先月は9・11テロからちょうど十周年ということもあり、様々な特集番組が組まれた。その中でも特に印象的だったのは、NHK BS『世界のドキュメンタリー』で放送された「偽りのヒロイン~全米を欺いた5年間」。以下は番組サイトからの引用。
-タニア・ヘッドは、世界貿易センターへのテロ攻撃で、航空機が衝突した現場より上層階から奇跡的に救出された18人のうちの一人。しかも、結婚間近だったフィアンセをテロで失った。彼女は事故のトラウマに苦しむ市民を支援するボランティア団体の中心メンバーとして活躍し、やがて“悲劇のヒロイン”として全米の誰もが知る顔となる。
2007年、ニューヨークタイムズが記事を書くにあたり、タニアのバックグラウンドを再確認しようとしたが何ひとつ裏が取れず、嘘が発覚する。テロの当時、彼女はバルセロナのビジネススクールの学生で、事件の10日後に地元新聞の取材を受けていたのだ。
タニアは生存者ネットワークの代表を解任されたが、金銭的利益も受け取っていないため罪には問われなかった。彼女と親交のあった人々は、「タニアの体験が重すぎたので、細々としたことを聞くのがはばかれた」、「自分より悲惨な思いをしているはずの彼女が駆け回っている姿を見て、自分も頑張ろうとエネルギーが湧いた」、「互いに体験を話し、思いを分かち合った事は、自分の癒しのプロセスに大いに助けとなった」と、複雑な思いを語る。偽りのヒロインが遺族や事故の関係者にもたらした波紋を描く。
このドキュメンタリーの原題はThe 911 Faker、制作はFilms of Record Production(イギリス 2008年)だが、この番組で私は初めてタニア・ヘッドなる女を知った。試にタニア・ヘッドでネット検索したら、2007年、既にネット掲示板にも載っていたことが分かった。以下は件の掲示板からの引用。
-2001年9月の米中枢同時テロで婚約者を失い、自らも世界貿易センタービルから命からがら脱出したという悲劇の体験談で一躍有名になったニューヨーク在住の女性の証言は「ほとんどでっち上げか、うその可能性が高い」と報じられ、テロ遺族や市民らに衝撃を与えている。
この女性は「世界貿易センター生存者ネットワーク」の代表だったタニア・ヘッドさん。同ネットワークは9月末にヘッドさんを解任、ヘッドさんは現在まで弁護士を通じ「ノーコメント」を続けている。これまでの本人の証言によると、テロ発生当時、ヘッドさんは貿易センタービル内の米証券大手メリルリンチに勤務しており、ビル南棟の高層階でテロに遭遇。炎と煙の中、78階までたどり着き、消防士に救助されたが、大やけどを負った。
ヘッドさんの婚約者はビル北棟で死亡。ヘッドさんは78階で出会った男性から死の間際に指輪を託され、後に男性の遺族に渡したなどの美談がマスコミで伝えられて有名人になった。
04年ごろからヘッドさんは生存者ネットワークで活動を始め、貿易センタービル跡地でジュリアーニ前市長らを案内し、遺族のケアなどを実施。昨年の講演では「同時テロの際に体験したことは決して忘れないだろう」と話していた。
しかし9月27日付のニューヨーク・タイムズ紙は、ヘッドさんの話にはつじつまが合わないことが多いと報道。メリルリンチにはヘッドさんを雇用した記録はなく、彼女が卒業したとするハーバード大学などにも在籍記録はなかった上、婚約者だったという男性の家族もヘッドさんの存在を知らなかったという。さらにスペイン紙はヘッドさんがバルセロナ出身で、父親は本人が主張している外交官ではなく、金融事件で投獄された人物と報道。同時テロで負ったとするけがもスペインで起こした自動車事故のものとみられると報じた。
同ネットワークのジンブラー臨時代表は「彼女のしたことは、私たちの友情だけでなく、同時テロの関係者すべてを欺いたものだ」と憤っている。(共同)
ソース msn産経 2007.10.19 18:57
http://sankei.jp.msn.com/affairs/disaster/071019/dst0710191859003-n2.htm
掲示板スレッドのタイトル通り、まさに「悲劇の美談はウソでした」。9.11を巡り陰謀説も絶えないが、夥しい犠牲者が出た事実だけは否定できない。イラク戦争時に捕虜となり、救出されたことで一躍注目を浴びたジェシカ・リンチさんの例もあるが、こちらは国のプロパガンダやメディアに利用された観がある。だが、タニアは端からペテンだったのだ。
その二に続く
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うーん、単なる嘘つきだったみたいですね。
しかし、どれだけの有名(知名度有)だったかわからんですが、そんな簡単にわかる事がなんでこうなってたのか。
雇われてたという会社なら1.5秒でわかるでしょうに。
それぐらいの調査もしないずさんな報道なんでしょうかねー。。
(最低限それぐらい調べて公開するのがマスコミだと思ってたんで、ある意味ショックです。)
ナイラ証言といい、マスコミは身元調査すらしないんですかねー。。。
すげー適当。。。
ナイラ証言!懐かしいですね~ このクウェート駐米大使の娘「ナイラ」による偽証は、湾岸戦争のプロパガンダの典型ですが、ナイラ証言を憶えている日本人はどれだけいることやら。せいぜいサヨクか中東オタクくらいでしょう。
ただ、現代はネットで検索できる時代になりました。「証言自体がクウェート政府の意を受けた、ヒル・アンド・ノウルトンによる自由クウェートのための市民運動広報キャンペーンの一環であったことが判明した」(wiki)とあります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%A9%E8%A8%BC%E8%A8%80
ヒル・アンド・ノウルトンは巨大広告カンパニーであり、マスコミにとって身元調査など二の次です。日本のマスコミも酷いですが、アメリカのそれは適当というよりは確信犯では?マスコミが戦時にはプロパガンダ機関となるのは普通だし、きちんと調査してから公開するというのは、もはや幻想です。