扱いになる点は注意しておきたい。対応機種としては、メインストレージにSSDを搭載しているモデルはもちろんだが、Wireless WANの接続用に搭載しているmSATAのインターフェースに容量の少ないSSDを入れるという形態を取る場合もあるという。
価格は非公開だが、既存のSSDモデルとHDDモデルの中間になるという。1月6日に出たレノボのリリースで謳われた起動10秒未満という数値は、このRapid DriveとRapid Bootを組み合わせて実現するもので、日本では発売未定の試作機(IdeaPad Y570/Y470)でのテスト結果となる。
なお、SSD+HDDのハイブリッド搭載というハードウェア面に注目が集まりがちなRapid Driveだが、Disk0とDisk1という異なるドライブを論理的にワンボリュームで扱い、かつSSD(パフォーマンス領域)に必要なファイルを集めるという点でソフト的な取り組みも必要である。オプションBIOSの呼出しなどBIOSも改善されている。
またSSD領域は、データ記録だけでなく、スリープ時のメモリー退避にも活用される。これは完全に電源を落とさず、サスペンドするノートパソコンでは、特に効果を発揮するだろう。実際、スリープ時間と復帰時間も高速化できるという(数値は未公開)。
既存モデルで利用はできるか? HDDの換装は?
最後に「Rapid Boot」「Rapid Drive」に関して出てきそうな、よくある疑問をレノボに投げてみた。
ひとつめは、ウィルス対策ソフトなどが遅延して起動することでセキュリティーに支障が出ないかと言う点。
セットアップ情報の中に、アンチウイルスソフトは必ず起動させる(Must Run)よう指定してあるため、問題がないとレノボは説明している。Windowsはレジストリ情報などから、アンチウイルスソフトを検出する機能を持っており、それを応用したもののようだ。指紋認証など、セキュリティーデバイスのドライバーも同様に外さない仕組みになっている。
次に遅延させるドライバーやサービスをユーザーが明示的に指定できるかどうか。この点に関しては現状で不可。カスタマイズ用のインターフェースは用意されていない。
3つ目は、既存のThinkPadユーザーなどにEE 2.0を提供する予定があるかどうか。レノボの説明では、既存ユーザーに対するアップグレードは行わないという。
また、Rapid Drive搭載モデルを購入したユーザーがHDDの交換などを実施した場合は、リカバリーなどでRapid Driveに対応した工場出荷イメージに戻すことができる。ただし、購入したパッケージ版のWindows 7をインストールしたケースでは利用できないという。
最後に他社のノートパソコンに対してどれだけ速度的なメリットが得られるか。これは昨年11月にCNETLabが北京で実施したテストが参考になる。
レノボの発表資料では「個別のMicrosoft VTS ツールを用いて、起動、シャットダウン、再起動、その他のWindows 7 の性能を測定」したところ、「競合のAcer、Apple、Dell、HP、Samsung、Sony、東芝ら42のPC」に関して実施したテストで、「一般的なWindows 7搭載PCより平均で約20秒早く起動し、シャットダウンのスピードも28%早ま」ったという。
実際に10秒の起動といううたい文句を実現できる機種が登場するかどうかは、今後の製品投入状況を慎重にみる必要がある。とはいえ、先日開催された、ブロガー向けイベントで公開されたデモでも起動に約20秒、シャットダウンは一瞬という結果が示されている。
少なくとも、40秒程度でも高速とされるWindows 7がその半分の時間で起動したという点は注目に値すると思うし、会場の驚きも誘っていた。