評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」
山崎元が原稿やTVでは伝えきれないホンネをタイムリーに書く、「王様の耳はロバの耳!」と叫ぶ穴のようなストレス解消ブログ。
推薦図書「東大を出ると社長になれない」
水指丈夫氏の小説「東大を出ると社長になれない」(講談社)が発売された。当ブログは、時に自分の新著も宣伝しそびれるくらいの怠慢ブログなので、発売されたばかりの本を推薦図書として取り上げるのは珍しいが、僭越にも私が帯の推薦のことばを書いた本なので、これは自分が本を書くよりも珍しいこと(!)だから、ご紹介する。
東大を出ると社長になれない、と言われると、確かに、そうかな、という気もする。現実には、多数の東大出サラリーマン社長が存在するので、「東大を出るといい社長になれない」の方が現実によくあてはまるような気がするが(世の中の平均よりも、「良くない社長」が多いような気がするし、東大出の役員の比率は会社の成長性に反比例する傾向があるように思う)、この本が言う「社長になる」は、起業に成功して社長になるタイプの社長を指している。これはなぜだろうか?
或いは、たとえば、学園祭でヤキソバ屋を出すとすれば、どのような立地に出すのが一番儲かるのか? それは、どういう理由からだろうか。
別の例としては、出店に成功した小売店を、同業の大手が買収したいと申し入れてきた場合にどう判断すべきか? 同業者は似た店を出して潰しに来るかもしれないし、競合店を出しても儲かりにくいから、この心配は必要ないかもしれない。考えるべき要素は、何と何だろうか。
また、こうしたミクロな話の他に、為替レートの話や、マーケット(資本市場)の本質に関わるような大きな話も出てくる。
水指氏の新著は、こういった現実の経済の問題(経済学の問題でもある)に対する問いかけと種明かしをしながら、自然にストーリーが進み、気が付いてみると読者の勉強が捗っている「大変楽な経済のテキスト」である。
個々のケースの中身は「経済学の問題」だから、実際に経済学者を相手に試してみると面白そうだ。経済学部の学生は、コンパに教官を呼んでやってみると、教官の経済的「地頭」と人格が分かる(怒ったり、ムキになったりするかも知れないから)。
オヤジ族の読者としては、この本が取り上げているケースは、日々のビジネスに本当に役に立ってしまう可能性がかなりあるし、何よりも水商売の女性と話をする上で役に立つだろう(不純な動機に訴えてスミマセン!)。
小説としては、設定もストーリーの進行も「肩に力が入っていない」点がいい。よくある経済小説のような「大げさな設定×陳腐な人間ドラマ×小説としては稚拙な文章」といった読者を恥ずかしい気持ちにさせるようなイタい過失(「罪」とまで言うと可哀相だ)を犯していない。敢えていえば、すんなり読めすぎる点と、若い女性が何人も出てくるのに、少しもエロくない点が少々物足りないが、これは「経済のテキスト」を兼ねているから仕方がないのか。もちろん、女性読者も爽やかに読むことが出来るはずだ。
「水指丈夫」はペンネームであり、プロフィールを見ただけでは、どの程度著者の人物像を明かしていいのか分からないが、著者は、経済学者としての業績もあり、頭が良くて且つ他人のココロがよく分かる人である(私が「保証」するのは僭越の「行き過ぎ」というものですが)。経済に興味のある人は、是非読んでみて下さい!
東大を出ると社長になれない、と言われると、確かに、そうかな、という気もする。現実には、多数の東大出サラリーマン社長が存在するので、「東大を出るといい社長になれない」の方が現実によくあてはまるような気がするが(世の中の平均よりも、「良くない社長」が多いような気がするし、東大出の役員の比率は会社の成長性に反比例する傾向があるように思う)、この本が言う「社長になる」は、起業に成功して社長になるタイプの社長を指している。これはなぜだろうか?
或いは、たとえば、学園祭でヤキソバ屋を出すとすれば、どのような立地に出すのが一番儲かるのか? それは、どういう理由からだろうか。
別の例としては、出店に成功した小売店を、同業の大手が買収したいと申し入れてきた場合にどう判断すべきか? 同業者は似た店を出して潰しに来るかもしれないし、競合店を出しても儲かりにくいから、この心配は必要ないかもしれない。考えるべき要素は、何と何だろうか。
また、こうしたミクロな話の他に、為替レートの話や、マーケット(資本市場)の本質に関わるような大きな話も出てくる。
水指氏の新著は、こういった現実の経済の問題(経済学の問題でもある)に対する問いかけと種明かしをしながら、自然にストーリーが進み、気が付いてみると読者の勉強が捗っている「大変楽な経済のテキスト」である。
個々のケースの中身は「経済学の問題」だから、実際に経済学者を相手に試してみると面白そうだ。経済学部の学生は、コンパに教官を呼んでやってみると、教官の経済的「地頭」と人格が分かる(怒ったり、ムキになったりするかも知れないから)。
オヤジ族の読者としては、この本が取り上げているケースは、日々のビジネスに本当に役に立ってしまう可能性がかなりあるし、何よりも水商売の女性と話をする上で役に立つだろう(不純な動機に訴えてスミマセン!)。
小説としては、設定もストーリーの進行も「肩に力が入っていない」点がいい。よくある経済小説のような「大げさな設定×陳腐な人間ドラマ×小説としては稚拙な文章」といった読者を恥ずかしい気持ちにさせるようなイタい過失(「罪」とまで言うと可哀相だ)を犯していない。敢えていえば、すんなり読めすぎる点と、若い女性が何人も出てくるのに、少しもエロくない点が少々物足りないが、これは「経済のテキスト」を兼ねているから仕方がないのか。もちろん、女性読者も爽やかに読むことが出来るはずだ。
「水指丈夫」はペンネームであり、プロフィールを見ただけでは、どの程度著者の人物像を明かしていいのか分からないが、著者は、経済学者としての業績もあり、頭が良くて且つ他人のココロがよく分かる人である(私が「保証」するのは僭越の「行き過ぎ」というものですが)。経済に興味のある人は、是非読んでみて下さい!
コメント ( 17 ) | Trackback ( 0 )
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>若い女性が何人も出てくるのに、少しもエロくない点が少々物足りない
こういう感性がすごく好きです。
ビジネス側の知識やご経験だけではなくて、こういうバランスってすごく人間として信頼できる気がするからです。
私と同じ様に感じてしまう、欲はあるけど、他人の視線にやたら怯える気の小さい人がたくさんいるのではないでしょうか。書店の平積みに手を伸ばしてもレジに持って行っても電車の中で読んでもそれほど恥ずかしくない題名が小心者にとっては有難いです。
書店のベストセラーランキングを見ると結構えげつないタイトルの本も売れているようなので、出来ることなら同じ中身の本が趣の異なる複数の外観(タイトル)
で販売されると大変買い易いのですが。
読んでみたいがレジに持っていくには抵抗が・・・。
東大OBだからこそ付けられるタイトルなのかもしれません。
立ち読みでおもしろかったら、ネットで購入するしかありません。
本の内容自体は、東大と関係のある人にもない人にも、楽な感じで読めて「ふんふん、なるほど」と思えるものであり、少なくとも東大について書かれたものではありません。発送料が無料になる定価でもあり、是非アマゾンで買って、読んでみて下さい。
それにしても、本のタイトルは難しいですね。この本と同じ講談社で、私も失敗したことがあります(失敗は講談社に限りません。講談社に特に問題があるというわけではありません)。
このブログにも何回か書いた話ですが、何年か前に「投資バカにつける薬」というタイトルの本を出したのですが、これは本が書き上がってから私が考え、編集者もその上司も賛成してくれたタイトルで、表紙の絵も面白くて、装丁的にもいい感じで、著者としては発売が楽しみだったのですが、見本が手元に届いたときに失敗を覚りました。
関係者への献本を考えたのですが、この本を献本すると、いかにも「あんたは、バカだ」と言っているような感じで、実に献本がしにくいのです。
読者の書店での行動を考えてみるとしても、これは実用書としては、なにがしか「自分がバカだ」と思わなければ買えないタイトルの本ですし、これをレジに持っていく気分も、それこそ「バカにつける薬」を買いに行くようで、気恥ずかしいかも知れません。
三刷りまで割合すんなり出て、中国語訳も出るなど、本のセールスはまあまあでしたが、タイトルがちがえばもっと売れたかも知れないとの反省気分が残りました。
他にも、「僕はこうやって11回転職に成功した」(文藝春秋)も何やら自慢話のような感じで好きではありませんし、失敗例だったと思っています。このタイトルの発案と決定は、編集者の上司によるものですが、当時売れていた立花隆さんの本のタイトルをもじったものだったのでしょう。タイトルに「成功」という単語を入れる方が読者の食いつきがいいのだ、というその上司の判断があったものだと記憶していますが、セールス的にも成功しませんでした。
この本については、その後に転職回数も増えたことですし、増補改訂版をタイトルを変えて文庫で出したいと思っています。
「会社は二年で辞めていい」(幻冬舎新書)は、タイトルが先に決まって本が書きやすかった希有な例ですが(普通は、書き上がった後から、ああでもない、こうでもないと考えることが多いのです)、発売直前に原題の「会社は二年で辞めてもいい」の「も」を取った方がキレがいいとの意見があって、「そうか。なるほど」と訂正したのですが、内容的には「も」があった方が正確なタイトルだったと後から思っています。どっちが良かったのかは今でも分かりませんが、タイトルが上手く行ったように思っているケースでも迷いがあります。
経験的には、後から考えて決めたタイトルは上手く行かないことが多く、これは、最終的に自分で思いついたタイトルの場合でもそうです。加えて、編集者本人ではなく、その「上司」だとか「営業サイド」だとかのご意見が入った場合に、あまりいいことがありません。
原則として「タイトルについては著者である私が決める」ということを条件にして執筆を引き受けているつもりなのですが、出版社サイドが後からタイトルに介入してくるケースは少なからずあり、著者としても「この方が売れる」と言われると弱いし、また営業上のリスクを取るのは出版者の側でもあるということへの気遣い(気後れ?)もあって、ご意見無用!とはねつけるのもなかなか難しい場合があります。
文庫版というのは更に嬉しいことです。私は単行本が(単に重いから)好きではないので・・・
起業社長になる要件をどう考えるかですが、地元の人にある程度必要だと思われないといけないとすれば、地方の政治家の要件「地盤」「看板」「カバン」に近いのかもしれません。
すると、東大生の親の年収が高いという調査結果がありましたから、「カバン」はクリア。年収の高い理由が医者や弁護士といった地元で名が知られているからなら「地盤」「看板」もクリア。結構起業社長の条件が整っているような?!
参考図書が山崎さんの本のように納得できるといいのですが。まずは立ち読みしてみます。
>小心者さん
立ち読みしてよかったらネットで買わずにそのまま買えば良いような。
そんな気がするのですがメリットがあるのでしょうか?
ひとつ上の佐藤健さんのコメントをお読みになれば、
小心者さんが何に共感したのか、理由(メリット)が分かるかと。
通りすがりでしたら、このコメントも
ご覧にならないかも知れませんが。
レジでも立ち読みでも変わらないし、そのまま買えば良いのに。と思ったんですよね。
まぁでも、分からないでもないですね。
失礼しました。
やはり世襲議員の力が大きいのでしょうか?
残念ながらまだ読んでいませんが、
個人的にはヒットする本のタイトルは、少し意味不明の方がいいと思ってます。
そういう基準だとちょっと東大はわかりやすいキーワードだなと思います。
「東大を出ると社長になれない。」
の対偶
「Fランク大学を出ると社長になりやすい。」
のほうがタイトルとしてはいいかなと思います。
という現実を踏まえた上で、あえてひがんでみると、「東大に入れば社長にならなくてもいい」のかなと思います。学閥つくってガッつかなくても、そこそこリターンがいいのではないでしょうか。
もっとひがむと、小説とはズレますが、
「東大生の作った特殊法人は美しい」(秘書、車、オフィスが。)!と叫んでおきます。
幾つもあるイメージの一つですがね。
でも正直、そんなベチャベチャしたバーでは、飲みたくない。
だから女人禁制。
以上です。
oluyo