「さざれ石」
さざれ石といえば、アレだ、国歌に出てくる苔のむすまでの石のことだ。看板にも、そう書いてある。
へえ、実物ってこういうのだったのかぁと、しげしげと眺めてみる。
神社に飾られていて、国歌にもうたわれるぐらいなのだから、たいそうありがたい石なんだろう。文部科学省の入口のところにも飾られている。ところで、この「さざれ石」は、そもそもどんな石で、どのあたりが「偉い」感じがするのだろうか。
国立科学博物館の地学研究部にたずねてみた。
「さざれ石というのは、もともと小さい砂利のような石を指すんです。小さいことを『さざれ』というのですが、その意味ですね」
辞書によると、「さざれ」とは、「小さい、こまかいの意」とあり、さざれいしの項目に、「小さい石」と確かに書いてあった。
さざれ石は、小石のことだったのか。でも、今回見かけた、大きな「さざれ石」は、そこそこ大きな固まりだったわけなのですが。
「これは、我々が言う、『れき岩』にあたるもので、さざれ石が、固まって巌となったものです」
つまり、国歌で歌われているのは、小石がこんなふうに固まって「巌」となった状態のことだというわけだ。
鶴岡八幡宮の解説文にも、<石灰石が雨水で溶解され生じた乳状液が小石を凝結して「君が代」に詠われているように大きくなって岩に成長したものです>とある。
こんなふうに飾られているということは、やっぱりそれなりに貴重なものなのかというと、実はそうでもないらしく、割とあちこちで見つかるものだということだ。
とはいえ、鎌倉以外の各地の神社にも、恭しく飾られているわけなのだが、
「岐阜県では天然記念物に指定されているのですが、その町が、全国の神社などに送ったようなんですね」
とのこと。鶴岡八幡宮のものも、発見者の息子が奉納したものだそうだ。
そこまで珍しいものではないとはいうものの、小石がこんな状態にひとつになるというのは大変なことで、あらためて、すごいな、地球。
(太田サトル)