米シトリックス・システムズは不思議な会社だ。米マイクロソフトに12年間「ターミナルサービス技術」を提供し続けながら、マイクロソフトに飲み込まれることなく、業績を伸ばし続けてきた。シトリックスのマーク・テンプルトン社長兼CEOは「マイクロソフトを恐れてはならない。常に投資をし続け、その3年先を行くのが生き抜く道だ」と力説する。(聞き手は中田 敦=日経コンピュータ、写真は加藤 康)
いま、多くのシステムインテグレータが、クラウドを不安視しています。特にマイクロソフトが「Windows Azure」によって、パートナーの製品やサービスを脅かすのではないかと危惧しています。マイクロソフトとどう付き合うべきか、コツはありますか。
確かに、マイクロソフトとビジネスをやっていくのは、決して簡単なことではありません。初期のシトリックスも、マイクロソフトを大変恐れていました(注:シトリックスは1997年にマイクロソフトと提携し、「WinFrame(当時)」のリモートアクセス技術をOEM提供した。それがWindows Serverの「ターミナルサービス」である。ターミナルサービスは機能拡張が続いており、シトリックスの「XenApp(旧:MetaFrame)」は常にマイクロソフトの追い上げにさらされている)。
しかし2001年ごろに、我々は考えを改めました。恐れを振り払い、マイクロソフトとの関係を深め、自社の価値をアピールすることにしたのです。
我々が心がけたのは、マイクロソフトの3年から4年先を行くことです。マイクロソフトがWindows Serverにターミナルサービス技術を標準搭載することで、多くの顧客がターミナルサービスに関心を示すようになりました。そういう顧客に対して、マイクロソフトにはない付加価値機能をXenAppは提供します。マイクロソフトはプラットフォームプロバイダであり、我々はそれに付加価値を提供するパートナーです。マイクロソフトも当社を、プラットフォームの価値を高める存在として尊重しています。
今後はターミナルサービスだけでなく、マイクロソフトの仮想サーバー「Hyper-V」や仮想デスクトップ「VDI(Virtual Desktop Infrastructure)」に対しても、付加価値を提供します。
仮想化デスクトップのVDIは、09年10月に発売される「Windows Server 2008 R2」の目玉機能です。シトリックスの「XenDesktop」と競合します。連携はうまくいきますか?
もちろんです。実際にマイクロソフトは我々の仮想化デスクトップであるXenDesktopを「VDIパートナーソリューション」に選び、「VDIを強化する製品」としてエンタープライズ顧客に推奨しています。