たかがラック、されどラック。ITシステムの運用と切っても切れない19インチラックの設計と運用について改めて考えてみよう。(関連特集)
皆さんはITエンジニアの仕事というと、どのようなワークスタイルを思い浮かべるだろうか? 机に座ってキーボードを叩いているとか、ミーティングを繰り返しやっているとか……そんなところかもしれない。いずれにせよ、デスクワークを思い浮かべる方が多いと思う。
しかし、機器を箱から出し入れしたり、ケーブル配線したり、物理的な作業というのも若干ではあるが存在している。今回はその中で数少ない体力作業の舞台となる「19インチラック(以下ラックと表記)」に注目してみたいと思う。ラックに対する「漢」たちのこだわりを感じとっていただければ幸いである。
……などとかっこよく書いてみたものの、筆者は最近現場作業から遠ざかっており昔話しかできないため、今回はラックに関してのウンチクがありそうな社員数名から意見を聞いて集約してみた。こういった話は職場の慣習や作業担当者の好みも影響することも多いため、以降で「そのとおり」と思うこともあれば、「これは違う」と思うこともあるだろう。十人十色、作業方法が存在すると思っているので、「へ〜、こういう考え方もあるんだ」くらいの気持ちで読んでいただければ幸いである。
まずは置き場所からである。ラックは一度設置したらそう簡単に動かすことはない。耐震対策にアンカーボルトで床固定でもしている場合にはなおさらである。ラックそのものがどういう場所、どういう環境に設置されるかというのは後々の変更が難しいため、慎重に検討する必要があるだろう。
ここでのこだわりポイントとしては、「エアフロー」と「作業スペース」があげられる。
まず、エアフローに関して言うと、ヒートスポットを作らないことが重要である。例えば、前後にラックを並べた場合、前方ラックの排気(熱気)を後方ラックが吸ってしまうと、後方ラックが冷えなくなってしまう(図1)。また、空調が弱くなる部屋の隅や、日光によって温度が上がる窓際など、熱くなる場所は避けたいところである(一般的にデータセンターには窓がない)。
次に作業スペースだが、実際に機器をラックにマウントする際の作業を思い浮かべると
となる。作業スペースが少ないと、2や3の段階で苦労することになる。
最近のラックマウントサーバは奥行きがとても長く、機器のマウント時にレールに対して水平に機器を挿入しなくてはならないため、ラックと同じ奥行き+αの作業スペースがなければ機器をマウントすることすら困難になってしまう。また、たいていのサーバ機器は「前後」とも作業が必要(フロントはハードディスク、リアは配線)になるため、スペースは前後とも取ることが望ましい。
昔、背面を壁にぴったり固定されたラックの配線作業をやったことがあるが、手探りでケーブルを挿すしか方法がなく、腕が攣るは、金具で腕を引っかいて血が出るはで散々な目にあった。やはり背面に作業スペースは必要だ。
以上を考慮すると、こういうラック配置(図2)になる。データセンターのラック配置と同じである。
なお、データセンターの設備は共用設備が多いため、オフィスに設置場所を作る場合とは若干異なるので注意しよう。
例えば「特注のラックにしてくれ」などとお願いをしても、断られるか、もしくは(コスト的に)高くつくことが多い。フロア内の温度も、必ずしもフロア内すべてで同じではないため、同じ金額を払っていてもばらつきが発生する。実際の設置場所に関しては自身の目で確かめることをお勧めしたい。
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