前回ちょっと触れたが、本特集を組むきっかけとなったのが、「NW-ZX1」と「F880」シリーズがアップデートでDSD再生に対応するというニュースだ(関連記事)。今回はこのDSD対応についての話からはじめていく。今回もウォークマンの開発担当者に話を聞いた。
DSDがサクサク聴ける!
再生時のもたつきをなくす工夫
去る4月17日にサポートサイトにて公開されたアップデータ(ZX1はVer 1.10、F880シリーズはVer 1.20)を適用することで、出荷時には非対応だったDSDファイルの再生が可能になる。
対応するフォーマットはDSD 64(2.8MHz)のみで、PCM変換による再生となるが、いわゆる「ハイレゾ」のフォーマットはこれで網羅できたことになる。いわば後付けでDSDサポートが実現された形だが、“使い勝手”を重視しているという。
「今回のDSDサポートは、いわゆるPCM変換方式を利用していますが、ウォークマン独自の工夫を施しています。PCM変換の場合、再生指示から実際に音が出てくるまでのタイムラグが発生しがちで、それが“もっさり感”となりますが、UIの軽快感を重視したNW-ZX1とF880シリーズではこれを崩したくありません。そこで、DSDもほかのフォーマットと同様にサクサクと再生できるようチューニングを施したのです」(プロジェクトリーダーの佐藤朝明氏)。
実際、DSD対応にアップデート(取材時はプレリリース版)したNW-ZX1を操作してみたが、確かに操作でもたつく印象はない。選曲して再生ボタンをタップすれば、間断なく曲の再生がはじまる。
なぜこのようなことが可能なのかたずねたところ「DSDのフォーマットを高速にPCM変換するために、ソニー独自の技術を使っています。シャッフルでDSDとPCMが交互にかかったとしても、ほとんどタイムラグを感じさせずに再生できます」(佐藤朝明氏)とのこと。
ちなみに、PCM変換はCPUで処理しているという。NW-ZX1およびF880シリーズに採用されているCPU(デュアルコアのOMAP 4 Coretex-A9 1.0GHz)のパワーからすると、期待を上回るスピードといえるだろう。
その場でLPレコードからDSD録音した曲を試聴させてもらったが、アナログの質感を残すまろみのある音を楽しめた。利用した密閉型ヘッドホンの「MDR-1RMK2」も、低域の量感を確保しつつ広いレンジをすっきり聴かせるという意味で相性は良好。
DSDのサイズを考えると、128GB(NW-ZX1)というメモリー容量も心もとないが、とっておきのアルバムをDSDで聴くという楽しみかたが増えたことは大いに歓迎されるはずだ。
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