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2006年01月01日
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2005年3月18日

■ ペイオフ完全解禁で浮き足立つな

 ニュースのネタがなければ、今頃は「ペイオフ完全解禁」がそこそこの話題になっていたかも知れないのですが、何やらライブドアのニッポン放送株買い集めから発生した一連の問題の陰に隠れてしまった印象です。
 しかし、書店に行くと、「日本経済破綻」、「預金封鎖」、「資産防衛」といった、資産家の恐怖を煽るようなタイトルあるいはキャッチフレーズを散りばめた書籍が多数あって、相変わらず人気を博しているようです。この種の書籍が書店の書棚を賑わすようになってから、かれこれ十年以上が経過しており、その間に、「危機」として訴えられる内容は、不良債権問題から銀行の破綻、国債のデフォルト、公的年金財政の破綻などと変遷し、近年、景気が回復してくるとハイパー・インフレーションの可能性などが取り上げられています。
 何れも、(1)預金封鎖&資産課税で預金や現金あるいは国債などの資産の相当部分が国家に没収される、(2)ハイパー・インフレーション又は金融システムの崩壊で国内にある預金や現金が殆ど無価値になる、といった「恐れ」を強調します。 
 こうした書籍には著者又は関係者の主宰する財産運用アドバイスを行う団体やセミナーなどが紹介されることが多く、書籍と関係のない同様のセミナーなども数多く行われているようです。こうした書籍やセミナーでは、これらの「危機」や「破綻」への対策として、金投資や海外のプライベートバンクを使った資産の国外逃避、外貨預金、 ヘッジファンドなど海外のファンドへの投資、内外の不動産投資などが推奨されるようです。
 この種の商売をする人々にとっては、ペイオフ完全解禁はまたとない商機でしょうから、きっかけがあれば、またパニック論を盛り上げようとするにちがいありません。
 こうした「危機」に関する話は、それが起こる可能性を「絶対に否定できるか?」と考えると完全な否定が難しいことが多く、そうこうするうちに本当に心配になり、特に資産家(それも高齢者)は、経済破綻の可能性とこれに備えた対策についてアドバイスを求めたい気持ちになるようです。また、中にはアドバイスを求める以前に、自分で決心して、たとえば資産保全のために金貨を買い込むといった行動に走る方も現れます。ちなみに、この種の問題については、例えば日頃は切れ者で知られる弁護士のような人物でも、経済的には明らかに得でない金貨の現物投資で気休めしたりすることがあるようです(筆者の知人にも例があります・笑)。
 しかし、個々の対策については、後に触れますが、この種の危機については、「未来永劫それが起こらないと言えるか?」というような「絶対の問題」ではなくて、たとえば向こう5年、10年の間にそれが起こる確率はどれくらいか、という「程度の問題」として考える方がいいのではないでしょうか。
 たとえば、よく言われる「預金封鎖から資産課税」ですが、預金の一部をカットして、100兆円、200兆円といった単位のお金を国民から徴収することには国民からの大きな抵抗があるでしょうし、銀行システムを止めてこのようなことを行うと、国内海外を問わず、日本の政府および金融機関の信用が決定的に失われますが、それだけの政治的・経済的なコストを払っても、700兆円を超える公的債務のごく一部(しかも、国の財政赤字のほんの数年分)にしかなりません。 政治家や官僚にとって「預金封鎖から資産課税」は全く割のいい話ではありません。
 とはいえ、そうしたことが将来とも「絶対に無いか?」といわれると、「絶対とは言えませんが」という留保条件を付けざるを得ないところが、不安を煽る側の狙い所です。
 ここで、「預金封鎖と資産課税のセットが行われる可能性はどれくらいか、確率を考えよう」と観点を変えると、この確率が大きなものにはならないことが納得できると思いますし、「対策」として見合うコストの問題を考えるきっかけになります。
 仮に「預金封鎖から資産課税」が10年後にはじめて起こる確率が10分の1で預金のカット率が3割なら、この問題の現時点での期待リターンへの影響は10年後にマイナス3%、つまり年率リターンではマイナス0.3%にすぎません。これに対して、たとえば年間の手数料が合計で2%も3%も掛かるような金融商品やプライベートバンクなどのサービスを利用することがいかに非合理的であるかは、冷静に計算すると明らかでしょう。
 各種の経済パニック論について、個々の破綻シナリオを「確率」という観点で冷静に考えると、少なくともある程度の見通しが可能な将来について「起こる確率が低い」ということは納得できるのではないでしょうか。そして、次には、このパニックの可能性はリターンに換算するとどれだけの価値があるのか、と考えてみるべきです。

■パニックのサインはないのだろうか?

 とはいえ、名目GDPがざっと500兆円である時に、政府の債務が地方債務の政府保証分も合わせると700兆円を超えるという日本の国家財政は、それ自体として大きな問題であることは確かです。
 ただし、この財政赤字が主に国債の発行によって賄われている状況を考えると、国債や国の債務に関して、債務不履行(デフォルト)を起こすと、資金調達に多大な影響が及びますし、経済が大混乱に陥るので、政府はそうしたことを極力避けようとするはずです。こうした努力を行ってもなおかつ、国債がデフォルトに陥ったりするような状態になるには、いくつかの条件があります。
 まず、日本の国債は現在、殆どが国内の投資家によって消化されていますが、いわゆる経済危機に陥ったり、国債がデフォルトを起こしたりしたような国は、何れも、国債の消化の相当部分を非居住者(外国人)に頼っており、外資の流入によって資金繰りが支えられていました。外国人の場合には、外国の情勢に対する判断が極端に傾きやすいことに加えて、複数の投資家が同方向に同時に動きやすい傾向があり、また特に新規の投資に対しては政府の力が及ばないので、外国からの資金流入に頼った経済運営の場合、これが途絶えると経済が困難に陥ることがあります。
 こうした状況に備えるには、国債の消化に於ける外国人の割合を見ておくことと共に、日本の経常収支を見ておくことが役に立ちます。 マクロ経済的には、経常収支は日本居住者の「貯蓄マイナス投資」なので、大まかにいって、経常収支が黒字の間は、フローのベースで貯蓄超過であり、外国人の対内投資よりも日本人の対外投資の方が多いので、日本国内のマネーフローに余裕があります。また、ストックのベースでは、日本の対外純資産が円換算で170兆円以上あり、これは財政赤字の5年分程度に相当します。
 したがって、日本国内の資金繰りが危機に陥るまでには、経常収支が趨勢的に赤字の時期が続くはずであり、経常収支が黒字の間は比較的心配ないといえます。
 また、国内の投資家が海外に投資することによって、政府の財政赤字のファイナンスが難しくなる可能性も理屈上多少はあり得ますが、こうした場合、日本の長短金利が上昇するはずですし、為替レートは円安に大きく動くはずです。
たとえば、日本の金利が海外の主要国よりも高くなり、円安を止めるための介入が行われるような事態になった場合には、円建て資産の安全性を心配すべきかも知れませんが、それ以前の段階で、いわゆる「危機」に備えて、年間にたとえば1%以上のコストを払うような「対策」を行うことは「割に合わない」といえるでしょう。





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最終更新日  2006年02月07日 13時23分34秒
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