取材

エクアドルのバナナ博士が語る「バナナにバナナ狩りがない理由」


エクアドルといえば世界最大のバナナ輸出国ですが、なんと、この地でバナナ農園を営む日本人がいます。「バナナは自分の全て」と語る田邊正裕さんの農園にお邪魔して、意外と知らないバナナのあれこれを教えてもらいました。

世界新聞特命記者の清谷啓仁です。世界一周中のわたくし、現在、エクアドルの首都キトにいます。メキシコから中米を南下すること4ヶ月半、ようやく南米入りすることができました。

キトはこのあたり


キトの旧市街は世界遺産に登録されています。


そしてエクアドルといえば赤道!北半球と南半球をまたいで仁王立ち。


田邊正裕さんは16歳の時にエクアドルへと移住し、1991年からバナナ栽培を始めたそうです。20年以上バナナ栽培に奮闘され、自然循環型農法という栽培法で作られたこだわりのバナナを、日本向けに輸出しています。田邊さんのバナナは「田辺農園バナナ」のブランドで知られており、日本でも人気のバナナです。

「田辺農園」はキトからバスで4時間、エスメラルダス県のラ・コンコーディアという町にあります。

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田辺農園へようこそ!


全部……バナナ!!約300ヘクタール(東京ドーム約70個分)の広大な農園に、男のロマンが漂います。


バナナは日本の輸入果物の第1位、全体の約6割を占めているということで、年中、どこの家庭でもバナナがあることにも納得。さっそく、バナナ博士こと田邊さんに農園を案内してもらいました。


田辺農園のこだわりは「自然な形で育てる」バナナ。除草剤、土壌消毒剤は一切使用していないので、雑草が生い茂っています。森の中にいるような感覚で気持ちがいいです。


バナナは親株(右)を収穫したら子株(中央)、子株を収穫したら孫株(左)といった具合に、世代交代しながら農園を移動していきます。それぞれ収穫が終わると木はなぎ倒されます。


バナナは世界一大きい草の仲間です。年輪のように見えるのは葉が重なってできたもの。


バナナの蕾


バナナといえばカーブした形状が思い浮かびますが、最初から曲がっているわけではありません。最初は下向きに育っていたものが、太陽光を受けて活性化したホルモンの働きでだんだん曲がってくるのです。


虫や鳥からバナナを守るため、一つ一つ丁寧にビニールを被せます。


田邊さんに、美味しいバナナの見分け方を聞いてみたところ、「見た目だけでは正直分かりません(笑) バナナはスイートスポット(茶色い斑点)が出たころが食べごろで、甘みがあって美味しいと言われています。個人的には少し青っぽくて酸味がある方が好きなのですが、皆さんも色々と試してみてください!」とのことでした。バナナを美味しいまま保存するには、直射日光の当たらない風通しのよい場所に、100均などでも購入できる市販のバナナハンガーを使ってつり下げておくのがオススメ。


田辺農園は土にもこだわっています。規格外や傷のあるバナナ、茎・葉等を餌としてミミズを育て、堆肥を生産しています。


ミミズ堆肥の生産場です。


これが……


ミミズの力で……


立派な堆肥に変わります。こうなるまでに約半年かかるそうです。


規格外や傷があって日本に出荷できないバナナの多くは、肥料へと生まれ変わります。本来であれば食べられるはずのバナナ……色や形、大きさに過剰にこだわるのは日本市場の悪い習慣ですね。


バナナに含まれる糖質や炭水化物には、食べてすぐ吸収されてエネルギーとなるもの、時間をかけて徐々にエネルギーに変わるものが一緒に入っています。即効性と持続性を兼ね備えた“奇跡の食べ物”なのです。


農園に張り巡らされたレールを使って、バナナを工場まで運びます。


1つ1つが30kgから45kgもあります。ちなみに、たとえバナナの生産地に行ったとしても「バナナ狩り」はできません。バナナは必ず実が青いまま木から切り離して出荷されます。木についたまま成長させ続けると実の糖化がなかなか始まらず、味が乗らないからです。


バナナのグレードや品質のチェック。この時点で熟しかけているものは、日本に輸出することはできません。


花を摘んで……


房ごとに切り離していきます。


バナナの語源にはアラビア語で「手足の指」を意味する「banan」と、西アフリカの言語で「(複数の)指」を意味する「banea」に由来しているという2つの説があるそうです。


バナナを洗う水は地下から汲み上げた水をろ過し、さらにオゾン殺菌するという徹底ぶりです。


さらに適度な本数に切り分けられ……


梱包ラインへと運ばれます。


トレイに入れられたバナナには……


安心安全の証として、田辺農園のシールが貼ってあります。


パズルを組むように箱詰めしていき……


真空パックにして袋の中のバナナが熟成するのを防ぎます。


ダンボールに蓋をして……


コンテナに載せていきます。


こうして僕たちのもとに、美味しいバナナが届けられるんですね。


「自然の営みの中で生まれたバナナと工業的に大量生産されたバナナの違いは、言うなれば湧き水と蒸留水のようなもの。同じH2Oですが、味は全く違いますよね?生命力に満ち溢れたこだわりのバナナをぜひ一度、皆さんに食べてもらいたいです!」


「田辺農園バナナ」は、ローソン、イトーヨーカドー、マルエツ、成城石井、ライフ、オオクワなどで販売されています。

身近にあるバナナですが、「そんなバナナ!」と意外にも知らないことが多くて驚きました。エクアドルに想いを馳せながら「田辺農園のバナナ」を食べるのが、旅を終えて日本に戻ってからの一つの楽しみです。


文・取材:清谷啓仁

監修:世界新聞
http://sekaishinbun.net


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in 取材, Posted by logc_nt

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