ロイターサミット:米個人投資家は株への回帰に慎重
[ニューヨーク 2日 ロイター] - バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチとウェルズ・ファーゴの資産運用部門責任者は、米個人投資家の多くはなお株式市場への投資に非常に慎重だと述べた。3日に始まる「ロイター・グローバル・ウエルス・マネジメント・サミット」を前に、インタビューに答えた。
米国株はことし過去最高値を更新しているが、2008年の世界金融危機の記憶や相場への不信感が根強く、個人投資家は危機前のように元気よく株式市場に戻ることは思いとどまっているという。
メリル・リンチ・ウェルス・マネジメントのヘッド、ジョン・ティール氏はニューヨークの事務所でインタビューに答え、「2008年と09年の出来事と、それが人々のポートフォリオに及ぼした影響についての記憶はまだ鮮明だ」と述べた。
ティール氏は、業界が前進する上で最大の課題の一つとして、顧客に信頼感を回復させ、目的を定めた資産運用へと導くことを挙げた。例えば退職金から十分な利益を引き出すといった目的だが、低利回りの投資商品に資金を退蔵させていては達成不可能だという。
ティール氏は、株式は約20年間堅調に推移した後、過去10年間はアンダーパフォームしていると指摘。「そうした記憶を一新する必要があるが、人々の意識を変えるのは難しい」と話した。
<様子見続ける投資家>
米政府と議会が、増税と歳出の強制削減が同時に実施される「財政の崖」を回避したため、ことし初めには資金が一部株式に戻ったが、多くの個人投資家はまだ様子見を続けている。
ウェルズ・ファーゴで資産運用・ブローカレージ・退職金部門のヘッドを務めるデービッド・キャロル氏はノースカロライナ州シャーロットの事務所でインタビューに答え、1月から3月にかけて顧客は株式よりも債券に多くの資金を投じたと説明。「日を、週を、月を追うごとに人々のポートフォリオの利回りは徐々に低下している。なぜなら日付の古い(利回りの高い)投資が償還を迎えているからだ。彼らはどうして良いか分からず困惑している」と述べた。
キャロル氏は2010年の米株急落(フラッシュクラッシュ)、11年の米連邦債務上限問題、ことし初頭の財政の崖問題など、「2009年以来、四半期ごとに『世界の終りだ』というようなイベントが続いている」と指摘。過去の景気後退(リセッション)や相場の大幅調整の後には安定した時期が一定期間続いた後、正常な状態に回帰しており、そうした期間が必要だと述べた。
メリルには1万4500人、ウェルズ・ファーゴには1万5000人強のアドバイザーがおり、彼らが米国で数百万人に及ぶ個人投資家の資産を運用している。
メリルのティール氏は、顧客と常に接しているアドバイザーは信頼感を再構築するだけでなく、資産運用の目的に応じた投資に導くことが重要だと説明した。
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