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ブシロードの木谷高明社長が若者に向けて自身の半生とビジネスを語る。法政大学 にて開催された「木谷高明講演会」聴講レポート
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印刷2012/12/11 15:43

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ブシロードの木谷高明社長が若者に向けて自身の半生とビジネスを語る。法政大学 にて開催された「木谷高明講演会」聴講レポート

 2012年12月8日,ブシロードの代表取締役社長を務める木谷高明氏の講演会が,法政大学 市ヶ谷キャンパスにて行われた。この講演会では,木谷氏が自身の持つ「哲学,ベンチャー経営論,そしてこれからの日本の文化産業の展望」をテーマに掲げ,氏がエンターテイメント業界に参入したきっかけや,約20年間業界に携わって見えてきたもの,これからの業界の展望などについて,1時間半にわたって語った。

画像集#003のサムネイル/ブシロードの木谷高明社長が若者に向けて自身の半生とビジネスを語る。法政大学 にて開催された「木谷高明講演会」聴講レポート

 木谷氏は,現在の自身の活動に影響を与えた要素として,少年時代を振り返る。当時から漫画が好きだったと語る氏だが,その中でも「男一匹ガキ大将」などがお気に入りだったという。前者では,とあるエピソードで株価が一気に50倍に跳ね上がる展開が描かれており,株に興味を持つきっかけとなっただけでなく,立身出世の具体的な手段として氏の心に残ったとのことである。

 また,プロレスも当時から大好きで,自身が観戦に行った際に,タイガー・ジェット・シン選手がサーベルを振り回して取り巻くファンを威嚇し,タクシーに乗って会場から去っていく様子が心に焼き付いているそうだ。

ブシロード 代表取締役社長 木谷高明氏
画像集#002のサムネイル/ブシロードの木谷高明社長が若者に向けて自身の半生とビジネスを語る。法政大学 にて開催された「木谷高明講演会」聴講レポート
 さて,少年時代に株に興味を持った木谷氏は,大学を卒業したのち山一證券に就職することとなる。当時はバブル経済の真っ只中で,氏もその流れに乗って優秀な営業成績を収め,入社5年目には会社の出資で北米に留学する機会を与えられた。そこで出会ったのが,ハロウィンの仮装パーティだ。当時の木谷氏はハロウィンと言われてもピンと来なかったらしいのだが,会場で仮装して踊っている人達を見て非常に楽しいと感じたそうで,これがのちにブロッコリーで開催したコスプレダンスパーティー(コスパ)につながっていくというわけである。

 また留学当時,ベンチャーキャピタルに興味を持っていた木谷氏は,北米のベンチャー企業20数社を訪問したという。氏がとくに着目したのはそういった企業の代表となる人物の経歴で,いずれも有名大学を卒業し,大企業に就職したのち,そこを辞めていた。そしてビジネススクールに通ってMBA(経営学修士)を取得し,あらためて自身で起業していたのである。

 当時の日本は,今と異なり大企業主義だったため,10人前後しか入れない小さなオフィスに優秀な人材が集まっている様子を新鮮に感じたと木谷氏は話し,自身の起業について具体的に検討する刺激になったと語った。

 ここで木谷氏は,将来,独立起業を志す人が,最初に就職するときにの選択肢を3つ挙げる。一つは,自分の将来目指す事業に関連する企業に就職すること。ちなみに証券会社は免許制であったり,最初から莫大な資金が必要だったりと,まったく独立に向かないそうだ。

 二つめの選択肢は,大規模な会社に入ること。大企業にはメリットもデメリットもあるが,昨今ではとくに意思決定の遅さが取り沙汰されている。なぜ大企業では意思決定が遅くなるのか,実際に体験して自分で分析してみるの悪くないと木谷氏は説明する。また,まだこの先数年間は,大企業に在籍した経験がキャリアとして認められる可能性も高いことも理由として挙げられた。

 そして三つめの選択肢が,経営者の近くで働くこと。これは経営者の考え方を実地で学ぶためである。

 北米留学から日本に帰ってきた木谷氏は,山一證券に10年勤務したことなどをきっかけに,具体的に起業に乗り出す。木谷氏は,起業時には結婚していたほうが望ましいと話し,その理由を精神的にきついことが多く,誰かに相談したいことも増えるので,支えとなるパートナーがいたほうがいいと説明。また子供がいる場合は,のちの就学費用などのこともあるので,できるだけ小さいうちに起業したほうがいいだろうとも話していた。

 そして1994年,木谷氏はベンチャー企業としてブロッコリーを設立する。氏は,同社の経営で得られたものとして,キャラクタービジネスと,そこから拡大したカードゲームビジネスのノウハウを挙げる。とくにカードゲームに関しては,1990年代中頃のトレーディングカードゲームブームを通じて,インフラビジネス──すなわち,ずっと続くという信頼感,プレイヤーが増えていくという安心感を,最初に提供できないと成立しないビジネスであることを把握したという。

 そこで氏は, 「アクエリアンエイジ」のリリース前にカードパック第2弾の発売を発表したり,向こう1年先までの大会スケジュールを発表したりという,当時としては異例のプロモーションを展開し,「すぐには終わらない」商品とインフラ双方の安心感を提供した。

 しかし,本当にカードゲームビジネスを理解したのは,自身でもプレイした「ディメンション・ゼロ」だったと木谷氏。このタイトルは,リリース当初こそ人気があったものの,次第にそれが落ちていくのだが,氏はその理由を,プレイヤーの実力がモノをいう内容だったからと説明する。実力主義では,裏を返せば5回対戦して,5回ボロ負けする可能性もあるわけで,そんな経験をすれば誰しも二度とそのゲームをやりたいとは思わないからだ。

画像集#005のサムネイル/ブシロードの木谷高明社長が若者に向けて自身の半生とビジネスを語る。法政大学 にて開催された「木谷高明講演会」聴講レポート

 プレイヤーには「負けたくない」「仲間と楽しく遊びたい」という思いが強く存在すると理解した木谷氏は,ブシロードを起業して最初にリリースした「ヴァイスシュヴァルツ」を企画するにあたり,勝負が拮抗するシステム作りを目指したという。仮に実力差で負けたとしても,「惜しかった」と思わせることができれば,「またやりたい」「今度こそ」と継続へのモチベーションにつながるからだ。その狙いは当たり、同タイトルはキャラクターベースのカードゲームでは異例の大ヒットを遂げたのである。

 木谷氏は,ブシロード設立時に,公言こそしなかったもののカードゲームで世界一になるという目標を立てていたと明かす。当初からの具体的な目標の一つはキャラクターベースのカードゲームでヒットすることであり,それは「ヴァイスシュヴァルツ」である程度達成できた。

 そしてもう一つの目標は子供向けのカードゲームでヒットを出すことで,それがつまり「ヴァンガード」である。木谷氏は子供向けのカードゲームは意外にハードルが高く,過去の成功例がほとんどないと述べ,イラストレーターの選択から戦略を組み立てていったと説明。

 また知人から,「マスに知らしめるには,誰でも知っている人をプロモーションに使ったほうがいい」というアドバイスを受け,子供にも認知度の高いタレント/ミュージシャンのDAIGOさんの起用を決めたという。結果として,「ヴァンガード」はカードゲームを遊ばない人も名前を知っている存在にすることができたと木谷氏は語る。

 ちなみに新日本プロレスリングを子会社化した件については,ブシロード設立当初,まったく予定になかったそうだ。しかし木谷氏は,少年時代から好きだったものが困難に陥っているのを何とかしたいという思いと,プロレスにキャラクターコンテンツビジネスの可能性を見出したことから,子会社化を決めたという。

 氏は,キャラクターコンテンツビジネスでは,ジャンルのNo.1になってしまえば,ほかの追随が難しいと述べ,たとえばアニメならすでに競争相手が多い状態だが,プロレスなら十分トップを狙えると説明した。

 また新日本プロレスリングの選手をカードに使ったオンライントレーディングカードゲーム「キング オブ プロレスリング」についても言及がなされた。同時に2500人が対戦リーグに参加できること,周囲に仲間がいなくともネットワーク上で相手を見つけられることなどのオンラインゲームならではのメリットと,カード自体はリアルの店舗で購入できることとの組み合わせは,次世代のビジネスに大きな可能性をもたらすのではないかと,木谷氏は展望を述べる。

 また2012年12月7日にサービスインしたばかりのスマートフォン向けサービス「ブシモ」に関して,木谷氏は「開発費が高く,非常にリスクの高いビジネス」と語る。しかし氏は,「冷静に分析すると,今,市場が拡大しており,海外市場も狙えるスマートフォンにエンターテイメント企業として参入しないほうが怖い」と話し,今後のブシロードは,アナログのリアルカードゲーム,アナログと融合した「キング オブ プロレスリング」のようなオンラインゲーム,そしてスマートフォン向けゲームを3本の柱として展開していくとまとめた。

 講演の終盤,木谷氏は会場に集まった学生や起業を志す人達に向けてメッセージを送った。氏いわく,自身がコンテンツを作れると自覚したのは38歳くらいとのことで,そのときコンテンツ作りのプロセス──つまり企画して,人を集め,売上を上げて,規模を拡大していくことの繰り返し──は,起業して会社を大きくしていくことに通ずると気づいたという。その経験から,あまり素養がなくとも,経験によってそれを磨いていくことは可能だとし,若いうちから自分の限界を決め付けてしまうようなことはせず,チャレンジし続けるほうがいいと木谷氏は持論を述べる。

 また木谷氏は,今の時代を歴史始まって以来の大成長時代と表現。日本だけ見れば経済は縮小しているかもしれないが,世界的に見れば人口はどんどん拡大し,富裕層も増えており,こんなに面白い時代は今までにないというわけである。氏は,なぜその中で前向きにならないのか,過去ばかりを見て既得権ばかりを主張するのかと疑問を投げかけ,若い人達がチャレンジしないのは非常に残念だと語る。

 最後に木谷氏は,常に走っている必要はなく,ときに休んでも構わないが,このエキサイティングな時代を,ぜひ前を向いて面白く生きてほしいと聴講者にエールを送り,講演を締めくくった。

「ブシロード」公式サイト

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