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本日、JVCケンウッドから、新製品と新サービスの発表があった。
一見画期的に見える製品とサービスに見えるが、多くの謎を含んでおり、少し追求してみたい。 JVCケンウッド、BD/HDD/チューナを統合した「RYOMA」 -Home AVCを来春発売。ラジオ難視聴を克服する「M-LinX」 発表の一つが、「M-LinX」というサービスだ。特徴は、 ・AM/FMラジオ放送を、電波障害による難聴取地域でも、クリアな音声でインターネット配信する ・放送サービス地域特定技術により、放送対象地域のみに放送を配信できる ・ラジオに関連する動画や静止画、文字情報(ニュース・天気予報、アーチスト新譜情報)等のさまざまな付加情報を表示できる ・インターネットを活用した双方向機能により、アンケートや資料請求などのサービスが可能になる ということで、いわゆるAM/FMラジオ放送を、IPで再送信するサービスのようだ。 AM/FMラジオ放送というと、地上波のテレビ放送と同様に、CATVでも再送信されているが、こちらは、放送をそのまま再送信しており、そうした再送信に対する放送局の許諾ルールや、著作権処理の方法は確立している。 しかし、これまでIPネットワークによる再送信は、国内では放送とは認められておらず、地デジテレビ放送に関して、それが一定条件を満たすIP放送方式であれば、再送信として認められたのはごく最近のことである。 ただ、私の知る限り、IP再送信のルールが確立したのは、今のところ「地デジテレビ放送」だけだ。 しかも、地デジのIP再送信が認めらた方式は、NTTのNGNと呼ばれる、回線品質が確保しやすい閉域網にサーバーを置き、IPマルチキャスト方式で配信した放送を、IPマルチキャスト対応のエッジルーターで経路制御することで、家庭まで放送を配信する方式が取られている。 一方、AM/FMラジオ放送を圧縮し、IPパケット化して再送信する方式となると、「M-LinX」が初耳だ。 技術的内容が明らかにされていないが、再送信だと明言するからには、IPマルチキャスト技術を使った配信なのだろう。 ただ、ラジオなのでビットレートは低いとはいえ、多数のラジオ局のストリームをインターネット中に撒き散らすわけにもいかないから、テレビ放送と同様の経路制御する技術が必要なはずだが、その点がニュースリリースからは全く見えない。 また、「M-LinX」による再送信に対し、ラジオ局が許諾を与える動きがある、といった話も聞こえてこない。 JVCケンウッドは、「M-LinX」対応の製品を来年4月に発売する予定だそうだが、当然、発売は全国なんだろう。 「M-LinX」というサービスが来春に始まるとして、そんな短期間で、本当に全国のラジオ局で再送信の許諾が得られるのだろうか? また、再送信は、タダではできない。 再送信のためのサーバ設備はもちろんだが、著作権団体への許諾のためのお金も必要だ。地域限定をするということは、何らかのDRMによる著作権保護も行うのだろう。だとすると、そのDRMの使用料も支払う必要があるはずだ。 「M-LinX」は、広告モデルの無料サービスなのだろうか? それとも有料サービスなのだろうか? 無料なら無料で、広告収入で元が取れる目処があるのだろうか? それとも、無料のラジオ放送を、インターネットで流すだけで、お金を取るのだろうか? また、テレビ/ラジオの場合、広域局と県域局という免許の区別があり、免許が与えられた地域外への再送信は、制約がある。 地デジテレビ放送のCATVの地域外再送信については、訴訟問題まで起こっているが、ラジオについては、テレビ以上に実質的な聴取エリアにズレであり、いったいどの範囲まで、視聴可能地域を切り分けるのか? また、その切り分け案に対し、利害関係が衝突する各ラジオ局が皆やすやすと許諾をしてくれるものなのだろうか? また、動画、静止画、文字情報などが表示できるというが、ニュースリリースをよく読むと「技術仕様を開発中」とある。 今、仕様を開発している段階のものが、来春の製品に載るとは思えないのだが、「RYOMA」という製品のニュースリリースには、付加データを受信できる機能への言及もあるのが、極めていかがわしい。 ということで、まずは「M-LinX」というサービス、ツッコミどころが多く、様々な疑問点が湧いてくる。 少なくとも、とても来春にスタートするようには思えない、というのが、第一の疑念だ。 長くなったので、この後は、また明日。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年09月30日 22時50分00秒
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