世界での毎年の新規導入容量(2015〜40年)(GW)(出所:ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス「New Energy Outlook 2015」)
世界での毎年の新規導入容量(2015〜40年)(GW)(出所:ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス「New Energy Outlook 2015」)
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 ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)は6月23日、「New Energy Outlook 2015(NEO2015)」(新エネルギー概況)を発行し、今後25年の電力市場における5つのトレンドを示した。BNEFは、毎年「New Energy Outlook」を発行し、世界の電力市場の長期予測を発表している。

 最新のNEO2015では、国別、技術分野別の電力需要、発電コスト、そして構造変化を解説し、今後2040年までに生じる、以下の5つの潮流を示したのが特徴。

 1つ目は、「いたるところで太陽光発電 (Solar, solar everywhere) 」。今後、太陽光発電技術の進歩により、一層のコストダウンが進み、太陽光発電への投資は、3.7兆米ドルに達する。投資先は、小型から大型まで当てはまるという。

 2つ目は、「消費者主体による発電 (Power to the People)」。2.2兆米ドルが屋根上や、その他の地場の太陽光発電に投資され、消費者や事業者は自家発電を保有し、蓄電池に貯めることになるとみている。発展途上国では、太陽光によって電力を初めて導入する地域が出てくることになるという。

 3つ目は、「需要成長率の低下 (Demand undershoots)」。照明や空調の省エネ技術によって、世界の電力需要を年率1.8%の成長にとどまるという。これは1990~2012年に比べて年率3%の減少で、OECD加盟国では2040年の電力需要が2014年より低くなるという。

 4つ目は、「ガスの燃え上がりは部分的(Gas flares only briefly)」。天然ガスは石炭への依存を断ち切る転換燃料にはならないとみている。北米ではシェールガスがガス市場を変えるが、石炭からの転換は主に米国で起こり、多くの発展途上国では石炭と再生可能エネルギーとの併用になるという。

 5つ目は、「気候変動危機(Climate peril)」。 8兆米ドルもの再生可能エネルギーへの投資にもかかわらず、化石燃料を使用する火力発電所は依然存在し、発展途上国では新設の石炭火力発電への投資が続くため、世界のCO2排出量は2029年まで増加し、2040年には2014年レベルから13%増加すると試算している。

 小型太陽光発電のブームによって、屋根上、ビルドイン型、地場の太陽光設備の世界の発電容量は、2014年の104GWから2040年には17倍の約1.8TWとなる。また、2040年までに、大規模太陽光発電は24倍の1.9TWに達すると予測している。

 これは、太陽光パネルの発電効率向上と、新素材の開発、そして生産手法の合理化によってもたらされるという。太陽光プロジェクトの1MW当たりのコストは、47%もの劇的な低下が実現され、それがいっそうの急拡大に寄与するとみている。

 BNEF・太陽光チーフアナリストのJenny Chase氏は「現在に至るまで、小型太陽光への投資はドイツ、米国、日本など先進国で行われている。2040年までに、発展途上国は 1兆米ドルを小型太陽光発電に費やす。多くの場合、離れた村落では電気が初めて導入される」と述べている。

 BNEFの分析では、大規模・中央集約型システムから、分散型・顧客特化型への明確なトレンド変化が明らかになっており、家庭やビジネス分野への太陽光発電・蓄電池の本格導入が、電力システムに多くの変化を引き起こすと予測している。