iPhone 3Gはインターネットマシンとして見ても微妙? ガラパゴス・ケータイはやっぱりすごかった
タイトル釣り気味御免。この週末、iPhone3Gを弄繰り回してみてたどり着いた結論が『やっぱニッポンのケータイはインターネットマシンとして見てもすげぇよくできてる』だ。まぁなんていうか、皆色々期待感ある発言してるけど、もうそろそろわかってきてるんでしょ? やっぱ日本のケータイはインターネットマシンとして見てもすげー便利だ、ってことに。あ、ここからは日本国内でいちユーザーとしてみた時の話。AppStoreでワールドワイドのBigWaveに乗るしかない!俺たちゃITベンチャー!みたいな視点とはまったく別なので注意。
iPhone 3Gで便利だと感じたところ
一般的にすげーと言われたりしてるけど "俺的にハテナ" なところ
インターネットマシンとしてみたとき不便に感じたところ
- ケータイ向けサイトが見れない
- UA判定されるとPCサイトに飛ばされる
- ケータイ向けサイトを閲覧したときにショートカットキーが使えない
- きつすぎ。スクロール&スクロール&スクロール。目がまわる...は冗談で手間がかかる
- 縦長サイトの閲覧が超めんどい
- ↓キー押しっぱなしで最下段までがーっとスクロール、という機能がないため縦長サイト閲覧がとっても辛い。最上段に行くにはアドレスバーWタップという手が用意されているんだけれどねぇ...。
- コピペが使えない、個人情報挿入機能がない
- まぁ山ほど語られているので皆まで言わないけど、メールで送られてきたお店に地図やら駆使してたどり着く、ってのができないのがほんときつい。Webで調べた番号に(ブラウザから電話機能に橋渡しして)電話かける機能があるだけまだ救いか。あと個人情報(自メルアド)をペーストする機能がないのがきつい
- 日本語入力が論外すぎ
- 変換スピードが遅いとかそのへんの話がいろいろ出てるけど、根本的に連文節変換がないケータイとか(文字を色々入れる人なら)ありえない...。「そういや今日の会議の資料って何時ごろ送ってくれます? 17:00までにはくださいね。よろしく」程度の文章打つのにどんだけかかるねん!って話。金曜日からひたすらタイピング練習したけど連文節変換ないとやっぱり早くなんねーよ...。ちなみに英語で外人とやりとりしたんだがこれは超絶快適。ミスタイプ補正とか神のように美しく効いてくれる。今の日本ケータイなんてメじゃない! ってぐらい。ああつまりそういう設計のやつを無理やりローカライズしたのね、というのが伝わってくる。むー
この点、増井さんご本人からコメントをいただいたのでLinkしておく
http://masui.clipp.in/entry/10485
ご指摘の点は『連文節変換が日本語入力にとって必須のものであるという考え方は誤っているのではないか』だ。仰るとおり必須ではないかもしれないが、今回のiPhoneについては色々総合的に見て必要だったんじゃないか?少なくとも私は個人的に必要だと思いました、というのが感想。以前身近な何人かのケータイタイピングを観察する機会があった。私もふくめて皆さん予測/例示インタフェースをかなり活用しており、これがチープ入力デバイス(?)における重要なポイントであることは理解する。ただ、現状のiPhoneのように予測/例示のみの連文節変換なしでは"思ったより長め"に入力してしまったとき、操作量が増えるのだ。ここがiPhoneの日本語変換が特に使いにくいところその1。「富士リンゴは美味しいね」と書くとき、フジと入れて例示を選べばいいが、フジリンゴと入れてしまうとBSを2回叩かねばならない。連文節と併用していればこの可能性を減らせる*1、だから連文節は必要、という意見だ。勿論文節切りミスが発生した場合の工数は大きくなるのだが、"慣れ"てしまえば無意識下で文節切りミスが起きないような文章を書くようになる。
使いにくいところその2は予測/例示候補が出てくるまでの時間が遅いこと。1,2秒から、遅いときは3秒かかる。連文節変換と予測例示のハイブリッドであれば、最初の文節の予測候補が出てくるまでの間に先を打っておくことができる。先の例でいえばフジリンゴハまで打った頃にはフジを打ち終わってから3秒ぐらい経っているのでフジの候補がでているだろう、ということだ。ユーザーがフジの候補として富士を選んでいる間にリンゴの候補を出しておくことだってできるはず*2。
以上2点が、連文節変換がないiPhoneの日本語入力はありえない、という意見となった背景である。
一般的にマイナス点と言われてるが気にならない項目
- 電子マネー,ワンセグがない
- まぁこれは個人的にはなくてもいい。でも背面が平らじゃなくなったのでSUICAを両面テープで貼れなくなった。これは痛い
雑感
まぁずらずらっと羅列してみたが正直なところ、音楽プレイヤーの部分についてはiPhoneに敵う端末はないと思うが、インターネットマシンとしてみたときに日本のケータイの便利さはまだまだ群を抜いている。これは端末だけがすごいんじゃなく、日本のケータイインフラにコンテンツ側もきちんと対応してきた結果生まれた状況だ。
私はSoftBank 911Tを愛用しているのだが、フルブラウザは契約していない。そして、このBlogをごらんの皆さんのように重度のPCサイト系ユーザーだ。でもほとんど不自由は感じないのである。はてなRSSリーダーを使ってBlogを読み、はてブの新着をチェックし、Gmailを確認・返信し、Googleカレンダーで予定管理する。場所がわからなければYahooモバイル地図を使い、Yahoo路線検索で乗り換え検索をする。mixiモバイルとMovaTwitterで外出先からコミュニケーションを取る。これぐらいの操作であればiPhone3Gよりも遥かに既存ケータイのほうが便利なのだ。便利というのは、具体的には『表示・操作にかかるトータルでの時間が少ない』ということ。なぜかといえば、これらのサイトはガラパゴスケータイの標準ブラウザに対応していて、ガラパゴスケータイで操作することを考えて作られているからだ。MovaTwitterやはてな系サービスなんてその筆頭だと思うが、主要機能は全てショートカットキーで操作できるため、操作量が少なくて済む。あーおもしろい記事ないなぁ、はい次ページ!なんて操作はケータイだと6押して終了なところが、iPhoneでは最下段まで何度もスクロール操作を繰り返し、親指を大きく動かしてボタンをタップしないといけない。いやいやケータイで表示できないサイトも多いでしょ、という意見もあるだろうが、Googleモバイルゲートウェイを通して文字情報を読めないサイトはかなり少数派だ。AJAXバリバリのツール系サイトはモバイル版を用意していたりすることが多いし(ex. Gmail)。
コピペがないのは想像以上に苦痛だ。メールで来た飲み会の場所をYahoo地図で調べる、という当たり前の操作ができない。まぁこのへんはよく語られる話なのでこれぐらいに。コピペではないが、自分の電話番号やメールアドレスをWebのフォームに差し込めないのも辛い(じわじわくる辛さ)。日本語入力のできの悪さはWindowsMobile端末以下だ。いまどき連文節変換を備えないFEPなんて使えるかよ...。顔文字とか (w (笑 などの良く使うキーワードを辞書登録できないのもキツすぎる。
個人的にiPhoneに期待していたのは「WindowsMobileスマートフォンのユーザーは全員涙目」というぐらいの"インターネットマシン"としての使い勝手だっただけに残念である。WiFi環境で使ったときの『インターネットマシン』としての使い心地はアドエスのほうが上だなぁと感じてしまうのだ。まぁ筐体の大きさとかデザインは一日の長があるんだけれども。
さて、ここまで個人ユーザーの視点でiPhoneを語ってきたが、最後にちょっとビジネスの視点から。まぁ日本は一旦この状況(コンテンツまで含めてガラパゴス最適化)が出来上がってしまったので動きはほとんどないと思うのだが、諸外国でどういう動きになってゆくのかが興味深い。特にUS。やっぱPCサイトをモバイル環境で使うのって使いにくくね? ということにユーザーも提供者側も気づいて各国それぞれのモバイルサイト潮流が勃興するのか、それともPCサイトでいいじゃない!としてPCサイトの表示能力でしのぎを削る戦いに入って行くのか。
個人的にはやっぱり前者なのかな、と思う。ブルーオーシャン戦略という使い古された言葉があるように、2位、3位の企業やスタートアップ企業にとって、モバイルサイトという新しいフィールドが出現するほうがビジネスチャンスが増えるので、市場を分離・独立させようというドライブパワーが働くだろうからだ。
ただ、グローバルにコンテンツを提供する側としては、ワールドワイドで共通仕様のブラウザ・アプリエンジンが乗っている端末ってのは「楽チン」なのでとっても魅力的に映る。果たしてiPhoneの海は血の色に染まるのか、それとも...。