2025年の労働環境を予測した結果、「"漫然と迎える未来"には孤独で貧困な人生が待ち受け、"主体的に築く未来"には自由で創造的な人生がある」と結論づけるのが、『ワーク・シフト』(リンダ・クラットン著、池村千秋訳、プレジデント社)。「ワーク・シフト」とは自分を取り巻く環境を分析し、自分らしい働き方を見出していくプロセスを意味する言葉だそうです。
ロンドン・ビジネススクール教授である著者は、経営組織論の世界的権威。というだけあって、将来の社会変化を緻密に、そして的確に捉えています。なかでも特に注目しておきたいと感じたのが、3つに分けられた「働き方を<シフト>する」という項目。文字どおり働き方をシフトさせるためのメソッドですが、とりわけ重要なのが「第一のシフト――ゼネラリストから『連続スペシャリスト』へ」です。仕事の世界で成功できるかどうかを左右する要因のひとつは、その時代に価値を生み出せる知的資本を生み出せるかどうかであり、そのためには広く浅い知識や技能を蓄えるゼネラリストを脱却し、専門技能の連続的習得者へシフトする必要があると著者は主張しているのです。
* 専門技能の連続的習得――未来の世界でニーズが高まりそうなジャンルと職種を選び、高度な専門知識と技術を身につける。
* セルフマーケティング――自分の能力を取り引き相手に納得させる材料を確立する。
『ワーク・シフト』(237ページ)
そしてさらに著者は、ゼネラリストから専門技能の連続的習得者になるための手順を次のように説明しています。
1. まず、ある技能がほかの技能より高い価値をもつのはどういう場合なのかをよく考える。未来を予測するうえで、この点はきわめて重要なカギを握る。
2. 次に、未来の世界で具体的にどういう技能が価値をもつかという予測を立てる。未来を正確に言い当てることは不可能だが、(中略)根拠のある推測はできるはずだ。
3. 未来に価値をもちそうな技能を念頭に置きつつ、自分の好きなことを職業に選ぶ。
4. その分野で専門技能に徹底的に磨きをかける。
5. ある分野に習熟した後も、以降と脱皮を繰り返してほかの分野に転進する覚悟をもち続ける。
『ワーク・シフト』(242ページ)
1.は、自分になにができるのか、それは、他者との差別化を実現できるものなのかということ。2.、3.は、将来性があり、好きで続けていけそうなのかということ。4.は、切磋琢磨できるのかという意志の確認。そして5.は、将来に対するヴィジョンの確認といったところ。これらはどんな職種にも置き換えることができ、そして応用できると思います。
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(印南敦史)