シアトル発--IaaS(サービスとしてのインフラストラクチャ)ユーザーから見れば、IaaSはイーサネット経由でアクセスする巨大なハードディスクのようにしか見えない。しかし、裏側から見ると、まったく違う風景が広がっている。Linux Foundationの新たな共同プロジェクトである「Kinetic Open Storage Project」(KOSP)が活躍する場所はそこだ。
LinuxConで発表されたKOSPは、ストレージサーバによる管理なしに、アプリケーションが直接イーサネット経由でドライブにアクセスすることを可能にする、イーサネット接続とキーバリューストアを提供する。この新プロジェクトは、オープンソースライブラリやAPI、Kineticベースドライブとのインターフェースのシミュレータなどを管理する。OEM企業は、Kineticベースドライブのメーカーを選択できるようになる。それに加え、ストレージ開発会社はKOSPのベンダー非依存オープンソースライブラリとAPIを使用して、Kineticベースドライブを利用した新たなアプリケーションを作ることができる。
KOSPのソフトウェアエコシステム構築の責任者であるSeagateのシニア事業開発マネージャShai Tsur氏は、インタビューの中で、「これは『Swift』のようなテクノロジのストレージサーバの機能を、ドライブの中に押し込んだり、ソフトウェアレイヤに組み込んだりできることを意味している。クラウドベンダーやその他の大規模顧客は、多くの恩恵を受けることができる」と説明している。
具体的には、次のようなことだ。
- システムレベルでストレージサーバのハードウェアを完全に廃止できるため、特に設備投資と電気代の面で、データセンター運営の総所有コスト(TCO)を大幅に下げることができる。
- データセンターのコンピュートコンポーネントとストレージコンポーネントを、これまでにはなかった形で分離することができる。これにより、データセンターのストレージ容量の拡張がより細かい粒度ではるかに簡単にできるようになる。
KOSPは幅広いメーカーから支持を得ている。このプロジェクトの創設メンバーは、Cisco、Cleversafe、Dell、Digital Sense、Huawei、NetApp、Open vStorage、Red Hat、Scality、Seagate、SwiftStack、東芝、Western Digitalだ。これらの企業は、このテクノロジが次世代のイーサネット経由で利用可能なオープンソースオブジェクトストレージの基礎になると考えている。
「Kinetic Open Storage Projectがイーサネット接続ドライブのインターフェース作りに関してオープンな取り組みをしているのは素晴らしいことだ」と、分散オブジェクトストア「Ceph」の生みの親であるSage Weil氏は言う。「これらのデバイスは、スケールアウトシステムのコンピュートコンポーネントとストレージコンポーネントの作り方や導入の仕方について考え直す大きなチャンスを与えてくれる。そして、イノベーションと互換性を同時に推進する最善の方法はオープンコミュニティーを通じて進めることだ」(Weil氏)
IaaSクラウドだけでなく、その他のクラウドや仮想化、コンテナなどのテクノロジでもストレージの必要性は大きくなり続けており、KOSPは幅広く普及する可能性が高い。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。