化学オタが非オタの彼女に化学世界を軽く紹介するのための10物質
まあ、どのくらいの数の化学オタがそういう彼女をゲットできるかは別にして、
「オタではまったくないんだが、しかし自分のオタ趣味を肯定的に黙認してくれて、
その上で全く知らない化学の世界とはなんなのか、ちょっとだけ好奇心持ってる」
ような、ヲタの都合のいい妄想の中に出てきそうな彼女に、化学のことを紹介するために
見せるべき10物質を選んでみたいのだけれど。
(要は「脱オタクファッションガイド」の正反対版だな。彼女に化学を布教するのではなく
相互のコミュニケーションの入口として)
あくまで「入口」なので、時間的に過大な負担を伴うマニアックな物質は避けたい。
できれば教科書に出てる物質、少なくともニュートンムックにとどめたい。
あと、いくら化学的に基礎といっても古びを感じすぎるものは避けたい。
化学好きが『水』は外せないと言っても、それはちょっとさすがになあ、と思う。
そういう感じ。
彼女の設定は
という条件で。
まずは俺的に。出した順番は実質的には意味がない。
タキソール
アレって典型的な「オタクが考える一般人に受け入れられそうな化合物(そうオタクが思い込んでいるだけ。実際は全然受け入れられない)」そのものという意見には半分賛成・半分反対なのだけれど、それを彼女にぶつけて確かめてみるには一番よさそうな物質なんじゃないのかな。
「化学オタとしては、タキソールの全合成と、非常に有用な生理活性である抗がん作用の面白さは“常識”としていいと思うんだけど、率直に言ってどう?」って。
水素
「やっぱり物質は人間が豊かに暮らすためのものだよね」という話になったときに、そこで選ぶのは「炭素」でもいいのだけれど、そこでこっちを選んだのは、この物質の原子量が好きだから。
断腸の思いで削りに削ってそれでも1.0g/mol、っていう原子量が、どうしても俺の心をつかんでしまうのは、その「軽さ」ということへの諦めきれなさがいかにも物質的だなあと思えてしまうから。
水素の原子量を俺自身は冗長とは思わないし、もう削れないだろうとは思うけれど、一方でこれが炭素や酸素だったらきっちり12.0g/molとか16.0g/molにしてしまうだろうとも思う。
なのに、各所に頭下げて迷惑かけて1.0g/molになってしまう、というあたり、どうしても「自分を形作っているプロトンが捨てられない物質」としては、たとえ水素がそういう物質でなかったとしても、親近感を禁じ得ない。水素自体の宇宙での量の多さと合わせて、そんなことを彼女に話してみたい。
過酸化水素
(酸化還元論的)化学の「酸化」あるいは「還元」をオタとして教えたい、というお節介焼きから見せる、ということではなくて。
「あらゆる質量・電荷は保存する」的な感覚がオタには共通してあるのかなということを感じていて、だからこそ化学の最も基本的な反応は酸化・還元以外にはあり得ないかとも思う。
「条件次第で酸化も還元もできる新しい物質」というオタの感覚が今日さらに強まっているとするなら、その「オタクの気分」の源は過酸化水素(より強い酸化剤と反応すれば還元剤として働き、より強い還元剤と反応すれば酸化剤として働くこと)にあったんじゃないか、という、そんな理屈はかけらも口にせずに、単純に酸化と還元の美しい関係を楽しんでもらえるかどうかを見てみたい。
ニトログリセリン
これは地雷だよなあ。地雷が火を噴くか否か、そこのスリルを味わってみたいなあ。
こういう純粋軍事チックな化学を元事業家の化学者が推進していて、それが非オタに受け入れられるか気持ち悪さを誘発するか、というのを見てみたい。
窒素
9つまではあっさり決まったんだけど10個目は空白でもいいかな、などと思いつつ、便宜的にを窒素を選んだ。
尿素から始まって窒素で終わるのもそれなりに収まりはいいだろうし、工業化学以降の大量生産・大量消費時代の先駆けとなった物質でもあるし、紹介する価値はあるのだろうけど、もっと他にいい物質がありそうな気もする。
というわけで、俺のこういう意図にそって、もっといい10個目ははこんなのどうよ、というのがあったら教えてください。
「駄目だこの増田は。俺がちゃんとしたリストを作ってやる」というのは大歓迎。
こういう試みそのものに関する意見も聞けたら嬉しい。
10個は疲れるなこれ…。穴だらけだわ。そういう意味では元増田すげえな…。
ベンゼンとか硫酸とかケイ素あたりを入れたかったが入らなかった。
あとBINAPかポリアセチレンも入れたかった。
以上ほぼテンプレ通り
書き終えて
マジで疲れた。
こういうのは思い立ったらすぐ書くに限る。
念のため註
追記
右上にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)の構造式を書いてみた。
なんだかよく分からないものですが、こういうものです。
有機合成ではしばしば触媒として用いられます。
ヒドラジン(H4N2)でPdCl2を還元し、トリフェニルホスフィン(PPh3)を作用させて作ります。
不安定で、完全に窒素・アルゴン雰囲気下で作っていくものらしいです。
あと、最後の物質がアンモニアが良かったという話をいただきましたが、窒素にした理由は単体・無機化合物(と言われているもの)・有機化合物(と言われているもの)のバランスをとるためです。
どうしても、有機化合物が多くなったのは私の知識が専門に偏ってるせいです><
とは言え、希ガスを入れ忘れた希ガs(ry
個人的には、過酸化水素とか若干分析化学的なモノとか、水素という物理化学的なもの(と、言うより物理化学でしばしば扱われているもの)も入れて極力分野の偏りをなくす努力をしたつもりです。
まぁ、文句のある人はマジでちゃんとしたリストを作ってください。