コラム:香港の新たな不動産価格抑制策、世界の他都市に拡大か

コラム:香港の新たな不動産価格抑制策、世界の他都市に拡大か
10月29日、香港政府が発表した非永住者を対象とする新たな不動産価格抑制策は、他の都市でも人気を博するかもしれない。香港島で8月撮影(2012年 ロイターBobby Yip)
By Peter Thal Larsen
[香港 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] 香港政府が発表した非永住者を対象とする新たな不動産価格抑制策は、他の都市でも人気を博するかもしれない。香港当局は余剰資金の流入や資本逃避による物件価格の高騰を抑えるため、永住権を持たない買い手に税率15%の印紙税を課す。
こうした政策は意図しない副作用をもたらすが、その政治的な論理からすれば不動産価格急騰に見舞われている他の都市にも魅力的に映る可能性がある。
香港ではアパートの価格は今年初めから9カ月間で約20%上昇した。しかし香港ドルは米ドルと連動しており、利上げしても外国からの資金流入が増えるだけだ。これまでのところ香港当局は住宅ローン規制を強化し、銀行システムを守ることに注力している。
新たに導入される印紙税は、香港の不動産価格上昇を招いている他の要因、つまり中国本土の買い手を狙い撃ちするものだ。有り余る現金の安全な投資先を求める中国本土の投資家の存在は、この数年間で目立ってきている。香港で新たに建設された物件のうち非永住者による購入の比率は2008年には17件に1件の割合だったが、昨年は5件に1件となった。
非永住者への課税は切れ味鋭い政策ではない。香港での永住を望んでいる非居住者や、老朽化した建物の改装を計画している香港の開発業者が悪影響を受ける。今回の措置は中国本土の買い手も非永住者として扱っている。こうしたグループが新たな措置に対して訴訟を起こす可能性もある。
しかし政治の面で魅力があるのは明白だ。不動産価格の上昇は、以前はその都市が高額所得者を引き付けている証と受け止められていた。高額所得者は税金を納め、買い物をし、それが富を増すという仕組みだ。しかし不動産が非永住者にとって資産の安全な逃避先になると、もはやこうした主張は成り立たなくなった。非永住者は不動産を取得しても、実際にはその都市に住まないことが多いからだ。
シンガポールも外国人に対する特別な印紙税を導入した。他の都市が追随するかもしれない。例えば、英国では景気が低迷しているのにロンドン中心部では不動産価格が上昇している。ユーロ圏危機の影響で投資家が安全な逃避先を求めているためだ。欧州連合(EU)の規則ではスペインやイタリアからの買い手をはっきりと区別して取り扱うのは困難なため、各国の当局は住宅を購入しても居住しない買い手に特別な課税を行うなど、別の措置を講じるかもしれない。こうした外国人の不動産取得に否定的な措置に対する風当たりをうまく制御する何らかの方策はある。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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