Priscilla Clamanさんは、ボストンを拠点に、個人向けのキャリアコーチングや組織向けのキャリアマネージメントサービスを提供している「Career Strategies」社の社長です。今回は、Clamanさんがハーバードビジネスレビューに寄せた仕事が辞めたくなった時の考え方」についての記事をご紹介しましょう。

アメリカでは秋が入社シーズンということもあり、社会人も秋になると気持ちも新たに転職したくなる人が多いです。しかし、そんなムードに流されて会社を辞めたくなった時は「しておけばよかった」病に気をつけましょう。「しておけばよかった」病は、簡単に治るものではありません。「きちんと就職活動をしておけばよかった」、「PRの仕事を選ばなければよかった」、「もっと前に仕事をやめておけばよかった」など、「~しておけばよかった」と言い始めるとキリがありません。特に、他人のキャリアと自分のキャリアを比べた時に、「しておけばよかった」病を発病することが多いです

「しておけばよかった」と思うことについてくよくよ考えることは、自分のこれまでのキャリアが意味のないもののように感じられるので、特に良くありません。一度「しておけばよかった」病が発病すると、これまでの怒りや恨みつらみが沸き起こり、すぐに仕事を辞めたくなってしまいます。

「しておけばよかった」病に冒されている人は、端から見れば一目瞭然です。正直に言って、そんな人に最高の仕事が回ってくることはありません。そのような精神状態の悪い人は避けられてしまいます。ネガティブな思考にとらわれるのではなく、考え方すべてを変えなければなりません。

考え方を正しい方向へ変えていくには、「~しておけばよかった」と考えるところを「~したらどうなるか」と考えるようにするのが良いでしょう。例えば、「PRの仕事を選ばなければよかった」と後悔し始めたとしたら、次のように考え方を変えてみます。

  1. 信用できる友人、もしくは良いアドバイスをくれる同僚を見つけてブレインストーミングしましょう。そのような人たちの違う視点からの意見は、あなたが後悔していることに対して、違う考え方をする手助けとなります。くれぐれも批判的で根暗な人は選ばないように。想像力があって前向きな人を選びましょう。
  2. 「~しておけばよかった」と後悔していることに関して、「~したらどうなるか?」と見方を変えた質問を、できるだけたくさん考えてみましょう。PRの仕事であれば、「信じているものについて情熱的にPRをしたらどうなるだろう?」、「クライアントにPR戦略の指導をしたらどうなるだろう?」、「会社の幹部にPRの基本を教えたらどうなるだろう?」というような感じです。
  3. 「~したらどうなるか」というアイデアを集めたら、今度はそれを実行したらどうなるかを考えます。実際に行動を起こさずに、どうなるかを考えるだけでも、あらためて仕事に対してワクワクする気持ちになったり、より良く仕事ができる方法が見つかったりします。何かひとつでも可能性を感じるものがあれば、実を結ぶまでその仕事を続けてみましょう。

事例をひとつ、ご紹介します。どのようにして行動に移すのか、参考にしてください。

■金融業界から音楽業界へ転身したEvelynさんのケース

Evelynさんは、家族に説得されて会計の仕事に進みましたが、金融サービス会社で5年間辛酸をなめた後でも、音楽に対する情熱はまだ消えていませんでした。「いまさら仕事を変えるのは遅すぎる。仕事を変えてもがんばれる自信がない」と思い込んでいました。

しかし、「しておけばよかった」ではなく「したらどうなるか」と考え始めたところ、Evelynさんの態度は変わりました。「ミュージシャンや音楽に多く関わるような環境で働いたらどうなるか?」、「ミュージシャンに金融関係の仕事で役立てることはないか?」と、そのように自問したことで、大学の音楽学部や他の音楽系組織の会計職に就くことへ方向性が変わりました。

仕事を探している間に、Evelynさんは地元の音楽学校で「QuickBooks」に本を載せる手伝いをボランティアでしました。Evelynさんはその仕事を気に入り、音楽学校の人たちもEvelynさんのことが好きになりました。Evelynさんが、音楽学校の掲示板に寄せられた求人に興味を示したところ、音楽業界の仕事を紹介してくれるようになりました。今、Evelynさんは、大きな音楽フェスティバルの金融担当者として働いています。無料の音楽レッスンを受けることもでき、時には演奏者としてセッションをすることもあります。

今すぐにでも仕事が辞めたいという気持ちになってしまったら、まずは信頼できる友だちや同僚を見つけ、自分とは違う視点のアドバイスをもらいつつ、「~したらどうなる?」と自問してくだい。これまで想像もしなかったような、自分だけの新しい道が開けてくるかもしれません。

Coping with Career Regret | Harvard Business Review

Priscilla Claman(原文/訳:的野裕子)

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