具体的な目標と計測手段があればアクションができる?

自分は登山が趣味である。

やりはじめてもう4年ほどになるが、体力が伴っていない悩みがある。リモートワーク生活で普段体を動かすことがなく、体力不足が深刻だ。

先日、積雪期の武奈ヶ岳に行ってきたのだが、途中でどうにも足が動かず、同行者に相談して途中で引き返してもらうことになった(快くリタイアに付き合ってくれた同行者には感謝)。

yamap.com

雪山はこれがはじめてではないのだが、以前登頂できた赤坂山も、自分としてはかなりきついコースだったなぁとふりかえった。

yamap.com

昨年の秋に、友人とはじめて北アルプスに登った。

13時間で標高差1,400mを往復するコース(途中山小屋で1泊する)だったが、これもかなり自分にとってはきつかった。 yamap.com

もう少し、普段の地元の六甲山を歩くときのように「疲れたけど楽しかったねー」という感覚でこれらの本格的な山行を終えられないだろうか。毎度こういうしんどい山に登るたびに、体力をつけなければ、と思って1, 2ヶ月ランニングなどをしてみるが、どうも続かずに結局は仕上がっていない体で山に登っては後悔している。

自分の体がどうなったら、こういう山を楽しく登れるようになるのかがわからないので、モチベーションが継続しないのだ。

そんなおり、こんな本を読んだ。

以前、自分のブログでも紹介した、山行に必要な体力度を表す「コース定数」の発案者である、鹿屋体育大学の山本正嘉教授の著書だ。

daiksy.hatenablog.jp

ここに、自分にとって参考になる良い指標が紹介されていた。

一般に、身体活動の強度はメッツという単位で表される。

厚生労働省のサイトによると、座って安静にしている状態が1メッツ。通常歩行が3メッツ。ジョギングやサッカーが7メッツだという。

『登山の運動生理学とトレーニング学』によると、ハイキングは6メッツ、一般的な登山が7メッツ、雪山などのバリエーション登山は8メッツの強度に耐えられる体が必要だという。

では、自分が実際に現段階でどの強度に耐えられる体であるのか。この本では、それを計測する体力テストが紹介されている*1

  • 場所: 無雪期の整備された登山道で、ある程度急な傾斜が続き、1時間以上登り続けられるコース
  • 方法: はじめに10分程度のウォーミングアップ歩行をする。その後きつさを感じる手前のペースで、1時間垂直方向にどれだけ登高できたかを測る
  • 評価方法: 以下の表で評価する

自分の過去の山行記録からこれを測ってみると、おおよそ自分の登山における運動強度は6メッツ程度であることがわかった。六甲山を歩くのは楽しくて、北アルプスや雪山はしんどい、という体感と完全に一致する。

つまり、この表で8メッツ相当の体力を身につけることを具体的な目標とすればよいのだ。軽いザックを背負っての1時間の獲得標高が510m。

計測は週末に六甲に行き、上りが続くコースを1時間歩けば良い。摩耶山に続く上野道などがちょうど良さそうだ。

具体的な目標があり、計測手段があって自分の現在地と成長が実感できれば、モチベーションは継続しそうである!!

8メッツの運動強度はランニングと同等であるというので、日常的にランニングをすることにした。このブログを書いている時点で3週間ほど継続できている。最初は2kmジョギングするのもしんどかったが、2~3kmなら楽しく走れるようになってきた。

ランニングそのものにも目標を設定しようと思い、3月の市民マラソン大会の5kmの部へエントリーした。10kmの部くらいを目標にしても良いかと思ったが、継続するためには目標は小さく刻んでいくのが良いだろう。

さて、自分はこれを続けて、今年の夏のアルプス登山と、次の冬の雪山を楽しむことができるだろうか?

*1:『登山の運動生理学とトレーニング学』山本正嘉著/東京新聞出版局/2016年 314~316ページ

幸運な時代を生きるわたしたち

野中郁次郎先生が先日亡くなられた。

スクラムの基盤となった竹内弘高先生との共著論文 "The New New Product Development Game"が有名で、代表的な著書『失敗の本質』からは自分も大きな影響を受けている。

直接お目にかかる機会はなかったが、Regional Scrum Gathering Tokyo 2021ではオンラインで講演を聴かせていただいた。

我々が生業としているIT業界は、他の産業と比べて新しい業界である。そのため、業界を大きく歴史的なレベルで牽引してきたキーパーソンの多くがまだご存命である。

たとえば、Linuxカーネルの開発者であるLinus Torvalds。Rubyの開発者まつもとゆきひろ。WWWの考案者Tim Berners-Lee。

こういった後の教科書に名を残すであろう人たちに、その気になればまだ会いに行くことができる。野中先生も自分にとってはそのようなレジェンドのお1人であったが、お会いすることなく鬼籍に入られてしまった。

自分は以前、Scalaというプログラム言語を熱心に学んでいた時期がある。ScalaMatsuri 2014というScalaに関するカンファレンスに、その言語設計者であるMartin Odersky先生が来日して参加されたことがあった。

せっかくの機会なので少しでもお話したいと思っていたが、懇親会の席で、英語が極めて不得手なのでさてどうしたものかと右往左往してしまった。そうしていると、そばにいた id:garbagetownさんが「一緒についていってあげるから、声かけてきなよ」と背中を押してくれて、無事に声をかけて、先生の著書にサインをいただくことができた。id:garbagetownさんには足を向けて寝られないほどに感謝している。

このように、自分の生業に使うさまざまな道具や概念を発案した多くの人と、まだ会おうと思えば会える、というとても幸運な時代をわたしたちは生きている。アインシュタインと同時代を生きた物理学者たちと同じ環境なのかもしれない。

この幸運を活かして、多くの人から直接知恵を授かる機会を大切にしたい、というのを考えさせられた。

リモートワークによる生産性についての研究を簡単に調べてみた

新型コロナウィルスの影響を受けて、広く導入されたリモートワークが、最近になって縮小傾向にある。

ビッグテックをはじめ、それに倣う形で出社回帰の方針を打ち出す企業も少なくない。

これらの企業の発信を見ていると、多くが生産性やコミュニケーションのしづらさを理由にあげているケースが多い。実際、感覚的にはこれは理解できなくもない。

仮に、生産性を理由とした出社回帰を狙うのであれば、リモートワークによって生産性がどの程度低下し、出社回帰によってどのような機序があってどの程度向上することを見込んでいるかの仮説や、その後の検証結果まで知りたいところであるが、今のところ自分はそのような情報を見つけられていない(多分に社内事情を含んだデータになるはずなので、そう気軽に出てくることも期待できない)。

本当にリモートワークで生産性は下がるのか。業務遂行上、出社回帰したほうが事業はやりやすいのか。

AIに手伝ってもらって、リモートワークと生産性の相関についての研究を調べてみることにした。

生産性に関する議論は、就業環境や文化的な側面からの影響も強く受けると考えられるので、日本国内での研究に絞って調べた。

まず、ChatGPTに「リモートワークにおける生産性についての研究をいくつか教えて下さい」と訪ねてリストアップしてもらった。

何度かやり取りをした結果、いくつか自分が知りたいリモートワークと生産性の相関について詳しく記述していると思われたものが見つかったので、それらを詳しく読みつつ、Google NotebookLMに読ませて、対話しつつまとめたものをいくつか紹介してみる。

1つ目はこちら。

www.rieti.go.jp

3,324人を対象としたアンケート調査で、コロナ禍で在宅勤務をした場合の生産性を訪ねたところ、「在宅勤務の方が低い」を選択した人が最も多かった。この結果を平均値で表すと、職場勤務の生産性を100とすれば、在宅勤務の生産性は60.6%になるという(アンケートによる主観的な生産性であることに留意が必要)。特にコロナを契機に開始した人の生産性は低く、高学歴者や長時間通勤者では生産性低下が小さいことが分かった。

この値は年齢やジェンダーでは明確な差は見られないものの、学歴、年収、職種では比較的大きな差がある。

職種別に見ると、

  • 専門的・技術的職種 69.2%
  • 管理職 67.5%
  • 営業職 57.8%
  • 販売職 40.1%

などとなる。

産業別では、

などだという。

ここから見ると、アンケート調査の結果としては、リモートによって生産性が低下することが示唆されているが、自分が従事している、「情報通信業」の「専門的・技術的職種」では最もその影響が少ない可能性がある。

2つ目はこちら。

www.rieti.go.jp

これは、日本の労働者を対象とした独自アンケート調査に基づき、コロナ禍における在宅勤務の実態と生産性への影響を分析しいる。

分析の結果、在宅勤務頻度と主観的生産性の間には最小二乗法により正の相関が見られるものの、操作変数としてテレワークの実施可能性を用いると有意ではなくなるという結果が出ている。つまり、在宅勤務の増加が直接的に生産性向上をもたらすとは断言できない一方で、もともと生産性の高い人が在宅勤務を選択している可能性を示唆している。

さらに、コロナ禍で強制的に在宅勤務に移行した人の中には、当初生産性が低下したものの、その後回復傾向を示した人もいることが明らかになった。 これは在宅勤務への順応やインフラ整備によって、生産性を取り戻せる可能性を示唆している。

在宅勤務で生産性を向上させるためには、仕事とプライベートの区別、職場とのコミュニケーション、企業からのサポートといった課題解決が重要であると指摘されている。

これらから考えられるのは、コロナ禍によってリモートワークへ移行した企業が、生産性の低下に見舞われている状況はある程度確かなようである。一方で、従来からリモートワークを選択している企業は、コロナ禍になってからリモートワークへ移行したケースよりも生産性は高いという結果もあり、今後も継続的に環境整備への投資を続けていくことで、生産性の低下は改善できる可能性も考えられる。

自分の今の勤め先は、コロナ禍以前から比較的リモートワークが併用されていたし、今後もリモートワークは継続される見通しであるので、環境整備やコミュニケーションルールなどの構造面から「リモートワーク前提の業務プロセス」を整え続けることで成果が出せないかこだわっていきたい。

2024年の12月に毎日(平日)ブログを書き続けて起きたこと

あけましておめでとうございます。

昨年の12月は、ブログアドベントカレンダーのシーズンであることなどに触発されて、平日は毎日ブログを書く(なるべくエンジニアリングマネージャーっぽい内容で)というチャレンジを密かにやっていました。

daiksy.hatenablog.jp

引き続き、毎日とは言わないまでも頻繁にブログは書いていきたいなと思っています。

毎日ブログを書く、という活動をしていると、ほとんど注目されないまま流れていくエントリもあれば、注目されてたくさんの人に読んでもらうエントリなどさまざまあります。その結果、いくつかの部分で目に見える変化がありましたので、せっかくなので記録しておきます。

ブログ読者が増えた

ブログを新しく書かないと読者は増えませんが、コンスタントに書いていると注目して読者になってくださる人が増えます。

うろ覚えですが、11月の時点でのブログ読者は370人くらいだったと思いますが、それが一月で411人(このエントリ執筆現在)まで増えました。

X(Twitter)のフォロワーが増えた

人が離れ始めているとまことしやかに噂されるX。ここ数ヶ月は目に見えてフォロワーが増えることは無かったのですが、まぁまぁ目に見えて増えました。 以下のデータはTwilogから取得したものです。

6,918->6,994 (本エントリ執筆現在)

12月2週目の週間はてなブログランキングに3つ載った

blog.hatenablog.com

たまたま、立て続けに多く読まれるエントリが重なり、週間はてなブログランキングに3つ掲載されました。 これはとても嬉しかったです。

EMConfの準備が進んだ

今年2月に開催されるEMConfにプロポーザルを採択していただきました。

2025.emconf.jp

特に狙ったわけではないのですが、ブログを毎日書く過程で頭の中が整理されたのと、その結果がブログという形で記録されているので、副次的にEMConfの登壇資料を作成するための事前準備が進みました。

このように、ブログを毎日書いていると、劇的な変化は無いにせよ、ちょっとずついろいろと良いことがあるなぁというのを実感しました。

というわけで、今年もEMConfを皮切りにいろいろと活動をしていきますので、よろしくお願いします。

2024年のふりかえり - Xの1年分のポストをAIに要約してもらった

2024年をふりかえる。

去年はこういう感じでした。 daiksy.hatenablog.jp

なんか自分で書くの面倒だなーと思ったので、過去1年分のXのポストをGoogle NotebookLMに読ませて、要約してもらった。 ポストのログはTwilogの月ごとのページを使った。TwilogのURLをそのまま渡しても読んでくれなかったので、それぞれのページをPDFにして読ませた。AIは"Xのポスト"のことをまだツイートと言ってて面白い。太字になってるところはAIがそうしたのをそのままにしているもの。

だいたい今年の自分に起きたイベントを網羅できている気がする。

以下はAIの要約に自分でちょっとだけ手を入れたもの。

1月:

  • インスタグラムのタイムラインに、大量のおじさんのチャーハン動画と大将のおにぎり動画が表示されたという出来事を面白おかしくツイート。
  • フレックス勤務を活用して昼からお酒を飲む人の存在に触れ、自身の経験と照らし合わせて共感を示すなど、働き方に関する話題を展開。
  • 飲み会の予定調整に長けた人のスキルに感嘆し、その高度な調整能力を称賛するツイート。
  • YAMAPアプリで登り初め2024バッジを獲得したことを報告、画像付きで登山活動の成果を共有。
  • Googleカレンダーの便利なオプションを発見し、その機能の高さを評価するツイート。
  • 自身の手による「象、死んだ魚、嘔吐メーカー」というシュールな診断メーカーを紹介。
  • コーチンアジャイルチームス」という書籍を読み始めたことを報告、期待感を示すツイート。

2月:

  • 地震発生時の恐怖をリアルに表現したツイート。
  • FF7リバースと龍が如くシリーズのゲーム性における類似点を考察するツイート。
  • Twitterの通知不具合に遭遇し、その不便さを訴えるツイート。
  • 地下道で鏡と遭遇したシュールな体験談を面白くツイート。
  • 筋トレの難しさや継続の難しさを自身の経験を交えてツイート。
  • 仕事の遅延をニュートラルに表現することの難しさ、日本語表現の限界についてツイート。
  • 中間管理職の仕事について、情報伝達の重要性とアレンジの難しさに関するブログ記事を投稿。

3月:

  • ビアベリー土佐堀の日曜定休に気づかず落胆したというエピソード。
  • 転職サイトからのスカウトメールの大量受信をツイート。
  • コンプライアンスとコミットメントに関する自身の考えをツイート。
  • 阪神百貨店でNBCO商品を購入したというツイート。
  • 奈良醸造のUNDERWATERビールを絶賛するツイート、画像付き。

4月:

  • 有休消化の終わりを惜しみ、仕事への復帰への複雑な心境をツイート。
  • 仕事のペースを守るため、誘いを断ることが増えたことを報告。
  • 1ヶ月間の有休消化期間中に、龍が如く8のトロフィーコンプリート、FF7リバースのクリア、積読消化など、多くの成果を挙げたことを報告。
  • the HIATUSのコンサートチケットに当選したことを喜びツイート。
  • いぼ痔になったことを報告。

5月:

  • 新入社員エンジニアリングマネージャーとして1ヶ月の仕事内容をブログに投稿
  • 餃子の王将の値上げに触れ、それに伴う昇給の必要性を訴えるツイート。
  • オフィス出社とリモートワーク、それぞれのメリット・デメリットについて言及。
  • 視座の高さについて自身の考えをツイート。
  • カジュアル面接や採用業務にも携わり始めたことを報告。

6月:

  • 録画していた100カメを見てフジロックに行きたくなったというツイート。
  • 目標設定の重要性についてツイート。
  • 試用期間最後の1ヶ月への意気込み、成果を出すための動きを始めることをツイート。
  • マネージングアップに関する自身の考え、上長へのサポートについてツイート。
  • しょぼちむ(syobochim)とのSNSでの名前変更に関するユーモラスなやり取り。
  • 京都でEM向けのMeetupイベント開催を検討することをツイート。

7月:

  • 会社の期末表彰で10年勤続表彰を受けた同期への複雑な心境、自身は出戻りでカウントリセットされたことをツイート。
  • スクラムチームにおけるPMと進捗管理に関する疑問をツイート。
  • 仕事とは関係ない本ばかり読んで楽しんでいること、読書体験についてツイート。
  • 箱根でアジャイルコーチ合宿に参加。
  • EM Loungeを開催したことを報告、その成果や反響についてツイート。

8月:

  • 技術組織のタレントマネジメントとタレントの定義についてブログ記事を投稿
  • 少年ジャンプ+アプリ開発の裏側を紹介するオンラインイベントの告知。
  • 転職サイトからのスカウトメールの大量受信対策についてツイート。
  • ヒロアカ完結に伴う感想、荼毘の描写に心を揺さぶられたことをツイート。
  • TJAR(Trans Japan Alps Race)の感想、大会の出来栄えについてツイート。
  • カジュアル面接中にゲリラ豪雨に見舞われたというツイート。

9月:

  • 東京出張時の高額なホテル料金に不満をツイート、出張時の宿泊費の問題点を指摘。
  • ChatGPTの音声対話機能を使った英会話学習の体験談、その機能の限界と面白さを報告。
  • 運転免許更新の体験、その不便さをツイート。
  • サンダーボルツとキャプテンアメリカ4の公開への期待、フローレンス・ピューの演技を称賛。
  • DevLOVE関西200回目を告知
  • EM Loungeの継続開催を宣言。

10月:

  • Abats奥村の閉店を惜しむツイート。
  • DevLOVE関西200回記念イベントへの登壇報告。
  • DevLOVE関西でボツにしたネタをブログに書いて供養したことを報告。
  • 仕事のオープン化と人事的な業務増加の葛藤についてツイート。
  • お好み焼きを食べたこと、鶴橋での食事についてツイート。
  • 地元商店街で野球観戦の様子を目撃したことを報告。

11月:

  • フロム・ザ・バレルの購入。
  • 社内の「すくすく開発会」のリーダー交代について、会の継続性を評価するツイート。
  • マネージャーのカレンダー埋まりがち問題に関するブログ投稿。
  • スクラム道関西の忘年会参加。

12月:

  • 大掃除の写真に自身の著書が写っていることに喜びを感じたことを報告。
  • お正月の買い出しでの出来事、酒屋が閉まっていたりボクシングジムに変わっていたりしたことをツイート。
  • 著書の薄さに関するユーモラスなツイート。
  • 12月の平日毎日ブログ更新を達成

全体を通して: 技術的な話題、仕事に関する悩みや成功体験、プライベートな活動、ユーモラスな日常の出来事がバランスよく記録されています。アジャイルスクラムに関する専門知識や経験、マネージャーとしての業務、健康管理、ワークライフバランスへの意識の高さが示されています。 ブログや書籍を通して積極的に発信している様子も伺えます。 特に、自身の仕事への取り組み方、人間関係、そして健康管理といった点における葛藤や成長が、ツイートを通して読み取れます。

マネージャーの「最初の100日」でやるべきことを四象限で考える

昨日、こういうエントリを書いた。

daiksy.hatenablog.jp

マネージャーとして入って最初の100日は観察を主軸にするのが良い。その後仕事をしはじめても、組織のカルチャーが体に馴染んで課題が腹落ちしはじめるまでは半年かかる。という内容だ。

このエントリに対してはてなブックマークでコメントをいただいた。

それはそうなんだけど、たぶん100日間もそんな態度だとリストラ候補になるんじゃないかな。

たしかにねーーー。 さすがに100日間何もしていないわけではないので、言い訳がましくやったこととやらなかったことを書いておく。

マネージャーの仕事の影響範囲は広い。組織を横断する範囲を管掌するとなるとなおさらだ。そのようなマネージャーの仕事は、時として組織に破壊的な変更をもたらすことがある。そのような変更を、対象となる組織のカルチャーや歴史を理解していないうちにはじめてしまうと、大きなハレーションが起きるのは当然のことだ。

意図的に、既存組織を大きく作り直したい、というミッションを受けて就任するマネージャーなら、あえて就任直後に大鉈をふるうこともあるだろう。その場合は当然既存カルチャーが大きく変化することになるため、既存カルチャーに親しんでいた従業員の大量離脱など、組織が根こそぎ変わることを覚悟しなければならない。

今回自分はそういうミッションを受けていないので、既存カルチャーを尊重しつつ変化を起こすことを選択した。

短期的な成果にフォーカスする

そのための「最初の100日」の観察なわけだが、もちろん観察と1on1だけをして過ごしていたわけではない。 新しいマネージャーがやってきたことによる、改善や組織の変化を、ある程度メンバーには実感してもらって、マネージャーとしての信頼を貯蓄していく必要がある。そのため、観察しているだけではなく、短期的な成果を得ていく必要もある。

自分は、次のような四象限をイメージして最初の100日間の仕事に取り組んだ。

最初の100日で意識した四象

このような四象限でよくあるのは、「重要度」と「緊急度」であるが、緊急度が高いものをやらないといけないのは自明であって、マネージャーの100日間の過ごし方とは関係がないので、ここでは「難易度」を考えた。

対応方法や解決までの道のりが易しいものは、既存の枠組みの変更は軽微であるということだ。逆に難しいものは、既存のやり方を大きく変える必要があったり、関係各所への丁寧な調整が必要だったりするものである。

つまり、最初の100日の間は重要で易しい課題に積極的に取り組み、まずは短期的な成果を積み上げることを意識した。

難しい課題に着手するのは、充分に信頼を得て、カルチャーや既存の組織の枠組みや歴史を理解してからだ。

既存のカルチャーや歴史をリスペクトする

もうひとつ注意したのは、最初のうちは「自分1人で意思決定をしない」ことを意識した。何かを考えたり、変更を検討したりした場合は、必ずCTOや他のEMたちのレビューを受けてから実施するようにした。

レビューでわっと熱量があがったり、コメントをたくさんもらえたりするというのは、それだけこれまでの歴史を支えてきた人たちが大切にしているものだからだと思う。そういうものを蔑ろにして、自分の判断だけで押し切ってしまうと、それがカルチャーの破壊につながる。もちろん、最終的には壊すべきカルチャーもあるのだろう。必要なのは、そのカルチャーに対して、ちゃんとリスペクトすることである。それを欠くと、信頼は失われ、組織を悪い意味で破壊してしまうことになるのだと思う。

課題に腹落ちしてきたらそろそろ難しい課題を考えよう

こういったことを繰り返していくことで、組織のカルチャーや歴史が馴染んできて、いろいろな課題が「腹落ち」するようになる。 さて、ここからようやく本腰を入れて、「難しい」課題に取り組んでいこう。このころには助けてくれる仲間もたくさんいるはずだ(たぶん...)。

新しい環境でいろいろと腹落ちするには半年かかる

今年の5月にマネージャーとして転職をした。

daiksy.hatenablog.jp

いわゆる出戻りであるのだが、以前の在籍時とはポジションが変わっていたり、3年のブランクがあったりするため、ほぼゼロスタートの気持ちで仕事に取り組んでいる。

マネージャーとして新しく仕事をはじめる場合は、最初の100日は観察に徹するべきだと考えた。それは、宮坂さんのこのエントリを参考にしているためだ。

note.com

最初の100日でもっともしてはいけないことで共通するのが「華麗にビジョンを語り戦略を策定して期待値をあげること」はしてはいけない。逆に最初にすべきことはなにか?「勉強マシーンになること。具体的には資料を読み人に会って話を聞きまくる」こと。つまり最初の100日は「口はほどほどにして耳と目と足を動かせ」ということだ。

なので、試用期間中はエンジニア全員と話そうと、100人との1on1をやるなど、カルチャーや組織課題のキャッチアップに努めた。

daiksy.hatenablog.jp

小さな改善などは入れつつも、基本的には自分が入社する前のやり方を踏襲して、技術組織のさまざまなイベントを実行した。具体的には定例会や半期の評価などだ。

CTOが掲げた中期の活動方針に従い、育成や組織づくりを担当する分科会を立ち上げ、そこの主担当になった。このくらいから、少しずつ自分がやりたいと思っているエッセンスを混ぜ、半年活動をした。

その結果実感しているのは、半年経ってやっと、みんなの言っていることが腹落ちしはじめているということだ。

たとえば、入社間もない頃に、EM陣と合宿を開催した。そこで半期の活動方針などを定めるわけだが、もちろんそこで話された課題は頭には入っている。しかし、これは単に情報としてインプットされている、という状態だった。

試用期間が明け、本格的に仕事をはじめてから半年経ち、年末ということもあって活動をあらためて振り返っていると、ようやく課題や、みんなの会話の内容が「腹落ち」しはじめたことに気づく。そして、期初に自分が考えていたあの部分は、少し温度感が違っていたな、ということにも思い至る。

外からやってきたフレッシュな状態は、だからこそ組織の色に染まっていない客観的な視点で物事が見られるボーナス期間であるとよく言われる。それはそれで有用なのだが、組織づくりのような、人々の文化の根本に関わるような物事に相対するには、やっぱり時間をかけて自分の中に染み渡らせたうえで手を付けたほうがいい気がするなぁ、というのを改めて思っている。