A Fine Theoremというブログで、シカゴ大学のChad Syversonが生産性について書いたサーベイ論文「What Determines Productivity」を紹介している(H/T EconAcademics.org)。
以下はそのブログエントリの概要。
- SICの4桁分類を基に同一産業内の生産性の違いを調べたところ、上位10%と下位10%では平均して生産性に2倍の差があることが分かった(Chad Syverson (2004)[WP])。
- Chang-Tai Hsieh and Peter J. Klenow (2009)[WP])は中国とインドではその差がもっと大きいことを見い出した。
- この結果は生産性の異なる尺度や、差の評価に関する異なる手法に関して頑健である。
- 理論上は新規参入が自由に許されていれば低生産性企業は淘汰されるはずである。従って低生産性企業の存続は、新規参入の制限、効率的な企業の拡張への制約、もしくは効率性が発見的学習(learning-by-doing)によって習得されるため直ちには高まらないことが原因ということになる。
- 非効率的な企業がベストプラクティスを実践しない理由は、技術の普及という長らく研究されてきた問題に関わるが、それについてはSyversonはあまり言及していない。基本的な話は、他の企業で「良い」とされている経営慣行が自分の企業にとっても良いかどうか自明ではない、ということである。
- 有名なエベレット・ロジャーズ(Everett Rogers)の「イノベーションの普及」では、1950年代のペルーの事例が紹介されている。小さな村に2年間派遣された公衆衛生コンサルタントは、地元民に水を飲む前に沸騰処理をするように説得を試みたが、2年後に沸騰処理という「イノベーション」を採用したのは5%に留まった。採用しなかった理由は、難しかった、既に病気になった人だけが沸騰処理した水を飲めばよいと思った、コンサルタントの経歴を信用しなかった、等々。かくのごとく技術の普及は難しい。
- 非生産性の原因を完全に要因分解するのは難しい。