『できるリーダーの人心掌握術』(荒井秀和著、幻冬舎経営者新書)は、文字どおり「人の心をつかむ」ために必要なコミュニケーション術を様々な角度から掘り下げた書籍です。
本書を手にとったとき、最初に気づいたことがあります。それは、タイトルは「人心掌握術」となっているのに、
第1章:人を動かすことができる人、できない人
第2章:人を動かすためのコミュニケーションの原理原則
第3章:人を動かすことによって成果を生み出すための実践テクニック
第4章:動かない部下を動かし、成果を出すためのマネジメント術
と、各章のタイトルに「つかむ」ではなく「動かす」というフレーズが使われている点。つまり、「つかむ」ことが「動かす」ことにつながるのだという考え方が、著者の根底にはあるのかもしれません。そして実際、ここには経験に基づいた術がわかりやすく紹介されています。タイトルからもわかるとおり、基本的にはリーダーにとっての心得を主軸としているのですが、そんななか、営業マンの観点から「相手をつかむ、動かす」という点に踏み込んだ記述がありましたので、それをご紹介したいと思います。第3章で紹介されている「営業パーソンに大切なこと」。
1.自分を知る(92ページより)
大雑把であるとかマメであるとか、大物狙いであるとかコツコツ積み重ねるタイプであるとか、自分を分析して性格、タイプを知ることが営業の第一条件だそうです。ポイントは、自分はなにが一番好き(あるいは得意)かということ。話下手だけれど書くのが得意なら、まずはメールで営業すればいい。真面目でお世辞が嫌いなら、真面目な営業スタイルを貫けばいい。先輩の真似ではなく、自分流でいいということです。
2.時間を有効に使う(93ページより)
スケジュールを立てるだけではなく、実際に自分がどのように時間を使ったかをメモしてみる。それを一週間続けてみると、自分がやっている無理、無駄が見えてくるそうです。このあたりは、GTDにも通じる考え方を感じます。
3.相手を知る(94ページより)
相手の分析をしないまま出かけていく人間は、営業に不向きだと著者は断定します。なぜなら、営業は戦いの場だから。それに調査をしてから行くのが礼儀であり、常識であるとも。そのためにまず「情報を仕入れ」、「作戦を練り」、「そこから営業をスタートさせる」という自分なりのパターン、スタイルを構築することが大切。そしてクライアントの会社、職種、その会社の関連記事などをリサーチしておけば、営業の席での会話に弾みがつくといいます。
4.1000件の訪問記録より1件の獲得実積(96ページより)
1000件の電話をしても、1件も獲得できなければ評価はゼロ。でも1回の電話で商談をまとめられれば、それは評価につながります。そういう不平等をわきまえたうえで戦略を練ること、そして粘り強さも大切。どうせやらなければならない仕事なら、自分の好きな方法で、楽しみながらやった方が成果につながりやすいそうです。
この最後の項目のなかに印象的なフレーズがありましたので、最後にそれをご紹介しておきましょう。
「営業は場(相手)の空気をつかんでナンボの仕事です。人心を掌握してナンボの仕事です。そのためには、己を知り、相手を知ってから望むのは当然でしょう。そうでなければ、的確な話題もわかるはずがないのです」(98ページ)
日々の仕事に、これらをぜひ活用していきたいと思います。
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(印南敦史)