7月9日・10日に京都市勧業館みやこめっせで開催された「BitSummit 4th(ビットサミットフォース)」。来場者数6,435人という過去最高を記録し、大いに盛り上がりました。
今回、このBitSummitでも多くの海外インディーゲームの展示を行ったIndie MEGABOOTH代表Kelly Wallick氏にインタビューができましたのでお届けします。インディーゲームのショーケースとして多くのイベントで展示を行っているIndie MEGABOOTHですが、その目的や役割り、そしてタイトル選考などについてお聞きしました。
――まずはKellyさんとIndie MEGABOOTHについての紹介をお願いします。
Kelly Wallick氏(以下、Kelly):はい、Kelly Wallickといいます。私はIndie MEGABOOTHの創設者であり、代表です。 IGFのチェアマン、BitSummitの共同オーガナイザーもつとめています。
Indie MEGABOOTHは次世代の素晴らしいインディーゲームのショーケースです。私たちはこの活動を、デベロッパー同士の相互支援やプラットフォーマーとパブリッシャーとのコネクションを構築するために行っており、さらにプロモーションとしてゲーマーやプレスにリーチすることを目指しています。
もともとは2012年のPAX Eastでの小規模な展示から始まりました。今は数百人のチームを率いて、現在のゲーム産業における大会社や著名人とのパートナーシップを築いています。活動としてはPAX EastとWestでの展示が良く知られていますが、Eurogamer ExpoやこのBitSummitのようなヨーロッパやアジアでのショーケースも行っています。
――昨今ではインディーゲームは非常に一般的な存在になりました。現在のインディーゲームのシーンをどのように考えていますか?
Kelly:ここ数年はインディーゲームシーンにとってとてもエキサイティングであったと思います。多くの開発ツールと流通プラットフォームのおかげで、より小さなチームでのゲーム開発が可能になり、直接、ファンに届けることができます。これにより、これまでにありえないほど多くの創造的で実験的なゲームがマーケットに進出しています。
しかしながら、これらの開発と流通のしやすさの結果、「見つけやすさの問題(discoverability issues)」が出現してきました。これまではプレスの記事や特集がそれらのゲームを紹介してきましたが、現在はゲームの量の増加によってそのようにはいきません。これはゲーマーにとっては良いことですが、大きなマーケティングを打てない小さなチームには難です。
Indie MEGABOOTHの役割はまさにここにあり、これらの問題を解決するためのネットワークとプロモーションを開発者に提供して、インディーシーンをクリエイティブに多様にしているゲームとチームに焦点を当てます。
――なるほど。では今回のBitSummitではどういった作品を展示しているのですか?
Kelly:今回も私たちは世界中から多くのゲームを出展しています。他の国で人気があったタイトルが中心となっていますが、中でも日本のゲームやデベロッパーに興味があるチームが来日しています。彼らが日本のインディーゲームや開発者と触れて新たなアイデアが生み出されることを期待しています。
――海外のインディーデベロッパーは日本のゲームやデベロッパーに関心があるんですか?
Kelly:はい!とても関心があります。海外のデベロッパーはそもそも子供の頃から日本のゲームで育っています。成長して今は自分のゲームを作っていますが、日本の影響はすごく強い。BitSummitで出展したいインディーデベロッパーはとても多いと思います。
例えば、 Bombserviceの『Momodora』は今年のPAX Eastでも展示していますが、非常に人気がある作品です。『Wattam』は高橋慶太の新作で、2015年のPAX Primeで展示され、ファンからもプレスからも期待されています。また私たちは以前、PLAYISMと協力して、日本のインディーゲームの一部をPAXで出展しました。
――たしかに今回のBitSummitで出展したいくつかのデベロッパーは、明らかに日本からの影響がありましたね。『Read Only Memories』のデベロッパーと話をしましたが、彼らは日本に非常に関心があるみたいでした。
Kelly:そのとおりです。そしてBitSummitには坂口博信さんや五十嵐孝司さんなど、彼らのアイドルのようなクリエイターも参加しています。当然、ぜひ会いたいと思っているデベロッパーはいっぱいいます。また日本のインディーはまだまだ知られていませんので、新しいゲームを発見したいとも思っています。
また私たちが直接関わっていませんが、ナツメの『Wild Guns Reloaded』は『Tokyo Dark』を開発しているCherrymochiというデベロッパーが関わっています。
――なるほど。では少し一般的な話題に移りますが、Indie MEGABOOTHはどうやってタイトルを選出しているんですか?
Kelly:非常に長い期間をかけています。具体的にはMEGABOOTHのウェブサイトを見てください。ここでは手短に説明しますね。まず年に2回にタイトルの応募の機会があります。私たちは世界中の20~30人のメンバーでそれを審査します。選考基準は、ゲームのクオリティ、会社(チーム)のクオリティ、プレゼンテーションのクオリティです。もちろん、ゲームがクールであるに越したことはありませんが、同時にとても重要な事はチームがインディーコミュニティに対してポジティブな貢献をしているかどうかです。
――非常に興味深いですね。インディーコミュニティへの貢献を選考におい重視しているんですね。
Kelly:そのとおりです。より明確に言えば、他のインディーを支援しているか、コミュニティを成長させる努力をしているか、ベテランの開発者ならばゲーム産業に入ってくる若者や学生のメンターをしているかといったことです。コミュニティにとってメンターシップは非常に重要だと考えています。
――なるほど。ではもし日本のデベロッパーが「MEGABOOTHに参加したい」と思ったらどうすればいいですか?
Kelly:まずMEGABOOTHのウェブサイトにいってメーリングリストを購読するのをおすすめします。そうするとメーリングリストで応募の時期などがアナウンスされます。またJohn Davisという最近、参加したスタッフは、東京在住で英語で日本語を話せます。応募の手続きなどでわからないことがあれば、メールで彼に聞いてください。選考されたら、あとは世界中のスタッフから様々なサポートが受けられます。ショーケースはもちろん、翻訳等のことも相談に乗れます。
――ありがとうございます。現在は多くのインディーゲームがあり、競争がはげしくなっています。この状況で、インディーデベロッパーはどうするべきなんでしょうか?
Kelly:最初に話したとおり、現在、小さなデベロッパーは「見つけやすさの問題(discoverability issues)」という大きな問題に直面していると思います。残念ながら、これに対してだれにでも通用するような解決方法はありません。
私が考えるひとつのヒントは、潜在的なオーディエンスに注目することです。あなたのゲームは友達と一緒にリビングでやるゲームですか?それともアーティスティックで思慮に富んだ作品ですか?とてもむずかしくいハードコアなゲームですか?このようにあなたのゲームによってもっともエキサイトする人物の種類を想像してみてください。そして、それらのオーディエンスと直接、繋がる道を見つけ、すぐにアウトリーチを仕掛けてください。
AAAタイトルと似たようなマーケティングのアプローチをして失敗するチームがたくさんいます。AAAタイトルは多くの異なるジャンル、ゲームスタイルを超えた可能な限り大多数の人々にリーチするようなゲームです。これらのタイトルのマーケティングキャンペーンは、多額の資金と既に確立したコミュニティがあって初めて成功するものです。インディーゲームは何千万本という売上を上げる必要はありませんが、ビジネスとして成功する必要はあります。そのため、あなたの特別なオーディエンスである人々に確実にリーチすることこそが、成功の鍵となります。
もうひとつの重要な観点は、あなたのゲームとあなたのチームにとっての「成功」を定義することです。次の『マインクラフト』になることが成功であると考える人も多いでしょう。ですが、成功の定義は様々です。素晴らしいチームであっても、ゲームを完成してリリースすることすら難しいものです。
MEGABOOTHでは、インディーゲームの多様性を探し求めるオーディエンスを惹きつけ、彼らにゲームを提示することで、この「見つけやすさの問題(discoverability issues)」についての解決を図っています。さらにデベロッパーをプレス、パートナー、パブリッシャー、プラットフォーマーと結びつけています。これに加え、他のデベロッパー同士を結びつけることは、皆さんが思っている以上にメリットがあるでしょう。インディーデベロッパーとは挑戦を理解する人々の集まりです。あなたの成功を見たい人、喜んで手助けやアドバイスをしたい人の集まりです。そして、私たちはゲーム産業の中で積極的な貢献を果たす人々のコミュニティをつくり上げたいのです。私はその一部であることをとても誇りに思います。
――ありがとうございます。最期に今回のBitSummitはどうですか?
Kelly:とってもいいですね!任天堂、Sony、Microsoftが揃っているなんてすごい。こんなこと東京ゲームショウでもないですから(笑)。
関連リンク
編集部おすすめの記事
特集
ゲーム文化 アクセスランキング
-
「日本人の怠慢だ」海外PCゲーマーならではの不満―「日本製ゲームにデスクトップへ直接戻れないPC版、多くない?」
-
『Bloodborne』を60fps化する非公式パッチが4年の時を経て削除—SIEの突然の動きを深読みするファン出現も期待のし過ぎには要注意
-
アヒルが主役のタルコフ系アクションシューター『Escape from Duckov』日本語にも対応の体験版公開!
-
賞金首アンドロイドが宇宙での人生を築いていくサイバーパンクRPG『Citizen Sleeper 2』配信開始!
-
上手に握れました!?スシローのカプコンコラボと思われる画像で新たに『モンハン』お馴染みアイコンのお寿司が公開
-
大胆衣装と笑顔が眩しい!『PSO2es』「清夏のジェネ【サマーバケーション】」彩色見本が公開中
-
ガンダム新作キャラデザは『ポケモン』『FGO』も担当した竹さん!「機動戦士 Gundam GQuuuuuuX」マチュの告知イラストもお披露目
-
デスクトップの画面下で小さな人々生活するライフシム『My Little Life』配信開始!
-
飛行船で空に浮かぶ島々を冒険するオープンワールド協力型サバイバルADV『Lost Skies』最新シネマティックトレイラー!
-
ドニー・イェンの無念は俺が晴らす!「シャン・チー」主演のシム・リウが『スリーピングドッグス』映画化を宣言―香港オープンワールドが今度こそスクリーンに?