キリンチャレンジカップ2014「日本対オーストラリアのレビュー」
さて、皆さん、こんにちは、久々ですが、こっちのブログの更新です。
大分さぼってしまいましたが、今回はフツーの日本代表の試合のレビューやります。内容は先日行われた日本対オーストラリアのレビューになります。今回の試合は、オージーが433を採用してたんで、433ミラーの試合になりました。ただ、ちょいと日本とオージーでやり方が違っていたので、そっちの話をしようかと思います。
えっと、今回のエントリなんですが、思ったより今回の試合のレビューはあんま出なかったんで、割と書くことはあります。
日本対オーストラリアのマッチアップ
さて、まずはマッチアップから。
今回の試合のマッチアップはこうなってました。双方とも433です。なので、何もしないと完全に噛み合った状態で戦う事になります。
話に入る前に、最近は日本代表の試合のフルマッチ動画がtubeに上がってるので、リンク貼っときますね。
Japan vs Australia Full Macth International Friendly - 1st half - 18 Nov 2014 - YouTube
まあ、これですね。
ええと、W杯後、アギーレジャパンになってからは、正直、僕は様子見状態でして、
やっと本腰?アギーレ監督 就任後初の本格的戦術練習に選手も驚き
こんな記事も出てましたけど、まだ監督代わって日が浅いし、アギーレがシステムをいじってしまった上、これまでの試合の多くを選手のテストに使ってしまってるので、チーム戦術についてアレコレと口出す段階じゃないので、レビューやってこなかったんです。アジアカップの一ヶ月間でチーム作ってこれればいいか程度に考えてた訳です。
ただ、今回の試合の場合、オージーが433使ってくれたので、433ってシステムの考察には良い試合でした。ミラーマッチだったんですが、433の守備についての簡単な解説ができる試合だったんですね。
なんで、今回の試合は、433の守備の話がメインになります。攻撃の話のほうが読者受けが良いのはわかってますが、就任から4~5試合で攻撃の組織戦術が煮詰まる訳はないので、そっちはあまり話す事がありません。
えっと、一つ前のホンジュラス戦では、日本が6-0で勝ってますけど、あの試合の場合、ホンジュラスの右サイドとFWの守備が適当すぎたので、あまり参考にはなりませんでした。ただ、今回のオージー戦では、オージーが真面目に守備やってくれてたので、おかげで守備の話ができます。有り難いことです。
日本対オーストラリア、オージーの守備方法
さて、本題行きましょう。
今回の試合なんですが、お互い433ミラーです。また、双方、攻撃時に、アンカーをCBの間に落として、3バックに変形します。でもっ
てSBを上げてきます。日本の場合、
こんな感じに変形します。こういう風に433から、343っぽく変形するのは、今のサッカーだとよくあるやり方です。これで2トップのプレスに対して、3バックで数的優位を作るというやり方です。これはオージーも同じで、基本的にアンカー、CB2枚でポゼッションを安定させにきます。
一方で、なんですけど、433については、守備方法が前から行くか、後ろでブロック組むかで違ってきます。どういう事かというと、これね、今回のオージーの守備のやり方みればわかりやすいんです。えっと、前半1:34で、オージーが行った守備方法なんですけど、
こーいう形でした。ここはマヤの裏へのフィードが岡崎にピンポイントで合ったので、割といい形で攻撃できたんですがね。
ちと、この試合のオージーのプレスのハメ方について図で説明しますけど、
こーいう形です。
試合の後、長谷部が、
オーストラリアも自分たちを研究していて、立ち上がりから僕らがちょっと下がった時には相手もプレッシャーに来ていました。なかなか組み立てをさせないようにやってきましたし、なかなか難しいゲームでした。ピッチの中で話して、ベンチからの指示もあったし、システムを変えてから僕らもうまく回るようになったと思います。
こんなコメントだしてましたが、オージーはよく日本を研究してました。正直、こうくるとはなーという感じで驚きました。短期間だったので、きっちり研究されてるとは、僕は思ってなかったんです。
えっとですね、前回、ホンジュラス戦で、日本がやってた攻撃ってのは、遅攻だと、
「マジでこんだけ?」とか思われるかもしれませんけど、こんだけです。ホンジュラスの場合、右SHの守備が適当だったんで、ムトゥが降りる動き見せたとき、ホンジュラスの右SBは走り込んでくるインサイドハーフとSBが怖いのか、ついていかない事が多く、ムトゥがノープレッシャーでボール受けて前向けたりしてました。というか、香川がサイドに流れてきた時とかも、簡単に前向かせちゃってたし、後半も乾を簡単に前向かせて、その後マーク外してたりしたので、ホンジュラスの右サイドはホントに滅茶苦茶でした。あの試合、あそこまでホンジュラスが大崩壊したのは、大体、FWの守備と右サイドの守備が適当すぎたからです。ザ・親善試合という感じの適当さでした。
ただ、この日はホンジュラスが相手じゃなくて、ガチのオージー相手です。まず、守備のやり方が違う。アンカー+CB二人でポゼッションしようにも、CF+WG二人で前からプレスに来るので、ボールを落ち着けられない。サイドチェンジしたくても、数的同数でプレスが来てるのでなかなか、その時間と余裕を与えてもらえない。
でもって、WGがCBにプレスかけに来るって事は、SBはフリーになれるんですけど、SBにボールだしたくても、相手の中盤3枚のうち一枚が速攻でサイドに出てきてSBのマークに入るので、SBに中々出せない。
じゃあ、WGは?というと、降りる動きみせても、オージーのSBはきちんとついてくる。WGが降りてくることで開いたスペースにインサイドハーフが走り込んでも、きちんと相手のDMFがついてくる。SBがオーバーラップしてもWGがきちんとついてくる。で、サイドでちょっとでも詰まると、WGとCFがプレスバックしてきて潰されるという状態でした。
と言うわけで、日本の攻撃パターンは、オージーにきちんと研究さてたというオチです。まだ、手数が少ないのでしょうがないのですがね。そんな訳で、日本の方は、裏へのロングフィードが多くなるハメになりました。消去法でそうなりますわな。最初の1分の場面では、それが上手くいったんですが、一発のロングフィードで点取れるってのはなかなか無いので、日本としては、前半は手詰まり気味でした。
ただ、上手くいった攻撃もあって、前半9分の場面とか前半16分の攻撃とかは良かったと思います。今回はキャプでやりませんけど、気になった方はフルマッチ動画あるんで、そっちで見てみてください。どっちもゴートクの裏へのランニングからチャンスになった奴です。
えっと、オージーの守備方法の関係上、WGがCBにプレスに出てくるので、SBは一時的にフリーになりますが、CBからSBの足下にパスだすと、オージーのDMFの守備に捕まるだけです。ただ、ここでSBが足下でもらおうとせず、裏に走った場合、マーク外せる可能性が高いんですね。そこにピンポイントでボールがでると、ビッグチャンスになります。ココがオージーの守備の泣き所だったりします。
アギーレジャパンにおける433の守備編
さて、オージーのほうの話はこの辺りにして、日本の433の守備の話に移りますね。
えっと、アギーレの433なんですけど、オージーとは守備のやり方が違います。相手が3バックに変形しても、WGは前にでません。なんで、
こんな感じで4141でブロック組む感じで守ります。
こないだのアギーレの試合後のインタビューで、アギーレが地味に日本の守備タスクのネタバレしてたんで引用しますけど
──前半の初めの時間帯でオーストラリアが攻めこんできて、日本の左サイドからやられていた。最初のシステムのときに、サイドアタッカーの武藤(嘉紀)の守備に問題があったように見えたが、サイドアタッカーにはどのような守備的なタスクを与えていたのか?(後藤健生/フリーランス)
武藤と(本田)圭佑、乾であっても仕事は同じだった。パスコースを消して、相手のサイドバック(SB)にプレッシャーをかける。そしてSBが上がってくれば、付いていってクロスを阻止する。他の選手であっても、そうしたディフェンスのタスクを持っている。オーストラリアは前半は前からプレッシャーをかけてきたので、日本がボールを持てないというイメージを持たれるかもしれないが、相手のチャンスもヘディングによる1回のみだった。
この部分ですね。「パスコースを消して、相手のサイドバック(SB)にプレッシャーをかける。そしてSBが上がってくれば、付いていってクロスを阻止する。」って所です。WGのタスクは、パスコース消すのと、SBへのプレッシャー、オーバーラップについていくって所で、CBへのプレッシャーははいってねぇんですよ。
これ、ホンジュラス戦でもそうだったんですけど、基本的にWGはSBを見てればオッケーという感じの守備でした。なんで、アギーレの433については、前から行ってボールを奪うタイプの433じゃありません。オージーの433とはやり方、WGの守備タスクが違うんです。WGはSBを見てればオッケーなんで、守備方法としては4141で、ハーフラインあたりからプレスをかけ、相手が入ってきた所で潰して取るってタイプのやり方です。
ちと、前半3:50の所で説明しますけど、日本の場合、
こうなんですね。相手のCBがボール持ってても日本のWGは、SBへのパスコース切りつつCBに寄せて行くってのは、あんましやりません。だから、オージーはボール持てるわけです。日本の場合、ボールの取り所は、オージーに比べて一つ後ろになります。CBからボール出された、その先でボールを奪う事になります。
それでなんですが、ぶっちゃけ、この試合、ココは上手くいってませんでした。
試合見てた人はわかると思うんですけど、4141で守る場合、泣き所になるのがアンカーの両脇の所で、あそこを使われちゃうと苦しくなります。この試合の場合、前半はオージーにボール持たれてアンカーの両脇を使われてしまってたので、守備がハマっていたとは言えません。前半2分、前半16分、前半23分,前半26分、前半28分、と、アンカーの両脇使われてます。どういう風にやられたのか知りたい人は、やっぱりフルマッチ動画で確認してください。
で、ここでアギーレが動きます。ここで前日練習してたっぽい442に守備変更。
えっと、前半35分から、日本はシステム変更を行ってます。攻撃では4231、守備は442に切りかえてます。守備だと、
こうなりました。これで、岡崎が3人を一人で見るって事がなくなり、岡崎と香川の二人でプレスにいけるようになりました。この効果はすぐ出るんですけど、前半35分、
こんな感じでマイボに出来てます。それまで、あそこのCBにはプレスがかけられなかったんですけど、守備で前を二枚にしたことで、あそこにプレスがかかるようになり、日本は高い位置から守備ができるようになります。
ぶっちゃけた話、442にしなくても、オージーみたくWGを前に行かせれば済んだ話でもあるんですがね。
この試合、ターニングポイントになったのがココで、こっから日本は守備がハマるようになり、オージーはポゼッションができなくなっていきます。これで流れをたぐり寄せた日本は、この後、決定機を1つ作って、後半に折り返します。
日本対オージー、後半のお話
さて、こっからは後半の話にうつります。前半は総括すると、オージーが433で前から来たので、日本はボールを上手くポゼッションできず、守備もハマらず苦しい展開でしたが、攻撃時4231、守備は442という形にフォメ変更した事で流れをたぐりよせました。
でもって、後半から、遠藤に代えて今野が入ります。この辺りがアギーレなんですが、この交代は442の前からの守備でハメてショートカウンターって形に持ち込みたかったんでしょう。今ちゃん、ボール狩るのはホント上手ですからね。そして、後半4分に今ちゃんのボール奪取からのショートカウンター発動。ゴールは成りませんでしたけど、完全日本ペース。狙いがハマっていたのでね。
ちょっと、オージーの監督の話しときますけど、日本をしっかり研究してたのは試合みてわかりました。ただ、日本がシステム変更してたのに、後半に修正いれずに試合に入ってしまったのは不味かったと思います。あれは監督のミスで、相手のシステム変更に合わせて、何か手をうっとくべきだったと思います。修正する時間あったわけだし。
後半、最初の決定機になったのは後半13分の乾のヘディングでした。このシーンは単純に日本が良かったです。左サイドの狭い所でしたけど、上手にパスコース作って、狭い所抜け出して逆サイドにサイドチェンジしてゴートクのクロスから乾のヘディング。
で、立て続けに後半15分にも日本がチャンスを作ります。きっかけは、同じく左から右へのサイドチェンジ。この左から右へのサイドチェンジってのは、ザック時代よくやってた光景です。でもって、その後、乾のシュートでCKもらって、今ちゃんがゴール決めて日本が先制。
ここで、オージーの監督が動きます。二枚替え。前の選手の運動量が落ちてきたって事と先制されたんでって感じでしたが、日本優位の流れは変わらず、オージーのミスパスから日本のショートカウンター。これでCKもらって、モリゲのスーパープレイから岡崎のオサレゴールでダメ押し。これで試合が決まりましたとさ。
最後にケーヒルにゴール決められてましたが、まあ、ケーヒルにやられたんなら、しゃーないと思います。
今回の試合の総括で〆ときますが、
えっと、んではまとめときたいと思います。
アギーレについては、まだアジアカップ用の選手選考してる感じなので、評価しずらい部分があります。ただ、6試合ほどやって、大体、わかってきた部分もあります。なんで、軽くまとめておきますが、
1、433を使っているんだけど、守備時は4141で、433で前からハメていく守備はそれほどやっていない(少なくとも、ここ2試合はやってない)。基本的には4141でハーフラインあたりから守備をしていくスタイル。WGはパスコース消しつつ、SBをみとけばオッケーみたいな感じで、それほど前にはでない。オージーの433と比較すると、ここはハッキリする。
2,オージー戦では途中から守備を442に変更していたけど、442に変更した後は、かなり前から行っていたので、442は前から行きたい時のオプションなんだと思う。
3、攻撃のスタイルについては、まだ十分にチームに戦術を植え付けることが出来ていない。その時間もなかったし、これはしょうがない。オージー戦の後半、左から右へのサイドチェンジ、乾と香川のコンビネーションなんかがあったけど、前者はザックの遺産で、後者はセレッソのやり方で、アギーレのやり方という訳でもない。
って所ですね。
あと、アジアカップで戦うオージーについてなんですけど、監督さん、日本を随分と研究してる感じでした。ただ、試合途中での修正に関しては、そこまで能力が高いという感じはしませんでしたし、あのやり方だと、絶対にWGが最初にヘバります。CBにプレッシャーかけて、SBのオーバーラップについていき、さらにプレスバックもしないといけない訳で、WGが過労死しかねないシステムです。先に先制できれば良いんですけど、出来ないと面倒なことになります。実際、日本との試合だと、オージーの時間だった前半の間に点取れなかったのが痛かったですし。それと、あの守備のやり方では、ケーヒル使えません。もう年なんで、あそこまでガンバって守備をやりきれない。その辺り、アジアカップで当たるとき、どうするかですね、向こうの監督さん。
んじゃ、今日はこんな所で。ではでは。