GDCに行って来た! キーワードはトライアル&エラー?くねくねハニィの「最近どうよ?」(その30)(3/3 ページ)

» 2009年04月07日 18時35分 公開
[くねくねハニィ,ITmedia]
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コナミ・小島監督

 任天堂の岩田社長のキーノートの翌日、3月26日(木)午前10時30分からMosconeコンベンションセンターのサウスホールにて「Making the Impossible Possible」というお題で行われましたよん。日本語で言うと「不可能を可能にする」ですな。ハニィにとってこのキーノートをリポートするのはすごく難しい。でも、ハニィも「不可能を可能に」してみよう(笑)!

 小島監督の海外のファンに対するアプローチは慣れたもので、日本語で小島監督だけが1時間半話すというシチュエーションの中、いろいろな演出だけでなく、話術で観客の心をつかんでいたのはさすが。すばらしかったね〜。

 スピーチの合間に「メタルギア」シリーズの日本での過去のテレビCMがいくつか流れて会場の爆笑を誘ってた。こういう演出もにくかったよねぇ。

不可能なミッション:ハードの制約をどう乗り越えるか

 ゲームデザインにおいて、「不可能」と考えられる状況(主にハード側の制約)の中でどうミッションを達成して「可能」に導くかを小島監督自身の「メタルギア」シリーズの開発を通じて説いたんだけど、ある意味小島監督のゲーム制作の歴史とも言える講演だったわ。

 1987年「メタルギア」、1990年「メタルギア2 ソリッドスネーク」、1998年「メタルギアソリッド」2001年「メタルギアソリッド2 サンズオブザリバティ」、2008年「メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット」までのタイトル制作を通じて、何がミッションで、そのミッションがハードスペックから考えてどれだけ無理難題(笑)だったのか、それをどう考えて解決したのか、をスライドやムービーを使って分かりやすく解説していただいたんだけど、ハニィが感慨深かったのは、「メタルギア」は最初のMSX2時代に「コンバットゲーム」を作る目的で当初考えられていたことや、ハードのスペックが上がってくるに従って「パズル」的な要素から「アクション」性を高めていったというくだり。あ、ちと監督のスピーチの意向とは違う捉え方かも(笑)。

 余談ですけど、最後のミッションとしてPS3向けの「メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット」の開発当初、「モンスターマシンが出る! と言われていたのに……違った」というお話はソニーさんも耳が痛いのでは? なんて意地悪なことを考えるハニィでした。

ソフトウェア技術

 小島監督は、不可能とも思われるゲームデザインを達成するにあたって、ゲーム機の制約の中で新しいアイデアを積むという日本の伝統的手法と対比して、昨今の欧米ゲームデザイン手法を「ソフトウェア技術による正面突破」と語った。

 ソフトウェアの技術が進化するにあたって、技術だけがもてはやされて、ユーザーが求める真のゲーム性が問われる今日この頃ですけど、技術に頼るだけじゃ難しいのでは? ってことで小島監督は日本的ゲームデザインと欧米的ゲームデザインの融合について語ってましたぁ。「次のメタルはこの融合による高みを!」。おおお、メタルギアシリーズ次作出るんですねぇぇぇ。

不可能なミッションの正体

 最後のまとめとして、「不可能と思っていることの正体を見極めろ」。実は意外にクリアできちゃったりするお題だったりすることも? これってゲーム制作のみならずいろんなことにも当てはまるなぁと。小島監督は「不可能」をそのまんまとらえていたら、不可能なまま「メタルギア」シリーズは生まれなかった訳ですからね。

 ハニィ的には、不可能を何とかしようと試行錯誤することによって、「新しい遊び方」などの副産物が生まれる、つまり、前日の岩田社長が宮本さんの話として語った「トライアル&エラー」。失敗してもそれはいずれ別の形で糧になる、ってことと共通するんだなぁ、なんて考えておりましたよん。

GDCアワード

 3月25日(水)18:30〜GDC会場のMosconeコンベンションセンターのサウスホールで開催された 9th Annual Game Developers Choice Awards。第9回ゲーム開発者が選ぶゲーム賞とでも訳しておきましょうかね(笑)。軽く受賞者だけ紹介しておきますね。

  • Game of the Year:「Fallout 3」(Bethesda Softworks)
  • Best Game Design:「LittleBigPlanet」(Media Molecule)
  • Best Writing:「Fallout 3」(Bethesda Softworks)
  • Best Technology:「LittleBigPlanet」(Media Molecule)
  • Best Visual Arts:「Prince of Persia」(Ubisoft Montreal)
  • Best Debut Game:「LittleBigPlanet」(Media Molecule)
  • Best Handheld Game:「God Of War: Chains Of Olympus」(Ready at Dawn)
  • Innovation Award:「LittleBigPlanet」(Media Molecule)
  • Best Audio:「Dead Space」(EA Redwood Shores)
  • Best Downloadable Game:「World Of Goo」(2D Boy)
  • Lifetime Achievement Award:Hideo Kojima
  • Pioneer Award:Alex Rigopulos/Eran Egozy
  • Ambassador Award:Tommy Tallarico

 あのぉ、こんなこと言うのも何なんですけど、いつもこのアワードに参加するたびに思うんですけどね、開発者向けにウケるゲームってメガヒットしないもんですね。いわゆる「玄人ウケ」ってやつ。モノとしていいか悪いかということではなくて、ウケるかウケないかっちゅー話しなので誤解なきよう。

その他もろもろ

SCEAがPSN専用開発支援プラグラムPub Fundについて語る!

 このGDCの中で一番大きなニュースだったかも。いえいえ、任天堂さんのようにキーノートとかで発表したものではありませんの。3月26日(木)午後3時からウェストホールで行われた1セッションの中でシレっと発表されたもの。SCEAのデベロッパーリレーションズ(開発会社担当)のChris Eden氏が「Independent Self-Publishing On PlayStation Network」と言う講義でひっそり明らかにしたもの。

 ハニィはノーマークで(反省)あいにく参加してませんでしたけど、要はこういうこと。

 作ろうとするゲームタイトルがPSN専用ってことであれば、SCEが開発費を負担する。またIPの移転はなく、オリジネータがそのまま著作権を保持でき、パブリッシャーとなって価格を決定し、支払われるべきロイヤルティに関しても保全される。つまりこれはデベロッパーがパブリッシャーとしてPSNに供給できる、って話であって、SCEがパブリッシュしてあげるよーってことではないのだ。さらに、ゲームデザインやマーケティングプランについても相談に乗るよ、だそうです。

 そんなおいしい話があるのか? と思う反面、そんなに大きなことならば、なぜもっとちゃんと発表しないのかなぁ? と。いよいよSCEも本気なんだなと思いきや何かすっきりしないものも。このモデルですでに「Burn, Zombie, Burn!」というコンテンツが立ち上がったと発表がありましたが、はて……。

 案の定、PSN専用で開発するって宣言したら全員がそのFundから支払ってもらえるのか? 全額なのか一部負担なのか? ワールドワイド、アメリカだけなのか? どういった基準で選定されるのか? などなどの疑問には何も答えてないのだけどね〜。

 NDA(機密保持契約)を結べば教えてくれるらしいけど、こんないいことなんで大きく発表しないんだろうか? 何か腑に落ちないなぁ。

任天堂がDSiウェアサービスの詳細を発表

 DSiの発売を4月5日に控えて、任天堂がDSiウェアゲームのサービス内容を発表したぞ。って、このニュースが流れるころにはもうサービス開始してるな。

 支払いはすべてWiiポイント(今回からNintendoポイントってことになりましたぁ!)で。価格レンジは「無料」「200ポイント」「500ポイント」「800ポイント」以上とのことですわん。日本と同じです、はい。日本同様お試し期間があって、DSi Shopに接続すると自動的に1000ポイント進呈ってのも同じ。

 いよいよ販売が開始されたDSi。3000万台近くも出回ってる旧NDSの買替需要をどう喚起するのかは今後も見守って行きたいところよね〜。

ハニィのあとがき 

 サボってましたです、ごめんなさい。でも久しぶりのGDC記事いかがでしたかぁ? 昨年の科学的、マーケティング的アプローチから一転、精神論的、職人芸的な側面からアプローチするキーノートが印象的だったわ。今回のをまとめるとハニィ的には「トライをすることに無駄はない」。

 しかし、根本的に否定することになっちゃうけど、エラーありのトライアルができて、もしかして副産物を産むかも! ほどの余裕が許される開発者はそんなにいない、ってこともあるよね。切羽詰まった状況でも製品をアウトしていかなきゃいかんとプレッシャーを与えられているデベロッパーにこんなことを言ってもしょうがない気がする。むしろ、パブリッシャーやデベロッパーのビジネスパーソンに対して発しないと、この講義もなんだか「やっぱいいよなぁ、余裕がある会社は」ってうらやましい話で終わっちゃう気がしたんだよね。あ、水を差すようですんまそん。

 今年のGDC、ハニィももちろん行ってたんですけど、日本人にはいっぱい会いました!今年はキーノートもセッションも日本人講師率高かったもんねぇ。でもね、何だか現地の知り合いに会う率が低くなったような気がして「?」な感じに。現地の某パブリッシャー(アメリカ人)に聞いたところ、「GDCはデベロッパーのための勉強会」だから、講義する立場の人以外におっさんやおばはんはいないらしい。加えて昨今のGDCはさらに若年化してるらしく、学生〜開発者初心者向けの様相が強くて、ベテランはいかねぇって(涙)。日本も若年層を送りだしましょうね!

 その一方で今年から大きく再開される予定のE3。6月2日〜4日にLAコンベンションセンターで行われるのは決まってるんだけど、ホントに前ほど大きくなるのか眉唾だなぁと思って現地パブリッシャーに問い合わせをしてみたところ、やっぱし大きく戻るみたい。おっさんとおばはんはぜひこちらへ(笑)。はい、ゲーム業界のビジネスの場はやっぱりE3ですよねん! E3で会いましょう! って、E3まで原稿書かんってことじゃないです。

くねくねハニィのプロフィール

1967年アメリカサウスダコタ生まれの日本人。

小学生からはゲームセンターに通いまくってやたら大きく育つ。

1990年に都内K大学を卒業後、大手ゲーム会社にて海外ソフト担当となり、2001年に退職。それ以降は自称フリーのゲームアナリストとして暗躍。暗躍しすぎたので名前を変えて表舞台に。くねくねと唐突に現れて「親父ギャグ」をかまして周りの人々のレベルを下げまくる。独特の語り口調ですが、もう慣れてくださいとしか言えません。言ってる中身は至極マジメなので。ちなみに「風来のシレン」が好物で、名前もそこから借用。なんだか公認してもらったそうです。

やっぱり間が空いた……。なんか本当に次回はE3でお会いしそうな気がしてなりません。


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