読者の皆様、はじめまして。テクノブレーンの山岸と申します。
技術系を中心とした人材紹介会社に勤めている筆者は、キャリアコンサルタントとして、今までに数多くのエンジニア・コンサルタントの方とお会いさせて頂きました。
こうして色々な方とお会いして感じることは、多くの方々が技術や資格のスキルアップには少なからず関心を持っており、その有用性を日々考えてはいるものの、プロジェクトなどで忙しく、自身のキャリアアップについては後回しになっているということです。
今回は、そんな日々スキルアップに勤しむエンジニアの方々に、キャリアコンサルタントとしての視点から「多様化するエンジニアのキャリアパス」について説明していきます。
従来のエンジニアのキャリアパスといえば、「PG → SE → PL → PM」というものでした(PMではなくコンサルタントという道もありますが)。そのためある程度、開発・マネジメント経験を積めば、モノ作りを希望するエンジニアであっても、本人が望む・望まないに関わらず、プロジェクトマネージャーとしての役割・能力が求められるのが通常のキャリアパスでありました。
しかしITの複雑化とユーザのニーズの高度化が進む状況下で、かつては一人で取りまとめていたエンジニアでも、マルチベンダー環境下になり、新たな開発言語・ミドルウェア・システム間連携技術などと次々と新しい技術や製品が登場していく中ではもはや一人ではカバーはできなくなっています。より専門性の高いプロフェッショナルを持った人材が特に必要になってきているのが今のシステムの現場です。
実際に某大手SIerでも、プロジェクトマネージャーやシステムエンジニア以外にも、社内用語としてだけではなく、アーキテクトやスペシャリストなど特定の専門職種が中途採用で確立しています。
かつての専門分野に特化したスペシャリストというと、その技術力が評価・重宝される一方で、管理職に昇進できない/リーダーとしての素養がないという、どちらかというとマイナスのイメージもつきまとっていました。大手SIer、コンサルティングファームであれば、特にその傾向が強いように思われます。プロジェクトマネージャーが人月単価200万以上であるのに対して、スペシャリストでは100万前後にしかならないこともよくあることでしたから。
しかし前述した通り、現在では専門性の高い職種であれば、人月単価200万円以上である方も数多くおり、もはや立派なキャリアのゴールになっています。
年収に関しても、現状は年齢が上がるにつれ差は開いておりますが、30歳くらいまでの若手であればほとんど差がないといっても大げさではありません。今後は専門性がより評価され、もっと差は詰まっていくことが予想されます。
年齢層 |
プロジェクトマネージャー |
スペシャリスト |
25歳〜29歳 |
- |
450万円 |
30歳〜34歳 |
600万円 |
550万円 |
35歳〜 |
700万円 |
630万円 |
表1:年齢層ごとに見た職種別の平均年収 テクノブレーン登録データより抽出 25〜29歳のプロジェクトマネージャー層は対象者が少なく算出不可
それでは、実際にどのようなキャリアを描いていけばよいのでしょうか。「プロジェクトマネージャー以外にキャリアパスがあるといっても、どうしていいかわからない」という声も聞こえてくるでしょう。
最初に考えなければならないこととして、エンジニアである以上は技術力がすべて基礎となるので、要素技術や基盤技術といったOS・DB・開発言語などの中核スキルを少なくとも3年はかけて確立することが必要になってきます。
その上で、世の中にどのようは職種があり、どのようなスキルが必要かを知り、そのままプロジェクトマネージャーを目指すのか、それとも高度化したシステムを実際に形にしていくスペシャリストを目指すのか、テクニカルスキルを活かしたコンサルタントになるのかを見極めていくのがよいでしょう。
キャリアに答えはありません。
しかし上司/先輩の後ろを追うだけでなく、ITの複雑化とユーザニーズの高度化で、多様化するキャリアパスの中、「自らのキャリアをデザインする」という発想は、今後非常に重要になってくるのではないかと思います。
キャリアは偶然に左右される要素が非常に強いのですが、自ら能動的に仕事に取り組めば、自分の意識や周りからの目は必ず変わります。是非、意識して取り組んでみてください。
それでは、具体的にどのような職種があるかというと以下のように分けられ、今回は4つの職種を中心に1つ1つみていきます。
図1:キャリア設計の指針
プロジェクトマネージャーといえば、プロジェクトの舵取り役で「成功」という1つのゴールに向かって導くのが仕事の本質です。
近年のシステム開発プロジェクトは、低予算・短期化が進んでおり、ただでさえ成功へ導くのが難しくなっています。こうした中、多くの現場で「プロジェクトマネージャーが欲しい」という依頼が絶えません。
実際の仕事としては、ユーザとの折衝業務、人件費や費用の管理、進捗管理、品質管理、工程管理、変更管理などのプロジェクトコントロールに留まらず、メンバーのモチベーションアップなど、数え上げればきりがないほど、様々な仕事が浮かんでくるでしょう。こうした業務を行うためには、SEとしての開発経験があった方がよいプロジェクトマネージャーになれるでしょう。
しかしプロジェクトマネージャーとしての新しいスキルも求められるのも事実ですから、プロジェクトの進行上、どのような阻害要因が発生する可能性があるかを予見して、それに対処するノウハウを身につけていく必要があります。現在はPMBOKと呼ばれる事実上国際標準になっているフレームワークもあり、関連する書籍なども多く、学ぶ環境は揃っております。
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