携帯電話メーカーが主に、自社端末ユーザー向けに各種コンテンツを提供しているのが「メーカーサイト」。着メロや待ち受け画面、アプリなどさまざまなコンテンツがラインアップされており、月額利用料金は無料。多くのサイトが定期的に新コンテンツを配信するなど、端末を楽しく使ってもらうための工夫が凝らされている。
当初は、iモードやEZwebなどのコンテンツ利用がそれほど普及していなかったことや、画面サイズや着メロの音源が端末ごとに異なっていたことから、コンテンツ利用の促進や新サービスのプロモーション的な色合いが強かった。しかし端末の機能が向上するにつれ、その役割も変わってきている。
ケータイサイトの変遷と今後について、パナソニック モバイルコミュニケーションズのコンテンツ事業チーム主事の長谷部節子氏に聞いた。
パナソニック モバイルコミュニケーションズがiモードのメーカーサイトを立ち上げたのは、iモード対応の2号機にあたる「P502i」発売時の2000年3月22日。各社メーカーサイトもほぼ同時期に立ち上がり、ドコモ向けメーカーサイトが誕生したのはこの時期となる。
当時は各社の端末ごとにディスプレイサイズや着メロ音源が異なっていた、iモードの普及途上期。「自社の携帯電話にベストチューニングしたコンテンツを各社で準備して、それぞれがiモードを使うところの機能を含めた商品の訴求をしてほしい──というドコモの要望を受けてオープンした」
当初は“プロモーションツールの一環”という意味合いが強かったメーカーサイトだが、「503i」でiアプリのダウンロードが可能になった頃から状況が変わってきた。「さまざまな機能をアプリにして配信できるようになったことが、“後から機能を付加していく”ことのきっかけになった」。そしてこの時期から、本体機能との連携を意識したコンテンツ作りを行うようになったという。「強い商品作りには、メーカーサイトの充実が欠かせないものになってきた」
例えば、“次期商品への搭載を検討している機能をアプリとして提供してユーザー動向を探る”というのもその一つ。「カメラ付きの「P504iS」が出たときに、撮った写真を(P504iから搭載した)メニューアイコン用に加工するiアプリ『ランチャーメーカー』を配信したところ、予想以上に好評だった。505iからはランチャーアイコンを作る機能そのものを製品に搭載した」。
また端末に入れられるメモリや機能が限られている一方で、ユーザーの端末カスタマイズ意欲が高まっていることを受け、メーカーサイトに“端末の外部メモリ”的な役割を持たせるようになってきたとも言う。「メモリに限りがあるため、端末にプリセットされる(アプリや壁紙などのデータ)のは、メーカーが強く訴求したいものや、ポイントだと思っているものに偏ってしまいがち。メーカーサイトにアイコンや辞書など、カスタマイズできるアイテムが置いてあれば、ユーザーが取捨選択して自分好みの端末にできる」
長谷部氏は、今後メーカーサイトで強化していきたいのは、サーバ連携型アプリの提供だと話す。iアプリDXの登場により、機能も容量も上がってきたことから、サーバとの連携で可能になる新しい機能を提案していきたい考えだ。
既にサーバ連携可能なPIMアプリ「P-Face」や家計簿アプリ「P-MONEY」(iアプリDX)を提供中。「P-Faceはサーバに情報を保存することで、PCからも同じスケジュールを閲覧できる。P-MONEYはアプリに入力した家計簿情報をCSV形式でメール送信できる。サーバがあることを前提にして商品企画や開発をできるようになったのが大きく変わったポイント」
もちろん当初の大きな目的だった新機能のプロモーションにも力を入れる。「とにかく一回サイトにアクセスして、“何かを使うこと”を体験してほしい。その中で「iアプリって意外と面白そう」「Flashコンテンツって楽しい」と感じてもらい、コンテンツを探したりするようになる──そういった入り口の役割を果たしたい」
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