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「戒厳文書」の背後に権力の中心…?国防長官の隠蔽疑惑も究明を

登録:2018-07-23 09:37 修正:2018-07-23 10:05
特別捜査団が明らかにすべき疑惑 

光化門に戦車・国会議員の逮捕など、国防長官レベルを超え 
「軍協力」強調など合同参謀本部の「戒厳実務便覧」とは全く異なり  
大統領の文書提出の指示にも関わらず遅れた意図の究明を
ソン・ヨンム国防長官が今月20日午前に開かれた国会の法制司法委員会全体会議に出席し、議員の発言を聞いている。ソン長官の左側2番目がイ・ソック機務司令官、その後ろがキム・ヨンウ陸軍参謀総長/聯合ニュース

 国軍機務司令部の衛戍令・戒厳令検討文書を捜査する特別捜査団が、最近機務司令部が追加で公開した67ページの「対応計画の細部資料」文書を機に、捜査に拍車をかけている。先週、本格捜査に乗り出した特捜団は、これまで機務司令部の要員らを召喚し、文書作成の背景と経緯、過程などを調べることに主力するという。特捜団は今後、機務司令部の戒厳文書作成を誰が指示し、どこまで報告されたのか、どれだけ実行に移す準備をしたのか、またソン・ヨンム国防部長官はこの文書の存在を報告を受けた後、いつ、どのように大統領府に報告したのかなど、いくつかの疑惑を解消するのに積極的に乗り出すものと見られる。

■機務司戒厳文書の背後は?

 22日まで直接・間接的に確認された最高上層部はハン・ミング元国防部長官だ。昨年2月、ハン・ミング当時長官がチョ・ヒョンチョン当時機務司令官に衛戍令・戒厳令発令の検討を指示し、翌月初め、チョ司令官は2週間作業した検討文書をハン長官に報告した。

 しかし、大統領府が20日、機務司令部の67ページの「対応計画の細部資料」文書だとして公開した内容を見ると、ハン長官一人で抱えられるレベルを超えている。先制的処置が戒厳令の成功のカギだとし、夜間に光化門(クァンファムン)・汝矣島(ヨイド)などの主要地点に戦車・装甲車を迅速に投入したり、国会の戒厳解除議決を阻止するために国会議員を逮捕したり、国家情報院長を戒厳司令官の指揮・統制に従うようにさせるという内容は、実行を前提にしたものという疑念を強く抱かせる。しかし、法的に戒厳令宣布は大統領の権限であり、兵力動員も権力の中心との共感なしには不可能だ。ハン元長官の背後に誰かがいる可能性が大きいと見られる理由だ。

 しかも昨年3月、朴槿恵(パク・クネ)大統領府は憲法裁判所の弾劾訴追の棄却を予想したという。弾劾は当時残っていた裁判官8人のうち、少なくとも6人が賛成しなければならない。当時、弾劾賛成世論が80%に達していたが、大統領府は朴前大統領が指名した裁判官など保守の人物3人以上が棄却に回るだろうと信じていたという。今回の機務司令部文書が大統領府など権力の中心レベルで憲法裁の弾劾棄却後、これを不服とするろうそく集会を鎮圧するため、軍兵力の派遣を検討したと解釈されるもうひとつの背景だ。

■どこまで進められ準備されたのか?

 戒厳は計画だけでは成功できない。機務司令部の文書が計画通りに施行されるには、兵力動員部隊や支援部隊などとの協力がなされなければならない。8ページの「戦時戒厳及び合同捜査遂行案」文書も「今後の措置」という項目に「衛戍令または戒厳の施行準備着手」は「依命(命令に依拠するという意味)」と書き、「本対応計画を国防部・陸軍本部など関連部隊(機関)に提供」し、「戒厳任務遂行軍の任務遂行の手続きを具体化」と明示している。関連部隊と協力して具体的な遂行計画を作成するという意味と解釈される。

 通常、戒厳業務は合同参謀本部の戒厳課で担当し、毎年乙支(ウルチ)演習の際に戦時状況を想定して戒厳業務の演習を行う。また、合同参謀本部戒厳課は2年ごとに「戒厳実務便覧」を樹立し、配下部隊は日常事に戒厳令が宣布されたときに就かなければならない任務を熟知しているという。したがって、このような通常の手続きによる戒厳令の宣布は、配下部隊を動員するために別途計画を立てて密かに協力を要請する理由がない。

 しかし、今回の機務司文書は、合同参謀本部が樹立する戒厳実務便覧と内容がまったく異なるというのが大統領府の説明だ。したがって、文書の計画が実行されるにはあらかじめ陸軍本部および戒厳任務遂行軍と秘密裏に連絡し、協力を求めておく必要がある。今回の機務司文書に「戒厳任務遂行軍」に指摘された8・11・20・26・30師団、首都機械化歩兵師団、特殊戦司令部配下の1・3・7・11・13旅団、707大隊、2・5機甲旅団などだ。現在まではこれらの部隊が機務司文書に関わった情況は確認されていない。今回の捜査からこうした情況が確認されれば、今回の機務司文書の「内乱陰謀」の疑いがさらに深まるのは避けられない。

■ソン・ヨンム国防長官の遅い報告責任は

 ソン・ヨンム国防部長官が今年3月にイ・ソック機務司令官から機務司文書を報告された後、これを処理した過程も疑惑だらけであり、真相究明が必要だ。当時ソン長官は8ページの「戦時戒厳及び合同捜査業務遂行案」と67ページの「対応計画の細部資料」をいずれも報告を受けた。

 しかし、ソン長官はイ・チョルヒ共に民主党議員が8ページの文書をマスコミに公開する数日前の6月28日になって、大統領府に同文書を報告した。そのうえ67ページの文書は1ページに要約して報告した。ソン長官が4月30日、イム・ジョンソク大統領府秘書室長、チョ・グク民政首席秘書官などと機務司令部改革案を論議するための資料に、機務部文書の存在を簡略に言及したと言うが、これは正式な報告とは言えない。ソン長官は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が16日「機務司文書と関連し、軍内部で交わされたすべての文書を報告せよ」と指示した後も、二日間も一貫して「知らぬふり」をした。

 ソン長官は20日、国会法制司法委から「(機務司文書の)深刻性を感じ、非常に苦悩した。南北首脳会談を控えている時であり、6・13地方選挙に対し爆発力があまりにも大きいので心配した」と釈明した。しかし、このような重要な問題を遅れて処理した背景の説明にしては不十分という批判が多い。機務司文書と関連したソン長官の処身を徹底的に調査し、必ず相応の責任を問うべきだという指摘が出ている。

パク・ビョンス先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/854401.html韓国語原文入力:2018-07-23 08:12
訳M.C

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