2012.04.25

「大手生保は敵にあらず」。明確な理念と多様性を武器に4年弱で上場を果たしたライフネット生命。出口治明社長に聞く。

 ネット保険専業のライフネット生命が東証マザーズに上場した。2008年5月の営業開始からわずか4年弱での株式公開は極めて異例だ。「正直に、わかりやすく、安くて、便利に」という理念を掲げスタートしたベンチャー企業の成功の秘密は何か。創業者の出口治明社長は、今の生命保険業界に対するアンチテーゼを掲げたことが共感を持って顧客に受け入れられている、と語る。(聞き手は、経済ジャーナリスト 磯山友幸)

---当初から、こんなに早く上場することを計画していたのですか。

ライフネット生命、出口治明社長

出口 開業時には想定していませんでした。もともと、保険業や商業銀行など多くの人を対象にする会社は、上場してマーケットの審判を仰ぐべきだという信念を持っていました。ですから、日本の多くの生命保険会社のように相互会社形式で上場していないのは、おかしいのです。ただ、会社を一から立ち上げたので、そんなに慌てて上場しなくてもいいかな、とも思っていました。

---それがなぜ上場に踏み切ったのですか。

出口 誤算があったのです。ライフネット生命のように認知度、信頼度がもともとゼロの会社が、それを上げることは容易ではない、と痛感したのです。創業時から「契約者の集い」というのを開いて、お客様に会社を見にきていただき、お話をさせていただくのですが、こんなことがありました。帰り際にひとりのご夫人が旦那さんに「本当に会社があって良かったわね」と言っていたのを耳にしたのです。

 当社は本社以外に店舗を持っていません。ライフネット生命は実在しないのではないか、と心の片隅で不安に思っていたのでしょう。また、こんな話も聞きました。加入に反対していた奥さんが、当社のテレビ広告を見て賛成に変わったというのです。そんなこともあって、一刻も早く上場しようという風に考えを変えました。

---保険を安くするというのが創業の1つの理念ですね。

出口 ネット販売専業のライフネット生命のビジネスモデルをよく缶ビールに例えています。スーパーで1本200円で買える缶ビールも居酒屋で飲むと400円になります。これにはビール本来の価格の上に人件費や物件費が乗せられているためです。大手保険会社の従来モデルは、いわば居酒屋のお姉さんの出張販売モデルです。保険自体のコストの上に、セールスレディの人件費などが乗っているわけです。

---安さが勝負ということですか。

出口 いえ、それだけではありません。値段だけなら同業他社にもっと安い商品も出てきました。ライフネット生命のホームページ(HP)に来るお客様の6~8割は社名検索です。バナー広告や価格比較サイト、アフィリエイトから来る率が、同業他社に比べて低いのです。これはブランドが成り立っている、ということではないでしょうか。「保険料を半分にするから安心して赤ちゃんを産んで欲しい」「真っ正直な経営をする」といった創業の理念が支持されているのだと思います。

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