1983年、アメリカはフロリダ州クリアウォーター、ハンプトンロードの片隅に一軒のレストランが開業した。
その名もHOOTERS(フーターズ)
この店は、バストの大きな女の子ばかりをウェイトレスにそろえ、おまけに白いタンクトップとオレンジのホットパンツというコスチュームで、彼女たちのスタイルのよさを積極的にアピールしていた。

その健康的なお色気は、鼻の下の伸縮性に優れた男性たちの圧倒的な支持を得て、瞬く間に支店の数を増やしていった。フロリダから東海岸、サンベルト(南部の温暖な地域)、ロッキー山脈を越えて西海岸へ。そしていまではアメリカ本土のみならず、中南米、ヨーロッパ、中国、南アフリカなど、世界中に支店網を拡大しているのだ。

ずいぶん前から「日本にも支店が出来るらしい」という噂はあったが、あくまでも噂であって、なかなかそれが実現されることはなかった。だから、海外旅行のついでにフーターズを体験してきた人の話なんか聞かされると、うらやまし過ぎてベッドの上でのたうち回ったりしたもんだ。
女房に「どうしたの? 具合わるいの?」なんて聞かれても理由は言えない!

女の子とお話が出来るお食事処という点では、日本にはメイド喫茶という文化がある。秋葉原方面を中心にたくさんあるようですね。アニメっぽい声で「お帰りなさいご主人さまー」みたいな。それはそれできっと好きな人にはたまらないものがあるのだろう。
でも、そうした萌え文化には馴染めない男もいるわけで、もっとこう、なんていうんですか、パツキンの、あるいは褐色の肌の、グラマーの、ブルルンブルルン!って感じの、アメリカンなノリの店がほしかったわけ。

そんな男どもの夢を叶えるフーターズが、ついに日本上陸を果たした。
最初にその情報が駆け巡ったのはいつだっただろうか。どうも六本木に出来るようだとか、いやいや渋谷が有力候補地だとか、意表をついて北千住らしいとか、あることないことデマが(おもにワタシの周辺で)飛び交ったりしていたが、いざフタを開けてみれば日本第1号店は赤坂見附という、なるほど納得のできる場所だった。
発表されたオープン予定の日付は10月25日。待ち遠しかったねえ。カレンダーに赤丸つけたよ。もちろん家族に見られてもいいように「エキサイトレビュー、〆切り」とか嘘書いてサ。

というわけで、25日のグランドオープニングに行ってきた。取材じゃなくて、まったく個人的な興味でな!

ある程度予想はしていたけど、大変な行列。初日の開店は午後5時だけど、自分が4時過ぎに数えたときには90人ぐらいが並んでいた。最終的には150人ぐらいになったのかな。やっぱりみんな待ちわびていたんだよねえ。

店内の造り自体はそれほど珍しいものではなくて、ハリウッド映画なんかでよく見られる、いかにもアメリカン・ダイナーという内装。
壁にはビールのポスターやネオン管が飾られて、天井から下がるモニターではスポーツ中継がガンガン流れている。そして店内で働いている女の子たちは、みーんな美人。みーんなタンクトップ。みーんなホットパンツ。みーんなナイスバディ! 夢を見ているようだったなあ……。

テーブルに着くと、担当の女の子が一人やって来て、紙ナプキンに名前を書いて自己紹介してくれる。といっても、以後その子しか来てくれないわけじゃなくて、けっこう入れ替わり立ち替わりいろんな女の子が話をしに来てくれる。こういうところ、ケチケチしてなくていいね。

日本1号店オープンの数ヶ月前から「フーターズガール募集」の広告がネットに上がっていたので、全部日本人スタッフになっちゃったらどうしようかと心配だったんだけど、いざオープンしてみれば、たしかに日本の女の子が多いけど、他にもアメリカ系、ジャマイカ系、ドイツ系、いろんな子がいたよ(女の子たちに聞いたんだもーん)。

料理はチキンウィング(スパイシーな手羽先)が売りらしいので、まずはそれを人数分と、他にもいくつか頼んでみた。だいたいどの料理も油とソースでギトギトだけど、味付けは思ったほどクドくなくて、日本人の口にもけっこう合う(と思う)。ドリンクはだいたいなんでも揃ってるけど、ここはやっぱりバドワイザーかクアーズあたりをビンのまま飲るのがいいね。


注文を済ませたあとに、おもしろいものを見た。店内の四方から厨房へ向けて、ちょっと高い位置にワイヤーが張り巡らせてあるのね。
で、女の子たちが注文を受け取った伝票はそのワイヤーに通された洗濯バサミに挟まれて、ポーンと手で弾くと厨房までシュルシュルーッと送り届けられるわけ。でも、このワイヤーの位置が手を伸ばしたよりもほんの少しだけ高いもんだから、ジャンプしないと届かないんだな。

するとどうなるか。宙ぶらりんになってる伝票を厨房へ送り届けるために、女の子たちがぴょんぴょんジャンプするのよ。必然的にバストも揺れることになりますわなあ。なんというお客様のニーズを読み切った店舗設計だろうか! じーーーん(感動している)。

一緒に店へ行った友達としばし談笑していると、突然ロックミュージックが流れてきた。これは……「Hey Mickey」だ! おれの大好きな曲! と、テーブルについていた女の子たちが音楽に合わせてフロアでダンスを踊りはじめる。もう、ノリノリのブルンブルンじゃないか!

なんだかんだで、だいたい2時間半ぐらいいましたかね。まだまだ順番待ちのお客さんが行列していたので、ちょっと長居しちゃって申し訳なかった。
ダンスタイムがだいたい30分に1回くらい行なわれていて、4曲目でまた「Hey Mickey」が流れたということは、ダンスの曲目が一巡する2時間というのが、店としてもベストな滞在時間なのかもしれない(註:筆者の勝手な推測です)。

はっきり言って、心の底から楽しかった。また行こう。ていうか赤坂に引っ越したい。いっそ就職したい。スタイルには自信ないけど。(とみさわ昭仁)
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