とりあえず木だろう
もちろん“べこ”というのは東北弁の牛のことを言っている。そして肉のかたまりのことをブロックというだろう。これは組み立て玩具のブロックをかけているのだ。自信がない人間ほど雄弁になるといわれているので、説明はこれくらいにしておこう。
オーソドックスなタイプ
調理法の記されたタイプ、どちらもホルモン系は描かれていない
スーパーでみかけるポップである。例のブロックおもちゃを使って等身大の牛を作るというのも手だが、このイラストの様にデフォルメされているほうが、牛肉の生々しさとのギャップがあって面白いだろうと思う。
加工のしやすさやおもちゃとして考えたら、やはり木で作るのがいいのだろう。木工…、中学の技術の授業でセロテープの台を作って以来かもしれない。
とりあえず画像検索
書き込んでいるけど初めて聞く部位ばかり
もちろんハツ(心臓)はハート形だ。こういう作業は楽しい。首から先崩れるかな?肺はマイナーなので省こう、その代り4つの胃袋は全部入れよう。子供のころも部屋の模様替えなんかはワクワクしたものだ。
脚が細いので立たせたら不安定な感じがする。もう少し太くしたほうがいいだろう。やはりデフォルメは必要なのだ。くまモンとメロン熊の人気の差が物語っているではないか。ここはリアルを捨てよう。
熊で思い出したが、木彫りの熊は記憶の中でだいたい左を向いている。牛の写真でも左向きが多いし、この業界では左を向けさせるのがデファクトスタンダードなのだろうか。ハツが左寄りに位置していることと関係してるのではと内心にらんでいる。
いよいよ木材から切り出します
区分けができたら木工作業だ。東急ハンズでヒノキの木片を買ってきた。厚みが4センチもある。
フィトンチッド出まくり
切り分けた紙をあてて下書きの線を入れましたが、
何個やってもまっすぐ切れないのです!
線に沿って切ろうと集中すると、どうしても糸のこの刃が傾いてしまうのだ。このままでは台形の木片を無駄に生み出すことになるので、文明の利器であるレーザーカッターを頼ることにした。
レーザーカッターデビュー
カフェタイムを楽しむ人々の視線が集まっている気がして照れる
「お店で使うんですか?」 いえいえ、ただのベコブロックですよ。
牛の絵がプロジェクターに大写しになるたび少し恥ずかしくなるが、こういうパズルを作りに来る人は結構いるそうだ。
自動で判断して内側の部分から切り始めるらしい。賢い。
レーザーカッターで利用できる厚さ1センチのシナベニヤにランクダウン。1枚板は高いのだ。
レーザーの先がターゲットを決め、じりじりと木を焼き切っていく。やっぱ糸のこじゃ無理っすね。
すすで手を汚しながら組み立てる
家に持ち帰って断面のすすを落とす。1センチの木材カットはパワーが要るらしく、断面は結構焦げている。
見た目は牛型クッキー
ハニカム型にしたハチノス(第二胃袋)は割と気に入っている
ヒレの中のシャトーブリアンが燃え尽きてしまわないかレバーを冷やした
ところでシャトーブリアンという部位は、シャトーブリアンさんがステーキ用に焼かせたことからその名がついたらしい。本人の認知しないところで名称の付いた例だ。分野は違うが王貞治に対する“王シフト”というのも同じような例だ。うらやましい。僕も王さんと同じで野球が好きなので、いつか自分の名前を冠したシフトを相手チームに敷かせたい。
バリは削っておく
カットの甘いところが若干あるのでカッターややすりで形を整える。
実は、違うパターンの型もカットしてもらっていた。
ガタガタがついているでしょう
三枚重ねて接着
このガタガタのパターンをノーマルパターン2枚で挟む。接着剤で固定させたあと、部位同士を組み合わせてみる。するとうまいこと噛み合ってくれるのだ。
けがの功名ではないが、手作業での切り出しをあきらめたことで組み木という選択肢に気付いて、かえってレゴらしさが増したかもしれない。もうレゴって言っちゃったけど、レゴとベコをかけているのが伝わらなかったらアレだなと思って。
色を付けることにした
カットの前は木の風合いを生かして無塗装でという考えもあったが、思いのほかすすで汚れるので塗装することにした。
「4色問題を君は知っているのか?あの答えは美しくない。」
Wikipediaの「四色定理」を参考にして配色。『隣接する領域が異なる色になるように塗るには4色あれば十分』らしい。
スプレー塗料でカラーリングして汚れを隠す
なになに、ベルルスコーニ氏の求心力が低下、ですか。ベルルスコーニ。実に声に出して読みたい日本語だ。
横の断面は塗料が染み込んでうまく乗らなかった。塗料が乾くのを待って組み立ててみる。塗料越しに伝わる木の質感はやっぱりいい。
凸と凹がぴったり
はまりやすくもなく、はずれやすくもない。組み合わせる時のギュムギュム感がいい塩梅になっている。木の伸縮性のおかげだろう。
実はいまだに完成図を見なければ組み立てられません
立った~!
完成した。頭部の重みで若干首をもたげているが、いざとなったらマグネットかなんかで!
タングラムのような想像力を使う余地がない。“牛の部位組み立て遊び”一択だ。子供に与えたら半日で飽きるだろう。ならば大人の遊び方を提案しよう。
居酒屋(牛専門店)で見せびらかす客
店員さんがざわざわ。「なんか牛の持ってきてる人が…」
牛肉料理のお店にやってきた。店内でベコブロックを組み立て始めると、店員さんが早速食いついてくれた。
「え、すごい!」
「コレ自分で作ったんですか?」
「商品化すればいいのに!」
激賞じゃないっすか。これを持って焼肉屋回れば、毎回褒められるのかな。
サーロインはここですね、ぱくっ。
シマチョウとランプと…忘れました。
牛達のおかげでこの楽しい夜があり、職人さん達のおかげで明日の仕事を頑張れる。食肉に携わるすべての人々に感謝である。
情操教育にぜひ
幼いころ保育園の教室の壁に人体解剖図が貼ってあって、僕はその前を避けて通っていた思い出がある。夕闇に浮かんだ人体解剖図は、今思い出しても不気味だ。もし教室に牛や豚のそれが貼ってあっても避けただろう。トラウマならぬウシブタである。
子供のころからこういう教材に触れていたら、もしかしたら生き物の見方が変わって生物学者になっていたかもしれない。ベコブロック、お子様の情操教育にどうですか?