今や毎日のように人工知能のニュースを見聞きする。しかし、世界の人工知能分野で活躍する様々な人たちの「生の声」を聞く機会はまだ少ない。
人工知能はどこまで賢くなっていくのか。人類の文明は次の時代に突入するのか。SF映画にでてくるような人工知能がこれからでてくるのか。まだまだわからないことが多い。
今の勢いで研究が進むことで、人間のように言葉を理解し意識を持った人工知能が生まれてくるのだろうか。その鍵となると考えられているのは、人工知能の究極とも言われる「汎用人工知能」という次世代の技術だ。
今回、チェコの注目のスタートアップ「GoodAI」について紹介したい。GoodAIの創業者のマレック・ローサは、個人の資産で1000万ドルをつぎ込んで、「汎用人工知能」(Artificial General Intelligence)を作るためにこの会社を設立した。
現在の人工知能ブームの元となっている技術は「ディープラーニング」と呼ばれるもので、特定の目的を解決することに優れている。その上を行くと考えられているのが、汎用人工知能だ。これは、広範な問題を、自分自身がどんどん賢くなりながら解いていってしまう人間レベルの知性をもったアルゴリズムのことだ。
GoodAIは10年という期限を決めて、「汎用人工知能をできるかぎり早く創る」ということをミッションに向かって突き進んでいる。この2月には賞金総額500万ドルを用意して、「汎用人工知能チャレンジ」というコンペを開始。これも、汎用人工知能を開発するための戦略で、いま世界中から挑戦者を募っているところだ。
GoodAIとは一体どんなスタートアップなのか、汎用人工知能ができたらどうなるのか、CEOのマレック・ローサに聞いた。
なぜ汎用人工知能の実現を目指すのか
金井 GoodAIとは何を目指しているのでしょうか?
マレック GoodAIの目的はただ一つ「汎用人工知能 (General Artificial Intelligence)をできるかぎり早く創ること」につきます。
汎用人工知能というのは、一言でいえば「人間レベルの人工知能」のことです。これを使って人類の発展を加速し、宇宙の謎を解き明かしたいのです。
知能というものが解けてしまえば、それを利用して、世界のあらゆる重要な問題を解決することができてしまいます。
金井 そのようなミッションをもったスタートアップをどうやって始めたのでしょうか。
マレック GoodAIを始めたのは今から約3年前です。子供の時からロボットやAIなど知的な仕事を自動化することに興味があり、その夢をずっと持ち続けてきて今にいたります。
GoodAIの資金はゲーム会社を作って稼いだお金を元手にしています。そのKeen Softwareというゲーム会社のCEOは続けながらGoodAIのCEOも務めているので、時間を両方に割いています。でも、いまはGoodAIでの人工知能開発の方に集中しています。
金井 AIにはゲーム会社を始める前から興味があったのですか?
マレック 15歳ぐらいのころからプログラムを自分で書くようになり、最初に作りたかったのがAIだったのです。自分に話しかけてくるようなAIを作ってみようと取り組んでいました。
その後、もっと別の種類のプログラムも書くようになり、コンピューターグラフィックスとかバーチャルリアリティとか物理シミュレーションとかに興味を持つようになり、それらがゲームにつながっています。
そのころ人工知能開発の道に進もうか、あるいはゲーム開発者になろうかと考えていました。当時は、人工知能の開発をするよりも、ゲーム開発をしたほうが確実にお金を稼ぐことができるような状況でした。
まだまだ人工知能を実現するにはコンピュータの発展も必要でしたし、作品を作りたいという気持ちもあったのでゲーム開発の道を選びました。