コンピューターで21種の感情識別に成功
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【4月3日 AFP】自分が「うれしい嫌悪感」や「悲しい怒り」の表情をしているかどうか、気になったことは? それを知るためのアプリケーションが、いつの日か登場するかもしれない。
米オハイオ州立大学(Ohio State University)の研究チームは、複雑なものを多く含む21種類の表情を、コンピューターに認識させる方法を開発した。これは従来コンピューターが識別可能だった表情の数の3倍以上にあたり、認知解析分野の画期的な進展として称賛されている。
認知科学者で、同大の計算機工学・電気工学の准教授、アレイクス・マルティネス(Aleix Martinez)氏は「われわれは『うれしい』とか『悲しい』といった単純な感情の表情を越え、人々が21種類の感情を表現する際の顔の筋肉の動かし方に強い一貫性があることを突き止めた」「この21種類の感情は、少なくとも私たちの文化の中では、ほぼすべての人が同じ方法で表現している」と説明している。
米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)に発表されたこの研究は将来的に、自閉症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神障害の診断と治療に役立つ可能性を秘めている。
認知科学者らによるこれまでの研究は、喜び・悲しみ・恐怖・怒り・驚き・嫌悪という6つの基本的な感情の追跡に限定されていた。
一方、オハイオ大のチームは、ボランティア230人に「思わぬ朗報を聞いた(うれしい驚き)」「臭いにおいをかいだ(嫌悪)」といった想定条件を言葉で伝え、それに反応した顔の表情を写真撮影した。
そのようにして記録された5000枚の画像を綿密に分析することにより、顔の筋肉のうちで感情の顕著な指標となる口角や眉の外縁といった筋肉の変化を特定した。チームでは身体言語解析の基本ツールである「顔動作記述システム(Facial Action Coding System、FACS)」を用いてデータを精査し、表情の類似性と差異を照合した。
その結果、6種類の基本の感情と、それらを組み合わせた「複合感情」を足した21種類の感情が得られた。
例えば「うれしい驚き」の表情は、頬を引き上げて笑顔になる「幸福感」の表情と、目を見開き口をぽかんと開ける「驚き」の表情の分析によって識別された。「うれしい驚き」に対しては、参加したボランティアの93%が「うれしい」と「驚き」の2つの反応を混ぜあわせた表情で応じていた。(c)AFP