「N703iμ」の背面パネルには、49個のLEDからなる「マイシグナル」というイルミネーション機構が装備されている。先行試作機に搭載された有機ELのサブディスプレイではなく、49個のLEDを選んだ理由は何だったのか。
「先行試作機ではサブディスプレイを搭載していますが、これも部品のレイアウトが決まっている関係で、この位置から動かせない。デザインしようにも限界があるんです。試行錯誤を繰り返したんですが、“おじさん的なイメージから抜け出せないね”ということになった。もっと割り切るというか、発想の転換が必要だと考えたのです。そこで、LEDを並べてサブディスプレイ的な機能にするだけでなく、背面パネルのデザインにLEDを溶け込ませるという手法を探りました」(有田氏)
デザイナーからは、液晶をもう少し上に配置したいという希望もあったが、構造上、どうしてもスペースを確保できなかった。また、パネルを保持・保護する「額縁」のような部品が表にでてしまい、デザイン上の冒険ができない。
そこで、比較的自由に配置できるLEDを並べ、時計を表示したり着信イルミネーションなどを見せる方法が採用された。総計49個のLEDが本当に入るのかと、これはこれでエンジニアを悩ませたという。
「構成部品を考えると、先行試作機で使った有機ELディスプレイよりも、LEDの方が若干厚くなるのです。それを同じ厚みで実現するために試行錯誤しました」(白石氏)
ディンプル加工も、49個のLEDも、薄さを求めていく方向とは逆行の要素だ。それでも、あえて採用したという。
「携帯電話にとってデザインは非常に重要です。特に薄型端末は背面が一番のデザインのしどころというか、デザインできるのはここしかない。いかにうまく演出するかというのが生命線です」(有田氏)
マイシグナルには、時刻や不在着信が分かるという実用面での利便性があるだけでない。遊び心のあるイルミネーションを開閉時に表示するなど、使い方に可能性の広がりを感じさせる部分もある。
「どんどん携帯の機能が進化して、機能でアピールすることが難しくなってきている。そこでN703iμでは、元からある機能の視点やアプローチを変えてみました。機能的にはずっと前からあるけれど、こういった遊び心によって新しい価値を生み出したという気持ちです」(有田氏)
マイシグナルの点灯パターンは、端末の開閉用に10パターンが用意されている。また、着信したときに特定のLEDだけを光らせる機能も持つ。例えば、Aさんからの着信は一番左上の角のLEDを光らせる、Bさんからの着信のときには右上の角、秘密の人からのときは……など、マトリクスの1−3(左から1つめ、右から3つめ)、2−4というように49個のLEDから、好みの1個を指定して光らせることができる。
「他の人から見ると“なんか1個だけ光ってるな”、という感じに見えるのですが、本人にとっては記号というか暗号のようなものになる。誰からの着信か本人だけに分かるということで、“マイシグナル”とネーミングしました」(有田氏)
そのほか、時刻をスクロール表示したり、メールの着信時に封筒のマークを表示するなど基本的な機能も備える。また、シューティングゲームの画面をモチーフにしたものなど、遊び心のあるパターンも内蔵。点灯パターンの自作はできないが、追加のパターンがメーカーサイトに順次用意される予定だ。
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