発売中 価格:205,000~276,000円 昨年、アップルのMacBook AirやレノボのThinkPad X300など、超薄型のノートPCが相次いで登場し話題となったが、今年はデルだ。デルは、従来までのイメージを払拭すべく、個人向けノートPCに新ブランドを用意するとともに、本体デザインの変更やカラーバリエーションの充実を図るなどの、大きな改革に取り組んでいる。そして、その改革の目玉とも言える製品が登場。これまでのデルの製品とは一線を画す、デザインや質感を重視した高級路線のノートPC、「Adamo」がそれだ。今回、短時間ながらいち早く試用機を触る機会を得たので、本体の質感などを中心にチェックしていこう。 ●厚さ16.4mmの超薄型ボディ Adamoの最大の特徴となるのが、厚さがわずか16.4mmという超薄型ボディを実現している点だ。2008年1月に登場した、アップルのMacBook Airは、厚さが最大19.4mmしかないということで大いに話題となったが、AdamoはそのMacBook Airよりもさらに3mm薄い。まさに究極の薄さを実現していると言っていいだろう。 また、単に薄いだけではなく、質感の高さも特筆すべき点だ。これまでのデルの製品は、価格の安さの代わりに、ボディはプラスチック感がむきだしだったりして、質感はあまり追求されないことが多かったように思う。しかしAdamoは、アルミ削りだしのボディを採用するとともに、デザイン面も細部までこだわって作り込まれている。 まず、本体の厚さは前方から後方まで均一で、側面は垂直に切り落とされたようになっており、角こそ丸くなっているものの、全体的には直線的なイメージとなっている。液晶パネルを閉じると、まるで1枚の板のようなイメージだ。 今回は、2色用意されているボディカラーのうち、シルバーと白を基調とするパールを試用したが、ボディ素材であるアルミの原色を活かしつつ、天板の上半分のみにホワイトをあしらうとともに、天板下半分および底面に、あまり主張しないように幾何学模様が施されたデザインは、非常に落ち着きがあり、個人的にはかなり好印象。もう1色のオニキスも、メタリックブラックを基調に表面がヘアライン加工されており、かなりの高級感が感じられる。実際に購入するとしたら、どちらを選ぶかかなり迷いそうだ。 また、本体背面の吸気/排気口も、単にメッシュ状に穴を開けるだけでなく、両端にランダムに穴を開けることによって、吸気/排気口自体もデザインの一部として取り入れている点なども、これまでのデルのノートでは考えられなかったことだ。 加えて、本体の剛性も問題ない。本体が薄くなると、ちょっと力を加えただけで本体がたわむものも少なくないが、Adamoは本体や液晶面をひねってみても、ほとんどたわみが気にならないし、本体の隅1カ所を持って持ち上げても、きしむような感じは受けない。 ただし、重量は比較的重く、実測値で1,824gであった。実際にAdamoを手にしてみると、本体が非常に薄いこともあるのか、数字以上に重く感じてしまう。アルミ削りだしボディを採用している点や、天板及び液晶面のガラスなどが重量増の原因のようだ。もちろん、薄さの追求に加えて十分な剛性を確保した結果の重さだとは思うが、できればもう少し軽さも追求してもらいたかった。
●13.4型ワイド液晶を搭載 液晶パネルは、1,366×768ドット表示に対応する13.4型ワイド液晶を搭載。表示品質は、表面が光沢加工されていることもあって、発色は非常に鮮やかだ。また、輝度もかなり高く、輝度を最高にするとまぶしすぎると感じるほどだ。ただし、上下の視野角はあまり広くなく、パネルの角度を少し変えただけで色合いが変化する点や、表面の光沢処理がきつく、映り込みが激しい点は少々気になった。 液晶パネル右下には周囲の明るさを検知するセンサーが取り付けられており、周囲の明るさに応じて自動的に液晶バックライトの輝度を調節する機能が盛り込まれている。手動でバックライトを調節しなくてもいい点は、なかなか便利に感じた。
●バックライト付のフルサイズキーボードを搭載 キーボードは、ピッチが横約19mm(実測値)、縦約18mm(実測値)と、やや横長ではあるが、デスクトップ用キーボードとほぼ同じピッチを実現しており、使い勝手は悪くない。また、バックライトが取り付けられていて、キートップの文字が白く浮かび上がる点も良い。キーボードバックライトは、明るさを2段階に調節でき、消灯ももちろん可能だ。 ただし、気になる部分もいくつかある。まず、ストロークがかなり浅く感じる点と、Enterキーの右にもキーが配置されている点は、使っていてかなり気になった。本体の薄さを考えると、ストロークの浅さは我慢できるものの、配列に関しては、サイズに余裕があることを考えても、もう少し扱いやすい配列を実現してもらいたい。 また、打鍵時にかちゃかちゃと安っぽい音がする点もいただけない。加えて、違和感はそれほどないとは言え、キートップがプラスチックであるという点も少々残念。せっかくデザイン面で細部までこだわっているのだから、キートップにも金属素材を採用するなどのこだわりを見せてもらいたかったように思う。 ポインティングデバイスのタッチパッドについては、パッド面も上に大きく、全く問題なく利用できる。 ●基本的にスペックは固定 デルの製品は、基本スペックを自由にカスタマイズできる点も特徴のひとつだが、Adamoに関しては、基本スペックは固定となっており、カスタマイズは行なえない。 今回試用したAdamo ADMIREの基本スペックは、CPUがCore 2 Duo SU9300(1.20GHz)、チップセットがIntel GS45 Express、メインメモリはPC3-8500 DDR3 SDRAMを2GB(クロックは800MHz)、ストレージデバイスが128GBのSSDとなる。上位モデルのAdamo DESIREでは、CPUがCore 2 Duo SU9400(1.40GHz)、メインメモリ容量が4GBとなる。 その他に、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANとBluetooth V2.1+EDRも標準で搭載する。 内蔵されるSSDは、デバイスマネージャで確認したところ、「SAMSUNG SSD Thin uSATA 128GB M ATA Device」と表示された。本体の薄さを考えると、基板のみの薄型モジュールが利用されているものと思われる。また、CrystalDiskMark 2.2.0の結果を見ると、シーケンシャルリードが93MB/sec、シーケンシャルライトが74MB/secほどと、最新のSAMSUNG製SSDに比べるとかなり遅く、世代が古いか廉価なモデルが採用されていると考えていいだろう。 ポート類は、基本的に背面に集約されている。1000BASE-T対応の有線LANと、eSATA/USB 2.0共用ポートが1つにUSB 2.0ポートが2個、DisplayPortが1つとなる。また、右側面後方には、さりげなくヘッドフォン端子が用意されている。 付属品は、DisplayPort→DVI-D変換ケーブルとACアダプタだ。このACアダプタがなかなか出来が良い。サイズが、107×64×16mm(幅×奥行き×高さ)と、こちらも薄型でコンパクトだ。コネクタ部は着脱式で、ケーブルと折りたたみプラグを選んで取り付けられる。そして、折りたたみプラグを取り付けた場合には、重量が177.5g(実測値)と非常に軽量だ。このACアダプタは、Adamoだけでなく、他のデルのモバイルノートにも付属してもらいたいと感じるほどだ。
●見た目重視の薄型モバイルとして魅力は十分にある では、ベンチマークテストの結果を紹介していこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage(Build 1.0.0)」と「PCMark05 (Build 1.2.0)」、「3DMark05(Bulid 1.3.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の5種類。Windows Vistaに用意されているパフォーマンス評価の結果も加えてある。 各テストは、省電力機能を切り、フルパワーが発揮される環境で行なった。比較用として、dynabook SS RX2/T9HGと、VAIO type Z VGN-Z90USの結果も加えてある。ただし、AdamoはOSがWindows Vista Home Premium SP1の64bitエディションであるため、結果は参考程度として考えてもらいたい。 結果を見ると、スペックが近いdynabook SS RX2/T9HGとほぼ同等のパフォーマンスが発揮されていることがわかる。パワー的に余裕があるとまでは言いづらいが、モバイルノートとして必要十分なパフォーマンスは確保されている。実際にいくつかのアプリケーションを使ってみても、動作が重いと感じることはほとんどなかった。
次に、バッテリ駆動時間をチェックしてみた。方法は、省電力機能を切り、液晶輝度を最大に設定し、無線LANおよびBluetoothを動作させた状態で、動画ファイル(WMV9/ビットレート1,156kbps/640×480ドット)をWindows Media Player 11を利用して連続再生させるというものだ。結果は、約1時間56分であった。また、Windows Vistaの省電力プランを「省電力」にし、無線LANとBluetoothを切り、キーボードライトも切り、液晶のバックライトを輝度自動調節に設定して測定した場合には、2時間37分であった。Adamo ADMIREにはリチウムポリマーバッテリが内蔵され、公称では最大5時間の駆動が可能とされていることを考えると、妥当な結果と言える。 今回Adamoを試用して感じたのは、MacBookをよく研究して作っているな、という印象だ。薄型でフラットなボディや、必要以上の装飾を施さず、すっきりとしたデザインを採用している点などは、MacBookにかなり近い。ここまで雰囲気が近いと、MacBookのコピーと言われる可能性も高そうだ。 ただ、せっかく高級路線で細部までこだわって設計されているにも関わらず、液晶の品質(上下視野角の狭さ)やキーボードなど、気になる点もいくつかある。とはいえ、これまでのデルのイメージを払拭する、優れた質感を有するマシンであることは間違いなく、今後注目を集める存在となるはずだ。 価格は、下位モデルのADMIREで205,000円、上位モデルのDESIREで276,000円と、デルの製品としてはかなり高く設定されている。確かにやや高いという印象もあるが、製品の完成度を考えると、十分納得できる範囲内。どうせ買うなら、質感に優れるノートPCが欲しいという人におすすめできる製品だ。 □デルのホームページ (2009年4月3日) [Reported by 平澤寿康]
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