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感動

SKⅡのCM、中国で大ヒット 結婚への圧力「残った女性」の悲しみ描く

中国で大ヒットした晩婚化をテーマにした「SKⅡ」のCM。結婚について悩み泣き出す女性
中国で大ヒットした晩婚化をテーマにした「SKⅡ」のCM。結婚について悩み泣き出す女性

目次

 高級化粧品「SKⅡ」は中国で配信したネットのCMが、話題になっています。タイトルは「彼女は最終的にお見合いコーナーに行った」(她最后去了相亲角)。4分ほどのCMは、中国版Youtubeにあたる優酷(Youku)で公開初日に100万回以上再生され、コメントは3万件を超えています。注目を浴びたこのCM。有名な女優やスターは一切出てきません。ヒットの背景には、中国の独身女性が抱える深刻な「晩婚化」への悩みがありました。

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有名女優も商品名も出ないCM

 SKⅡのCMは、日本では桃井かおりさんや綾瀬はるかさんが有名です。中国でもトップスターの湯唯さんらが起用されています。

 しかし今回のCM(http://v.youku.com/v_show/id_XMTUyNTA1MTg1Ng==.html)はドキュメンタリータッチで、商品すら出てきません。CMの最後に「SKⅡChange Destiny」の文字が現れた程度です。

 それでも、多くの注目と共感を得たのは、女性の晩婚化に切り込んだからです。1980年に改訂された中国の婚姻法によると、男女の結婚年齢は男性22歳、女性20歳で、また男性25歳以上、女性23歳以上は「晩婚」と決められています。

エスカレーターですれ違う親子連れに目をとめる女性
エスカレーターですれ違う親子連れに目をとめる女性 出典:「SKⅡ」のネットCM「彼女は最終的にお見合いコーナーに行った」(她最后去了相亲角)から

 一方、近年、都市部では欧米と同じぐらいの晩婚化が進み、初婚平均年齢は男性29.1歳で、女性27.1歳になっています。上海の地元新聞『新聞晨報』の報道によると、2015年上海の初婚平均年齢は、男性は30.11歳で、女性28.14歳に達しています。

 中国では30歳前後でもまだ結婚していない女性に対し、「剰女」というレッテルを貼り、親や周りの人が結婚のプレッシャーをかけることが少なくありません。今回のSKⅡのCMはまさに「剰女」の気持ちを代弁し、多くの共感を呼び起こしました。

独身生活を続ける女性
独身生活を続ける女性 出典:「SKⅡ」のネットCM「彼女は最終的にお見合いコーナーに行った」(她最后去了相亲角)から

「結婚しない限り、父は死ねない」

 CMでは、剰女と呼ばれる女性たちとその親たちの声を、ありのままに取り上げました。CMから、中国の社会情勢も透けてみます。

 「パート1」では、女性たちの子供の時代からの写真や、学位を取った時の写真や、海外旅行の写真などと一緒に親たちの声が挿入されます。

「もう子供ではない」
「お嫁さんに行きなさい」
「結婚しない限り、父は死ねない」
「わがまましないで」
「あなたはすでに『剰女』だ!」

 ここからは、親たちが、娘たちの学歴や経歴よりも、「結婚」を強く望んでいる様子がうかがえます。

結婚について悩み泣き出す女性
結婚について悩み泣き出す女性 出典:「SKⅡ」のネットCM「彼女は最終的にお見合いコーナーに行った」(她最后去了相亲角)から

「『剰女』とは、文字どおりに残された女性」

「パート2」では、女性たちの声が描かれます。

「『剰女』とは、文字どおりに残された女性。25歳以降結婚しなければ『剰女』だ」
「やはり他人に言われたり、家族に催促されたり、あるいは社会的なプレッシャーを受けたりします」
「毎年の旧正月に帰省する時は最もプレッシャーを感じます。あらゆる人が聞きます」
「彼らは、必ず結婚しなければならないと思っています。そうでなければ、女性としては不完全だと思うからです」

母親と歩く独身女性
母親と歩く独身女性 出典:「SKⅡ」のネットCM「彼女は最終的にお見合いコーナーに行った」(她最后去了相亲角)から

 CMでは、周りからのプレッシャーを身をもって感じている女性が登場します。旧正月の時に会った親戚から、次のような質問をぶつけられます。

【もういくつですか】
【まだ結婚していない?】
【もう若くないだろう】

 これらは、「剰女」の女性なら誰でも経験している場面と言えます。

独身同士で食事を楽しむ女性たち
独身同士で食事を楽しむ女性たち 出典:「SKⅡ」のネットCM「彼女は最終的にお見合いコーナーに行った」(她最后去了相亲角)から

「まるで、商品として売ろうとしているよう」

 「パート3」は人民広場でのお見合いの場面に移ります。中国ではどこの都市でもある「人民広場」。特に上海では、人民広場にある「見合いコーナー」は、親たちが子供のためにお見合いする名所になっています。そんな「人民広場」に対して女性たちが声をあげます。

「人民広場のお見合いコーナーが好きではありません」
「親が娘や息子の紹介文をそこに貼り、収入・仕事・マイホーム・マイカーを表示する。まるで、商品として売ろうとしているようにも見えます」
「中華の子孫として、親孝行が最も大事。そして結婚しないことは、親不孝行なのは間違いない」

 上海人民広場のお見合いコーナーを通じて、「結婚=親孝行」という伝統が、親も娘も逃れない大きな負担になっている事実が描かれています。

人民広場にある「見合いコーナー」
人民広場にある「見合いコーナー」 出典:「SKⅡ」のネットCM「彼女は最終的にお見合いコーナーに行った」(她最后去了相亲角)から

「私は結婚のための結婚を考えたくない」

 「パート4」は、親たちの切実な気持ちと、折れそうになる女性たちの心が描かれます。

 「私は娘の性格がいいと前から思っていました。ただ、顔は特にかわいいとは言えません。普通ですね。そして、やはり残されました」。そう言いながら、娘のそばで母親は泣き出してしまいます。

 そんな母親に対して娘は「今でも真の愛を待ち望んでいますよ。そうです。愛を待ち望んでいます」と訴えます。

お見合い広場に並んだ雨傘。結婚を希望する人の身長や職業などを書いたメモが貼られている
お見合い広場に並んだ雨傘。結婚を希望する人の身長や職業などを書いたメモが貼られている 出典:「SKⅡ」のネットCM「彼女は最終的にお見合いコーナーに行った」(她最后去了相亲角)から

 「パート5」はクライマックスです。

 女性たちは、本当の考え方を親に伝えるため、上海人民広場のお見合いコーナーへ行くことを決意します
 
 お見合いコーナーには、女性たちの写真がずらりと並んでいます。そして、一枚一枚の写真には女性のメッセージが添付されています。

「私は結婚のための結婚を考えたくない。それは幸せとは言えません。李雨璇 33才」
「私は一人でも、幸せで、楽しい、自信を持ちます。頑張って生きていきます」
「剰女でも、仕事がバリバリであれば、『女の強人』という言葉もありますね」

お見合い広場で、結婚希望者のメモを眺める親たち
お見合い広場で、結婚希望者のメモを眺める親たち 出典:「SKⅡ」のネットCM「彼女は最終的にお見合いコーナーに行った」(她最后去了相亲角)から

 女性たちの決意に、親たちも態度を変化させます。

「『本当に似合う人が出現するまで』、ママは永遠にあなたの味方ですよ」
「私の娘は美しいです。剰女は恥ずかしいことではありません」
「もし独身でもいいと娘が思ったら、我々も彼女の意思を尊重します」
「剰女は優秀の女性ばかりですよ。剰男たちは頑張らないと!」

 現実は、なかなかここまで理解が進むことはありませんが、リアルな描写は、CMを見た女性たちの心をつかむには十分なインパクトがあったようです。

独身の娘に理解を示し、一緒に笑う親子
独身の娘に理解を示し、一緒に笑う親子 出典:「SKⅡ」のネットCM「彼女は最終的にお見合いコーナーに行った」(她最后去了相亲角)から

共感の声「感慨深いです。自分もこの年齢」

 CMを見た人からは、共感の声が寄せられました。

「この動画を見て非常に感慨深いです。自分もこの年齢層です」
「SKⅡのCMとは知らなかった!でも非常によかったです」
「愛のない結婚はやっぱり長続きできません」
「女性たちも自分の幸せを追求し、頑張る勇気を持ってください」
「感動的です!泣きたくなりました」

本編に商品名は一切出てこず、動画の最後にロゴが現れる
本編に商品名は一切出てこず、動画の最後にロゴが現れる 出典:「SKⅡ」のネットCM「彼女は最終的にお見合いコーナーに行った」(她最后去了相亲角)から

CMの狙いは? SKⅡに聞いてみた

 「SK-II」を販売するP&GにCM企画のきっかけを聞きました。

 同社は、今年から「運命を変えよう#Changedestiny」というキャンペーンをスタート。世界各国の女性が人生や未来を自分の意思で切り開いていくことを応援し、またそれを提案するメッセージを発信しています。

 今回のCMは、中国の「剰女」の現状を踏まえて作られました。

 同社の担当者は「中国の才能や知性あふれる女性たちが困難に屈することなく、自分の運命を自分たちの手で選択し、変えて行ってほしいという願いや、自分に自信を持ち、価値のある存在ということにあらためて気付いてほしいというメッセージを込めています」と説明します。

 「制作途中から、関わった人々の強い思いやポジティブな気持ちがこの動画の中にあふれていた」。ヒットすることは当初から予感していたそうです。

 同社は女性が前向きに運命を変える役立つメッセージの発信を、今後も続けていくそうです。ちなみに、日本でも晩婚化が進んでいますが、今のところ日本で同様のキャンペーンを行う予定はないそうです。

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