東京駅北口で始まった、Suicaを利用した会員制私書箱サービス「えきあど」。実際の使い勝手を体験するとともに、“生みの親”に話を聞いた。
10月16日、JR東日本とJR東日本キヨスクは、Suicaを利用した新サービス「えきあど」を開始した。えきあどは“駅のアドレス(住所)”の略。駅にセカンドアドレスを持とう、というコンセプトの、会員制私書箱サービスである。
JR東京駅地下北口、動輪の広場のそばに設置された私書箱を、月極ロッカーのように利用できる。利用時間は午前4時半から深夜0時半まで。えきあどで得られる住所は「東京都千代田区丸の内1-9-1 EA(えきあど)×××号」で、東京駅と同じ住所となる。
1つのえきあどを3人まで共有できるので、仲間うちで荷物の受け渡しをする、といった使い方も可能だ。えきあどではSuicaで鍵を開けるため、鍵を管理する手間もかからない。
料金は、標準サイズの「私書箱S」が月額2400円、大きなサイズの「私書箱M」が月額4500円で、このほかに年会費500円が必要。私書箱SとMを合わせて、合計528個の私書箱が並んでいる。契約しているサイズのえきあどに荷物が入りきらなかった場合は、隣にある会員専用Suicaロッカーで、24時間200円で預かってもらえる。
使い方は簡単だ。自分が登録したえきあどに荷物が届くと、ユーザーがあらかじめ設定しておいたメールアドレスに配達通知メールが届く。ユーザーはえきあどに行き、Suicaをかざし、暗証番号を入力して本人認証を行う。利用料金もSuicaで決済する仕組みだ。
えきあどを発案、事業化したのは、2005年まで中央線中野駅で勤務していた東山秀雄氏。東山氏に、えきあどを発案した経緯などについて尋ねた。
「一人暮らしで、宅配便の受け取りが大変だといつも思っていました。不在通知の紙がどんどんたまってしまうんです。最近は夜10時くらいまで再配達してもらえますが、私、飲み会が好きなんですよね。飲んで帰ると受け取れない、だけど宅配便のために飲み会を断るのも……(笑)。それで、便利な方法はないかなと考えたのが“えきあど”なんです」(東山氏)
そのころ、私設私書箱の存在を知った。私書箱がもっと便利な場所にあったらいいのに――駅員だった東山氏が、便利な場所として“駅”を思いついたのはごく自然な成り行きだった。「自宅以外に物流の拠点というか、第2の住所があったら便利じゃないか、と思いつきました。駅に私書箱があったら便利に違いない、と。あともう1つ、私書箱って、何となく暗いイメージがあるような気がして。それで、明るいイメージの私書箱があったらいいなと思ったんです」
JR東日本は社内ベンチャーを支援する制度を設けており、えきあどは5件目の社内ベンチャービジネスとして誕生した。これまでのJR東日本の社内ベンチャー事業は、JR総武線の高架下に作られた音楽スタジオの例を除けば、他はすべて飲食業。えきあどのような事業は珍しいという。
えきあどの事業化は東山氏がほとんど一人で行ってきたが、今後はグループ会社の東日本キオスクが運営会社となり、サービスを提供していくことになる。東山氏自身も現在、東日本キヨスクに出向している。
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