3会場の模様を一挙にリポート!
『ファイナルファンタジー』シリーズの名曲をピアノで甦らせる、CD『PIANO OPERA FINAL FANTASY』シリーズ。2012年2月29日に発売された『PIANO OPERA FINAL FANTASY I/II/III』に続き、2012年5月16日には『PIANO OPERA FINAL FANTASY IV/V/VI』が発売された。今回、『PIANO OPERA FINAL FANTASY IV/V/VI』の発売を記念して、大阪、埼玉、仙台の順にインストアイベントが開催。各イベントには、『FF』シリーズの作曲家・植松伸夫氏と、ピアニストの中山博之氏(通称:ショパン氏)が登壇し、トークと電子ピアノによる演奏を披露した。今回は、大阪、埼玉、仙台の各イベントをダイジェストでリポートしていく。
演奏される曲は、基本的に各会場とも共通で、『PIANO OPERA FINAL FANTASY I/II/III』から「プレリュード~メインテーマ」と「反乱軍のテーマ」、『PIANO OPERA FINAL FANTASY IV/V/VI』から「仲間を求めて」と「ビッグブリッヂの死闘」の合計4曲。どれも『FF』シリーズで人気の高い曲だけに、曲名が告げられると集まった観客からは期待の声が漏れていた。
また、すべての会場で『PIANO OPERA FINAL FANTASY IV/V/VI』を買った人を対象に、サイン&握手会を開催。集まったファンは、CDはもちろん、思い出の楽譜など、さまざまな場所にサインを求め、みんな幸せそうな笑顔を浮かべているのが印象的だった。
大阪編:中山博之氏だけでなく、植松伸夫氏も演奏を……!?
最初に行われたのは2012年6月10日。場所は大阪のイオンモール 鶴見緑地店。トークでは、植松氏が「プレリュード~メインテーマ」の作曲秘話について言及。『ファイナルファンタジー』生誕25年周年ということで、25年前に作曲されたことになるが、植松氏は「『メインテーマ』は、できたときに“これはやったな”って思ったんだけど、「プレリュード」のほうは、当時のディレクターを務めていた坂口(博信)さんに、“ここ(タイトル画面)に入る曲を作ってほしいんだ! あと、30分で!”って、急に頼まれたんだよね。だから、複雑なメロディーは作れなくて、アルペジオを活かして作ったの。でも、25年間も使われるような曲になるとは思わなかったなあ」と感慨深けに語っていた。
トークの途中では、観客から演奏してほしい曲のリクエストを受ける場面が用意されており、多くの観客が挙手をして参加。『PIANO OPERA FF』シリーズからの楽曲リクエストということで、『FFIV』の「愛のテーマ」、『FFIII』の「悠久の風」がリクエストされ、中山博之氏が即興で演奏を行なっていた。また、司会の「皆さん、植松さんの演奏も聴いてみたいと思うのですが……」というフリに、植松伸夫氏は「ええっ! そんなムチャぶり聞いてないよ!(笑)」と慌てつつも、即興で『FFX』の「ザナルカンドにて」を演奏すると、観客からは感嘆の声とともに盛大な拍手が贈られた。
トーク&ライブのイベント終了後は、おふたりのサイン&握手会に。事前にCDを買っていた人はもちろん、その場で買った人も現れ、多くの人が参加していた。
埼玉編:リクエストにあの超大作が!
2012年6月16日には、埼玉県のイオンモール浦和美園で開催。トークでは、中山博之氏の話題に。中山氏はピアノの演奏だけでなく、『PIANO OPERA FF』シリーズの編曲(ピアノアレンジ)も手掛けている。そのことに関して、植松氏は「編曲家と演奏家が別の場合はたくさんありますが、彼の場合は、子どものころからずっとゲームで遊んでいるので、遊んだ作品の曲を自分で編曲して、自分で演奏すれば、とても心が込もったものになると思って、すべてショパンに一任しました」と語る。その言葉に中山氏は、「僕が小学校のころにいちばん遊んだ作品の曲なので、自然と心が入り込みました」とうれしそうに感想を述べていた。
また、タイトルの『PIANO OPERA』の意味を問われると、植松氏は「“OPERA”にはラテン語で作品という意味があるんです。以前、譜面付きのCDで“ピアノ・コレクションズ”というシリーズを出していたんですが、それとは差別する意味でつけました。当初、スクエニさんは反対してたんだけどね(笑)」と言及。その後、25年前のスクウェア(当時)の話題になると、植松氏は「当時、僕しか音楽やれる人いなかったんだよね。皆さんご存知の方が多いと思いますが、当時スクウェアが潰れそうになっていたときに、坂口さんが“もう一作だけやらせてくれ”と言って、最後の夢を託すという意味を込めて作ったのが『ファイナルファンタジー』なんですね。それが『XIV』まで続くとは誰も思っていなかったと思いますよ。『ドラゴンクエスト』さんに追いつけ追い越せだったのに、よもや同じ会社になるとは(笑)」と感慨深げに語っていた。
埼玉でも、観客から演奏のリクエストを受け付けることに。最初にリクエストされたのは、なんと『FFVI』の「妖星乱舞」。中山氏が「日が暮れちゃいますよ!(笑)」と言いつつも、後半のケフカ戦に」あたるところを見事に弾くと、会場から大きな拍手が! 中山氏いわく「昨日遊びで練習しておいてよかったなーって(笑)」。そして、続いてリクエストされたのは、『FFIV』の「赤い翼」。中山氏が演奏を終えたところで、植松氏が「こういう風にリクエストを受け付けてショパンが弾く、『FF』バーみたいなのあるといいかもね」とアイデアを出すと、中山氏は「それいいですね! チップいっぱいもらえそう(笑)」と話し、会場の笑いを誘っていた。
仙台編:最多リクエストの中に、珍しい曲も!
インストアイベントの最後は、2012年6月17日に仙台のタワーレコード仙台パルコ店で開催。トークでは、『FFVI』のオペラの話題に。植松氏は、「当時の曲は、データを非常に圧縮して鳴らしていたから、人口音声のオペラは大変だったんです。プログラム、グラフィック、サウンドみんなで容量を分けていたんですが、どうしても8バイトが足らなくなって……。それで、企画屋さんのところに行って“8バイト余ってないー!?”って聞いて。みんな、いざというときのために容量を隠し持っているんですよね。それで、データを分けてもらったんですが、それがなかったら「妖星乱舞」が短くなっていたかもしれない(笑)。オペラは、本当はもっといい声で聞かせたかったんですが、あれが限界でしたね」と、スーパーファミコン時代ならではの苦労を語っていた。
また、仙台ではタワーレコード仙台パルコ店の『FF』大好き店員さん、工藤さんが登壇。工藤さんはタワーレコード仙台パルコ店のTwitterアカウントで募集した、植松氏への質問を行っていく中で、『PIANO OPERA FF』とは関係ない、『FFX』の「ザナルカンドにて」の作曲秘話を聞くという、趣味全開の質問を披露。植松氏は「『PIANO OPERA』関係ないじゃん!(笑)」と突っ込みつつも、「フランスに住む日本のフルート奏者がいて、その人が日本でリサイタルをするから、曲を書いてくださいって言われて書いたものだったんです。でも、リサイタルでやるには悲しすぎるなって思って、ボツにしたんですね。そのころ、ちょうど『FFX』の開発が進んでいて、“なんでもいいから、曲をよこせ”って言われて、そっとこの曲を出したら“これだよ! オープニングにバッチリ!”と採用されたんです」と、詳しく秘話を語り、工藤さんを喜ばせていた。
続いて、恒例の楽曲リクエストでは、最初に『FFV』の「遥かなる故郷」が。見事に演奏した中山氏は、「これ学校でずっと弾いていました。やっぱり指が覚えているんだなあ……」と当時を思い出すように語っていた。2曲目は『FFIII』の「悠久の風」。テンポアップしたところで、観客から手拍子が発生するなど、会場は徐々にヒートアップ。最後は、『FF』大好き店員の工藤さんから、これまたTwitterアカウントでリクエストの多かった楽曲をリクエストすることに。それは、『PIANO OPERA FF』に入っていない「チョコボのテーマ」。譜面もなく、中山氏の記憶に頼る演奏になるところで、スタッフがなぜか「妖星乱舞」の譜面をそっと置く……。そんな不穏な空気の中、中山氏は「小学生のころに弾いていたバージョンでよければ」と、即興で「チョコボのテーマ」を演奏。しかも、続けざま、観客からの盛大な拍手に後押しされ、埼玉に続き「妖星乱舞」を演奏すると、会場中から割れんばかりの拍手が贈られた。
以上の3公演で、インストアイベントは終了。なお、『PIANO OPERA FINAL FANTASY』シリーズのピアノリサイタル“「PIANO OPERA music from FINAL FANTASY」AUGUST 3rd in OSAKA/11th in TOKYO 2012”が、8月3日に大阪のザ・フェニックスホールにて、8月11日に東京のヤマハホールにて開催される。今回のイベントで興味を持った人も、イベントに行けなかった人もチェックしてみよう。