三輪先生の本、出撃ほぼ完了。
- 作者: 三輪芳朗
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2008/04/02
- メディア: ハードカバー
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明日から新年度。社会人は今日からでしょうか? アクセス数が昨日の夜から激減しているので新年度開始でさすがにネットでブログ遊覧というわけではないのでしょう。僕も明日から大学ですので、皆さんの新しい船出(船出しない人も)の無事を祈ります。
ところで新学期そうそうからネットで経済問題を中心に「だまされない」ための基本書を以下のご案内。
まず原論はこの6冊でしょう。
1 飯田泰之『ダメな議論』
いま話題の毒餃子問題から財政赤字、年金問題など、ネットで流布する謬説にだまされない基本的なリテラシー(この言葉僕は嫌いw でも学生の皆さんは馴れてるので使用)を提供する快著
2 ロバート・グラー『論理で人をだます法』
ネット上での議論のやりとりや記事などでうっかりひっかかる謬説のパターンを一挙収録。なかなかこの種の集大成本はないだけに珍重。1と2は何度も読みこみ推奨。
3 仲正昌樹『ネット時代の反論術』
これ読んでから2ちゃんへ逝け。というほどリアリティあふれるネット論争術の実演版
4 フランクファート『ウンコな議論』
ポストモダン系の思想談義にだまされないための論理武装。中上級者向け
1から4までのように論理と真理だけが論争でだまされない基本じゃないぜ、レトリックも大切なんだぞ、というむきにはいきなりレトリック本よりもこの切れ味鋭い論説をおすすめ。著者の各種審議会委員のときの経験も豊富。
シュンペーターの経済観―レトリックの経済学 (岩波セミナーブックス (70))
6 福井秀夫『官の詭弁学』
塩野谷先生はそういうけれどもレトリックの詭弁性がやはり問題、ネットでも大問題、という人にはこの書を実演集としておススメ。
英語が読めると日本のネット論壇の危うさが米国などと比較対照できるぞよ。だもんで、3ヶ月くらいは英語に命をかけるべし。以下は僕がかって中学生2年生レベルの英語力の人間を1年半でW大の院生にしたときの猛勉強の素材をスキルアップしたもの*1。要するにネットでは「読めればとりあえずよし」。基本は粘着なほどの暗記だ。
厨房レベルから英語をスタートするのなら(本当に厨房以下の場合は今日から始まってるNHKラジオの『基礎英語』を聞け そしてブログ読む暇あったら勉強orz)、以下のテキストが僕はお好み。各章を二日で丸暗記するくらいの勢いでやっていくことが肝心。憶えたら問題を解いてみる。自分で採点。間違えたら間違えたのを死ぬほど記憶。どんどん憶えるとどんどん忘れるので 笑 またどんどん憶える。憶えるコツはイメージ暗記。文字を映像で記憶していく感じ。あと手を使って何度も書いて、口にもだしていく。体で覚えるのがコツかな? そんなちゃんとした記憶法じゃないけれどもそれで無問題。もっといい方法あれば教えて。
暗記は体力勝負みたいなものなので、ある段階までいくと絶対にめげてくる。そのときめげてはいけない(といってもめげるひとはめげる、それが人生)。ともかく「頭がわるい」「覚えが悪い」とか自分を納得させる理屈は☆の数ほど思いつくが、やるってことの理由はひとつで足りると思う。そもそも頭の良し悪しが問題になるのは僕らよりよほど頭のいい人たちがその微細な差を厳しく競うようなとき。僕らのような頭をちゃんと使ってない人は「頭がわるい」なんて贅沢をいって自分を誤魔化すのはだめだと思ふ。
この本が終われば次はこの二冊。語彙を死ぬほど増やすための第一段階。もう古典すぎて使えねえ〜とかいわないように。前者は社会科学的な論説を読むにはいまだに語彙選択において優れているような気が‥‥する。後者もいいよ。前者はペースとしては1週間にまずは30単語くらい記憶(意味は一個だけセレクトしておく、何順もやるのでその都度意味の暗記をふやせばよし)して暖気運転。第2週目で40単語、第3週目で50単語として最大100単語を毎週記憶。どんどん憶えてどんどん忘れて、またどんどん憶える。後者は☆印のついてる短文は抜かす。それ以外の英作文を日本語をみたら反射的に英文が書けるほど憶えておくこと。これは毎週10文ずつ。馴れてきたら20〜25文ずつ暗記。最近のはCDついてるので耳からの学習もできる。ナイスだ(死語)。
英文を読むための基礎訓練は以下の3冊をおススメ。最初のも古い? クセがある いいじゃん。後二者は経済に特化しているが若干話題が古いけれどもまあまだ目をつぶれる。
The Economistの記事で学ぶ「国際金融」と「英語」
The Economistの記事で学ぶ「国際経済」と「英語」
以上、6冊をあげれば、ほとんどネット上の英文を読む基本知識はゲットしているはず(ちなみに凡百の大学院の英語試験くらいはたぶん受かる)。あとはご自由に。
次にネットであまた展開されているトンデモ経済論だが、これに関しては前記の飯田氏の本でかなり対処可能だ。しかもよく僕を誹謗するお莫迦さんが「田中は経済学を知らないくせにおれのトンデモ(とは自分ではさすがに言わないか)経済論を批判する」と特定ブログや掲示板あたりでいっているのをよく目にするが、実際にほとんどのネットで見るトンデモ経済論の多くは、比率でいうと80%近くは、批判するのに経済学なんかいらない、これは長年トンデモ経済論をみてきた経験でいえることで、経済学の教科書以前の論理的推論と多少の事実観察で十分対処できる。
論理的推論の手がかりは最初の6冊で与えたので、「多少の事実観察」のたしになる本を紹介したい。
まず簡単な統計学の匂いを知っておこう。この本の最初の記述統計の読み方も重要。よくグラフの詐術であやしいことをいう人が多いのですごく役立つだろう。最後の参考文献もより上級の話題へのステップに使える。
考える技術としての統計学 生活・ビジネス・投資に生かす (NHKブックス)
8 上野泰也『チーズの値段から未来が見える』
これは僕が信頼する民間エコノミストベスト5のお一人による、日ごろのエコノミストの仕事や心がけはなにか、まで丁寧に教えてくれる今年度屈指の良書。いや、見掛けはすごく安易そうに見えるけれどもこんないい本はちょっとない。
9 鈴木正俊『経済データの読み方』
経済データの面白い解説書は多い。このほかにも門倉貴史『統計数字を疑う』、永濱利廣『経済指標はこう読む』などの良書があるが、ここでは大御所に敬意を表して。さらに英語力がついていればエコノミストの経済指標の解読本をなには置いてもぜひ読むべき。日本の統計については上記、飯田氏の統計本の末尾を参照のこと。
Guide to Economic Indicators: Making Sense of Economics (The Economist)
さてようやく経済学だ。しかし上にも書いたように、経済学なんて実はいらない、のがネットのトンデモ経済論の多くだ。それでもどうしても1冊何かを選べ、というならばやはりこの歴史的な1冊がいまだに断然の本に違いない。
最後にどうしても専門外や社会人やニートやそのほか怪人二十面相までの方々で、経済学を基礎からみっちりやりたい、という人がいればすでにここまでの行程を終えていること(特に英語!)。その上で二冊だけ。ひとつは経済学に必要な数学の本(ただし将来プロになろうというのではなく、あくまで専門論文をそこそこ理解できる水準を目指す場合)、もうひとつは経済学の基本書。
経済数学は実は好みによつて分かれるが、まあ、僕ぐらいのレベルでいいでしょ?(爆笑) ならば以下の本がおススメ。動学についてはこの本を読み終えれば自分の力で探せるからアドバイスはいらないだろう。
経済学についてはバーナンキとフランクの次の共著を変化球だがおススメしたい。
繰り返し書くが、ネットでのトンデモ経済論にだまされないために、最初から経済学を学ぶのは物凄くコストパフォーマンスが悪い。そのことに注意されたし。