いずれ歌ができるといい
はじめに説明すると、大阪は新世界にて「ツムテンカク」というアートイベントがあり、そこで展示をしませんかと仲間から誘われたのだ。新世界で展示!いいじゃないのいいじゃないの。2つ返事でOKした。
そして会場選び。他にも酒場や額縁屋、喫茶店など候補はあったのだけど、稲荷神社に一同興味をひかれた。何か、呼ばれた気がしたからだ。てなこと書ければいいんだが実際は「なんか、作品作りやすそう」という理由一発だ。
場所は決まった、しかしさあどうする。よく考えたら相手は神社、かしこくも神様の社である。お狐様もたたずんでいらっしゃるぞ。
そこで、唐突ながらダイソン。
神様…八百万の神…どんなものにも神様は宿っているという。海に、山に、お米に、トイレに。ならば現代の、最新のものにもかたっぱしから神様はいらっしゃるのだろう。いわば、八百よろずならぬ「NEOよろずの神」である。
うちは数年前、代々の吸わない掃除機に業を煮やし、思い切ってダイソンの掃除機にして以来、わりかしストレス知らずのお掃除ライフを送っている。非常に重宝しておる次第。ならばこのダイソンにも神様は、いる!そういうことにしないとページが進まないので、そうさせてください。
というわけで、日頃の感謝を込めて、ダイソンの神様の像を作ることにした。
買いためた雑誌を資料に。
形はやはり掃除機そのものにしたい。が、神様でもあるので、威厳を持たせたい。掃除機と神様の中間って、どこよ。神社特集をやっていた雑誌にざっと目を通す。
仏像は何かとお目にかかる機会はあるが、神像というとあまりなじみがない。仏像は礼拝の対象であるのに対して、神像はそういう意図で作られるものではないから、あまり目に触れる機会はないそうだ。絢爛豪華にする必要もない。そんなわけで、失礼ながらけっこう、地味である。
ただ、貴人の服装、つまり束帯姿であることが多いようだ。なのでダイソンに束帯を着さすことにする。
今改めて見ても、あんまりな感じのラフ画。
ルートサイクロンテクノロジーの逆円錐の集合が、髪の毛のように思える。ここが頭部だ。持ち手の代わりに、冠をかぶせたい。そして袴であぐらをかいて、スティックを剣のように携える。もうこれはどこから見ても誰がなんと言っても神様である。
ダイソンの形にあわせ、スタイロフォームをしこたま買って来た。
ダイソンの新人研修か
ダイソンの写真をプリントして、ハンズやホームセンターを見に行く。なるべく作業量を減らすため、
売り場で写真を確かめては、合う形のスタイロフォームを探した。うちに帰って、あとは組み立てるだけ!…だったらいいんだがなあ。
空想のものでなく、実物をモデルにするので、とりあえずはダイソン見ながらほぼ同じものを作ればいい。
ボンドで積層して、筒状にする。
太すぎるので、ガイドとなる円盤ではさんで、スチロールカッターで切るなど。
形が複雑な部分はなるべく簡略化。
道は遠い。
「ほぼ同じものを作ればいい」とはいうものの、細部はけっこう複雑な形。どれを捨ててどれを生かすか。どれがあればダイソンに見えるか。どこまでがダイソンか。
掃除機にこんなに向き合う日々は今までなかった。もう実物見なくてもだいたいのスケッチができると思う。ダイソンは、研修でこれ作ればいいんじゃないか。神様にはしなくていいが。
繰り返すが、このラフをもとに。
そうだ、ついつい全部を実物と似せてしまったが、下半身(でいいのか?)は袴をはかすんだった。うへー、やり直しだ。あの曲線出すのに半日かけちゃったじゃないか。
土台部分の両脇を切り取って、あぐらをかいているような膝につけかえた。
ヤスリがけで、ごつごつ感がなくなる!掘削の下手さもカバー。
せっかくなのでたまにモデルさんに働いてもらう。
来る日も来る日も切り出し、ヤスリがけ。いまいち完成形がぼんやりしているため、少しづつ進んでは試行錯誤だ。ラフはもっと緻密に描くべきと誓った。
全パーツができてきたら、質感作りだ。今回、工芸用ラテックスで表面を覆い、その上から着色することによって、像らしさを追求してみたい。よくわかんないけど追求したい。
ベビーパウダー入れてざらつかせてみた。
多少の色をつけて、下の材料の色が透けないようにする。
もっとザラザラさせたいので、2回目の塗布には鉄道模型用の砂を入れてしまう。ザラッザラ。
塗るうちに持つ場所がなくなり、置きにくくなるという地味なやっかいごとを、吊るして解消。
塩ビパイプには先にボンドをつけてからラテックスゴムを塗ると、多少はがれにくくなるそうだ。
ダイソンの文鎮か。
4~5回重ね塗りしたら、まるで鉄のようになった。そしてけっこう掃除機っぽい。
もうこれで完成でいいんじゃないか?とも思う。あるいは、神像はたいていが木彫りとのことなので木目調にすることも考えたが、雨ざらしの稲荷神社に置くことを考え、道祖神風に石像で行くことにする。
道祖神ならぬダイソン神、あとはほぼ塗るだけとなった。
ホコラを作って差し上げたい
アクリル絵の具で着色。筆についた絵の具をぎりぎりまで落としてから、かすれさせるように色をつけていく。これをいろんな色で繰り返すと、石の像っぽくなる。適当にやってもそれっぽくなるので楽しい。
石化しつつあるダイソン。
眉毛パーツを貼る場所からラテックスを剥がす。整形医のような気分…
かくして、ダイソン掃除機の神様「大尊神」の石像が完成!わっはっは。
今にして思えば「大尊」って書くこと、よくわかんないけどそれが一番大きなモチベーションでした。
下々のものを率いる、苔むした大尊神(苔も鉄道模型用の草で)。
不機嫌なわけではなく、薄目を開けた尊い表情のつもり。
手でスティックを持つ風にしたかったが、掃除機に見えなくなることを恐れてホースに変更。でもスティック見ればどこをどう見てもこりゃ掃除機だ。なので手でもよかった。
最新のテクノロジーに魂は宿り、よって神様も宿る。ダイソンの次はルンバだろうか。お、「流武婆」か?仏教っぽい字面だけど。流武婆神、作れたら作ります。
【告知1】
5/18-19はデザインフェスタに両日出展します。西1ホールのE-96ブースにずっと張り付いてますので、おいでいただければうれしいです。
【告知2】
その翌週、5/24-26は大阪は新世界「ツムテンカク」に、今回記事の大尊神を出展いたします。家内安全、整理整頓にご利益があるとかないとか。
今回は現代美術二等兵さんとのユニット「モー現。」として、新世界稲荷神社での出展です。
http://tsumutenkaku.com/topics/event/jinjya-kakumei/
※屋外での展示につき、作家は常駐いたしません。ご了承ください。
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●イベント概要
ツムテンカクは、アーティスト・デザイナー・パフォーマー・地元の人など、多くの
キャスト、来場されたゲストと一緒に創り上げるクリエイティブなフェスティバルで
す。
今回は、新世界エリアでデザインやアート作品の展示・販売、ワークショップや音
楽、食など、五感で楽しめる大阪で唯一の「街ナカ巡回型イベント」を実施します。
今年のテーマは「新世界を別世界にする大実験」で、実験的なデザイン・アート、且
つ地域の特性を生かしたイベントで忘れていたドキドキ感を体験することでしょう。
名称:ツムテンカク2013
期間:2013年5月24日(金)-26日(日)10:00-21:00
場所:新世界全域、キューズモール、日本橋
主催:ツムテンカク実行委員会