「長野の小さな食堂」が7000万円脱税〜真面目と評判の夫婦がなぜ?
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木曽川の源流に位置する村で起きた「巨額脱税」事件。その舞台は寂れた食堂だった。真面目で実直だと評判の夫妻だっただけに、地元住民は「まさか」と口を揃える。だが、国税当局は見逃さない。
村は噂でもちきりに
江戸と京都を結んだ中山道六十九宿—。その真ん中に位置する「薮原宿」は江戸時代、木曽路を行く旅人が疲れを癒やす宿場町として栄えた。
木曽川沿いにある小さな集落は、現在、長野県木曽郡木祖村薮原と名前を変えた。江戸時代の活気を思い起こさせる風情は、ほとんど残っていない。旧中山道と並行するように走る国道19号線が整備されてからというもの、宿場町を通る人はめっきりと減り、村は廃れていく一方だ。
地方に行けばどこででも目にしそうな、寂れた宿場町。そんな村で起きた巨額脱税事件が、このところ村人たちの格好の話題となっている。
発端は11月16日付の朝刊だった。木祖村で食堂を経営する夫妻が母親から3億3000万円の遺産を相続し、そのうち2億5000万円を隠していたと報じられたのだ。約7000万円を脱税したとして、関東信越国税局から長野地検に告発され、長野地検は翌17日に夫婦を在宅起訴した。
夫妻の名前は仮に、水原邦雄氏(68歳)、高子氏(68歳)とする。彼らは国道19号線沿いで「やぶはら食堂」を親の代から営んでいた。
近隣住民がこう話す。
「静かで小さな宿場町ですけど、いまは水原さんの話題で持ちきりですよ。本当なら(同じ木曽郡出身の力士)御嶽海の新入幕初勝ち越しでもっと盛り上がっているはずなんですけど、やっぱり脱税のほうが気になります。二代にわたって食堂をやってきただけで3億円なんて、どうやったらそんな大金を貯められるんでしょうかね。以前から売り上げを過少申告していたんじゃないか、なんて言う人もいますよ」