プーチン露大統領、シリアから軍の「主要部」撤退を命令
ロシアのプーチン大統領は14日、シリア駐留部隊の「主要部」の撤退を15日から開始するよう命令した。
プーチン大統領はクレムリンで開かれた政府会合で、「国防省と軍は総じて目的を果たしたと考える」とした上で、「ゆえに国防省に対し、軍主要部のシリア・アラブ共和国からの撤退を明日から開始するう命じる」と述べた。
スイス・ジュネーブでシリアの和平をめぐる協議が14日に始まったなかでの撤退命令は、関係国を驚かせた。
シリアのアサド政権を支持するロシアは、昨年9月にシリアでの空爆を開始。5年間続く内戦の勢力バランスを変え、シリア政府は反体制派の支配地域の縮小に成功した。シリア政府はロシア軍の撤退開始に同意するとの声明を出している。
プーチン大統領はシリア・ラタキア県にあるヘメイミーム空軍基地と地中海沿岸のタータス軍港はこれまで通り機能すると述べた。同大統領は2つの拠点が「陸、空、海で」防衛されなくてならないと語った。
シリア反体制派は慎重ながらもロシアの決定を歓迎している。最大組織「高等交渉委員会」(HNC)のサリム・ムスラト広報担当者は、「撤退実施が真剣なものであれば、(和平)協議に前向きな影響を及ぼす」と述べた。
米国も同様に慎重な姿勢を崩していない。ホワイトハウスのジョシュ・アーネスト報道官は、「ロシアの意図を明確に知る必要がある」と語った。
オバマ米大統領がプーチン大統領と撤退開始について電話で協議したことは、ホワイトハウス、クレムリン双方が認めているが、詳細は明らかにしていない。
ただしこれとは別に、複数の米政府筋はロシアから事前通知は全くなかったと述べている。
BBCのジョナサン・マーカス外交担当記者は、アサド政権の態勢を立て直し、主要な戦略的地点を反体制派から取り戻し、和平への交渉にアサド政権が関与するという、シリア介入の主な目的をロシアは果たしたと指摘した。
ロシアは空爆がテロリスト集団のみを標的としていると主張してきたが、西側諸国は、アサド政権の政敵への攻撃が空爆の目的だと非難していた。
シリア問題担当のスタファン・デミストゥラ国連特使は14日から始まった和平協議が「正念場」になると述べ、協議が決裂した場合の「代替案」はなく、内戦が続くほかに道がなくなると指摘した。
敵対行為の一時停止は、ほぼ全ての内戦当事者の合意の下、先月末に始まったが、一部で合意違反があったと報じられている。
最近では、過激派組織「イスラム国」(IS)支配地域の、世界遺産に指定されたパルミラ遺跡の近くに、シリア政府軍が進攻していると報じされている。
ロシアによるシリア空爆
・ロシア空軍は9000回以上出撃
・209カ所に上る石油生産・運搬設備を破壊
・シリア政府軍が400の町・拠点を取り戻すことを支援
・シリア政府が1万平方キロ以上の地域を奪還することを支援
(ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相の発言を報じた同国メディアから)