米国の大手キャリア3社が進めるNFC決済サービスISISが、数週間以内でローンチをする模様だ。これを機にモバイルNFCが離陸すると期待したいところだが、そう楽観できない。9月に発表された新iPhoneでは(案の定というべきか)NFC搭載はなし、モバイル決済といえばSquareなどの代替手法が注目を集めている。
全米ローンチ近づくISIS
「Google Wallet」はNFCなしでもOKに
ISISは、Verizon Wirless、AT&T、T-Mobile USAなどが2010年に立ち上げたジョイントベンチャー。NFC搭載スマートフォンで決済などのサービス提供を事業とする。米国の4大キャリアのうちの3キャリアが参加しているのに対し、残るSprintは「Google Wallet」に参加しているため、ISISとGoogle Walletは競合と位置づけることができる。
ISISは2012年10月にテキサス州オースティンとユタ州ソルトレークシティの2都市でトライアルをスタート、専用アプリの「ISIS Mobile Wallet」はGoogle Playで公開されている。American Express、Barclays、Capital One、J.P. Morgan Chaseと提携し、7-eleven、McDonald's、Foot Lockerなどの小売店で利用できる、というのがトライアルの内容だった。決済のほか、提携企業のロイヤリティカード(ポイントカード)も利用できる。このように、ISISはGoogle Walletと同じようなサービスとなっている。
だが、数週間後に迫った全米ローンチでCapital OneとBarclaysの2社は不参加を表明、American ExpressとChaseが残っている。ISISはユーザーには無料でアプリを提供し、クレジットカード会社から収益を得るというビジネスモデルをとる。正式ローンチではクレジットカード会社が2社抜けることになり、ちょっと拍子抜けした感はある。
NFCはエコシステムが重要だ。ISISによると決済端末はすでに約130万台あり、上位100社の小売店のうち24社が参加するという。だがユーザー側の端末となると、米国でNFC対応機を所有するユーザーは2割にも満たないとYankee Groupは述べている。iPhoneがNFCをサポートしていないのは大きな弱点だが、ISISは全米ローンチにあたって(NFC対応の)iPhoneカバーを用意する計画だ。
対するGoogle Walletは、9月にリリースした最新版で、セキュアエレメント付きのNFC対応スマートフォンが必須ではなくなった。最新版では送金機能、ロイヤリティカードのサポートなどが加わり、NFCがないために決済が利用できないユーザーでも可能な機能を備えた。Android 2.3以降のAndroidスマホで利用できるという。
Google Walletは2011年に一部地区で開始、当時はこれでNFC離陸かと注目されたが失速気味だ。NFC搭載スマートフォンが少ないこと、利用できる決済端末が少ないことに加え、Sprint以外のキャリアがGoogle Walletを遮断したことも背景にあるだろう。最新版ではNFCが必須ではなくなったため、iOSでもGoogle Walletが登場するかも注目される。同時にNFCが必須ではなくなった後、Googleが今後Google Walletをどのように位置づけるのかが気になるところだ。
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