朝日新聞が次期社長人事で迷走している。
木村伊量社長は10月10日に東京本社であった社員集会にて、12月には新体制に移行する考えを表明。同じ政治部出身で子飼いの持田周三常務(大阪本社代表)を後任に起用する計画だったが、「役員が総辞職して新たな体制で出直すべき」といった意見が販売系の役員から出始め、社内にもその意見に同調する動きが強まった。このため、持田氏を後継に据える計画が白紙に戻った。同時に「持田氏も、他人のアドバイスを聞かず暴走しがちな木村社長とは距離を置き始め、社長就任を固辞したようだ」(中堅幹部)との見方もある。
「販売部門から社長を出すべき」
10月29日にあった取締役会では、12月5日に臨時株主総会を開催することが決まった。「その際に、木村社長が株主総会で諮る取締役人事を自分に一任するように動いたが、同意が得られなかった」(同)ようだ。総会の招集通知を11月14日までに送る予定であり、それまでに新任取締役人事案をまとめ、召集通知に議案として載せることができるかが焦点となる。
朝日社内では、この際、編集部門ではなく販売部門出身者を社長に起用して再建を図ろうとする動きも出始めている。従軍慰安婦報道の一部記事取り消しを行った8月5、6両日の「検証報道」や池上彰氏のコラム一時掲載見合わせ問題、吉田調書報道の取り消しと謝罪などの一連の混乱は、経営陣が編集権の独立を無視して口を出したことが大きな要因と見る向きもあるからだ。
経営と編集の分離を図るためにも、編集出身者が社長に就く慣例を破って、販売部門出身者に社長を委ねるべきとの声が強まっている。その有力候補は、「販売のエース」と言われた飯田真也・上席執行役員だ。飯田氏は、今後の朝日新聞の在り方などについて考える第三者委員会である「信頼回復と再生のための委員会」の委員長を務めている。