【9月25日 MODE PRESS】
~サルトリア健在。はたして音楽をどう仕立てたか?!~

 前回「アンドロジナス」について取上げたが、今回はここ数シーズンの傾向として多くのメゾンでみられる「サルトリア」を提案したメゾンについて読み解いていきたいと思う。仕立ての伝統に基づいたマスキュリンスタイルというよりは、未来を見据えたかのような新たなシーチング使いが目を引き、洗練された男性像を象徴していた。ここではその「サルトリア」をどう音楽で表現したかを探ることにしよう。ミラノ・パリファッションウィークから3メゾンを取上げてみたい。

■続いて、ジーゼニア(Z zegna

 元「イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)」のクリエイティブ・ディレクター、ステファノ・ピラーティ(Stefano Pilati)が「エルメネジルド ゼニア(Ermenegildo Zegna)」のヘッドデザイナーに就任し話題に事欠かないゼニアグループ。その中のジーゼニア(Z zegna)にクリエイティブ ディレクターとしてポール・サリッジ(Paul Surridge)を迎えての2シーズン目。会場はペパーミントグリーン、キャロットオレンジのカラーパレットが施され、シーチング同様ナチュラルながらも未来志向の演出。

 12/13年秋冬コレクションに続いて上質なシルク使用をし、ゼニアならでは、仕立ての美しいスーツなど優しいカラーとリラックス感のあるコレクションである。写真家ソール・ライター(Saul Leiter)による、ストリートをテーマにした1960年代の写真集アーリーカラーからインスピレーションを得たというアイテムなどもあり、ポール・サリッジが提案するサルトリア、「楽観主義」、「開放感」をどう音楽で表現したのだろうか。

 まずは、ミニマルジャーマンテクノで知られるシュラハトホーフブロンクス(Schlachthofbronx)の「コペンハーゲン」からはじまる。今流行りの中南米的要素を含むエレクトロ系だ。チリ出身のリカルド・ヴィラロボス(Ricardo Villalobos)も同列であり、かのランバン(Lanvin)のランウェイミュージックを手掛けるアリエル・ウィズマン(Ariel Wizman)も頻繁に使用している。バルカンビーツ/ソカ/バイレファンキ/ダーティーサウスなど多くの要素を取り入れながらも、男性の前向きな姿勢と楽観主義、喜びと気軽さを表現しているようだ。そして同アーティストの「レギュレイター」へとエディットしている。より明確に、陽性と楽観、喜びと明るさを鼓舞するエレクトロサウンドある。

 では楽観主義、開放感をどう音楽で表現したのだろうか。それは、土着的な生音源の音ではなく、エレクトロという現代の魔術ともいえる音楽性と中南米的パーカッシブな音使いにより表現しているということだ。カラーや素材感までも想像させる絶妙な透明感とメリハリのあるサウンド。モダンに聴かせる、魅せるという計算のもとに成立しているようだ。但し実際の会場では、ヒップホップMC のスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)の「ドロップ イット ライク イッツ ホット」も使用したことをつけくわえさせて頂く。(3)に続く。【佐藤喜春】

プロフィール:
1986年より選曲に従事する。1991年より東京コレクション、2002年よりパリコレクションをそれぞれ手掛けるようになる。多くの国内外のブランド のコレクションやパーティー、エキジビション、ジュエラー、ビューティ、エディトリアルのサウンドプロデュースを行なう。
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