従業員の心の健康は待ったなしの重要課題ーー。いま、企業における「メンタルヘルス対策」に関心が高まっている。
日本企業は少子化によって今後さらに人材確保が難しくなる一方で、成果主義などによる仕事のプレッシャー、ストレスなどによってメンタル疾患で離職、休職する従業員が増え続けている状況だ。
経営の重要資源である従業員の健康が企業の生産性に大きく関係するという考えからウェルネス経営協議会が発足するなど、福利厚生といった観点だけでなく、経営の観点からも「メンタルヘルス対策」が重要視されるようになったのだ。
しかし、「従業員の心の健康」を守るためには具体的にどんな取り組みが必要なのだろうか。そこで今回、3年前からデータを活用したメンタル疾患の予防で堅実に成果を上げるなど、積極的なメンタルヘルス対策に取り組む富士フイルムを取材した。
富士フイルムはもともと、2002年から「全社健康・メンタルヘルス推進委員会」を設置し、メンタルヘルスサポートを行っている。
その背景について人事部統括マネージャー、猪俣英祐氏は「90年代半ば頃からメンタル疾患による休業者が全社的に増加傾向にあったため、それまでの事業所ごとに任せた対応ではなく、全社で一貫した効果的な施策を行う必要があったのです」と説明する。
全社健康・メンタルヘルス推進委員会は、産業医、カウンセラー、健康管理スタッフ、人事担当者で構成しており、2015年12月1日に厚労省によって義務化される前からストレス診断による疾患に至る前の1次予防、産業医による疾患の早期発見と対応(指導)といった2次予防を実施している。さらに、メンタル疾患により休業してしまった従業員への復帰支援も行っている。
「職場復帰支援では、復帰特別期間を設け、産業医のアドバイスを受けながら3カ月間の短時間勤務を実施します。他にも“リワーク”と呼ばれる職場復帰を支援する外部施設と連携し、心身共に回復してから通常勤務に戻ってもらう仕組みを作っています」(猪俣氏)
また、それと同時に、本人、職場上長、産業医、人事による4者面談を行い、今後の働き方、復帰条件について話し合った上で職場に復帰できる体制も整えている。
もともと、同委員会の取り組みはこの復帰支援がメインだったという。しかし、現在はメンタル疾患後の対応ではなく、疾患に至る前の予防にシフトチェンジしている。
「復帰支援をしても、全員が復帰できる訳ではありません。また、復帰したとしても再発してしまうケースもあります。復帰支援は大切ですが、それ以前に、いかにメンタル疾患に至らない環境を作り、予防するか。ここに重点を置くことにしました」(猪俣氏)
そこで、同委員会はメンタル疾患に至る原因・傾向を分析し、職場改善に役立てる「メンタルヘルスプロジェクト」を2012年に立ち上げ、予防に注力した施策を進めたのだ。
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